33 半分妖精と疑念とやっちまった
ティターニアと同じ魔力だという少女に声をかける空。
少女は今も息を切らしており、体内の魔力の減少からか青い顔をしていたが、空の質問にかろうじて答える。
「私は、ティターニアさまでは、ない、で、す…………」
そう言い漏らして気を失い地面に倒れそうになるが、すんでの所で空が少女の体を抱きかかえる。
抱きかかえた少女の体はとても細く、薄汚れ、所々に穴が開いた民族衣装のような服を着ていた。
息をしていることを確認している空に、岩で隠れていたイレイナとイヴが駆けつけてきて、言う。
「あんた馬鹿じゃないの!?もしその女の子があんたに攻撃してきたら死んでたのよ!?」
「でもこの子はもう限界だっただろ?ならとりあえず助けなきゃいけないんじゃないのか?」
「だったら私に言ってからやりなさい!そこにいる竜くらいなら私一人でも瞬殺だわ!」
「それは、ごめん……」
「あんたが強いのは分かったけど、冒険者やっていくならよく分かってない生き物とかは信用しないこと!人の見た目に擬態するやつとかたまにいるんだからね!」
「肝に銘じておきます……」
確かにあそこで何も言わずに突っ込んだのは考え無しが過ぎたと反省する空。
その様子を見たイレイナがため息を付いてから言う。
「ならいいわ。で、その子どうするの?傍に来たからやっと分かったけど、私が知ってる精霊の魔力じゃないわよその子」
「でもこの子は俺の知り合いの名前を知ってたし、こっちに敵意もなさそうだったからとりあえず町に連れて行こうかな」
「あとイヴ、この子の治療をしてあげてくれないか?」
「畏まりました。それとマスター、先ほどの私が言った言葉なのですが」
「ああ、魔力云々の話か。この子はティターニアじゃないらしいけど、どういうことだ?」
「はい、今改めてこの方の魔力を感じると、ティターニア様に似ている魔力だということが分かりました。人間と精霊、この二つの魔力が合わさったような魔力を感じます」
「なるほど、ってことはティターニアの子孫ってことなのかなぁ。そういうのも起きたら聞かなきゃな」
少女の体に触れながら治癒の魔法をかけているイヴを見て、イレイナが驚いたような表情をしていた。
それからすぐにイレイナが口を開く。
「ねぇ、イヴって治癒の第二魔法が使えるの?それとも第三魔法の応用?どっちにしてもすごいことなんだけど」
「申し訳ありませんイレイナ様、その第二魔法とは何でしょうか?」
「あー、あんたたちってそういう人たちだったわね。帰りの馬車の中で教えてあげるから行きましょ」
「女の子は空が背負いなさい。男でしょ?」
「最初からそのつもりだったよ」
そう言って森の中を駆けていく空たち。
特に何もなく最寄りの村へと戻ることが出来、再びイヴに御者をしてもらいながら馬車に揺られる。
女の子はまだ起きる気配はなく、その馬車の中でイレイナが話し出す。
「とりあえず私の質問に答えてもらってもいいかしら?」
「どうぞ」
「あんたとその女の子が言ってたティターニアって名前、それって妖精女王のティターニアであってる?」
「え?イレイナ知ってるのか?」
「ええ、小っちゃい頃に聞いたおとぎ話の中でね。精霊たちが暮らす深い森の女王、自然を愛し自然に愛された妖精」
「私が教えてもらったのはそのくらいだけど、空はそのティターニアと会ったことあるみたいに聞いてたわよね?それはどういうこと?」
「それは……」
本当のことを言っても到底信じられるものではないだろし、ましてや自分たちが元人間の手によって生まれたと知れば混乱を招くかもしれない、そう思った空だったが、同時にこれ以上の嘘を言うのはイレイナの信用を失うことになるかもしれないので悩む。
少し悩んだ後、空が出した答えは一つ。
「俺がこうして旅をしてるのは、昔出会ったティターニアを探すためなんだ」
「へぇ、あんたティターニアと会ったことがあるんだ。でも前に会ったってだけで、冒険者になって探すなんて随分とお熱なのね」
「うん、俺にとってティターニアは娘みたいなものだから。ずっと会えてなくて心配なんだ」
「そ、あんたの事情は何となく分かったわ。本当のことも言ってるけど、核心的なことは言ってないこともね」
「それはもっと仲良くなったらな」
「それもそうね、じゃああんたらに魔法ってのが何なのか説明あげるから、ちゃんと聞いてなさい。イヴ!そこでも話は聞こえてるわよね!?」
「はいイレイナ様、しっかりと聞こえております」
「よし、じゃあまず魔法ってのが何なのかからやっていくわね───」
イレイナの解説を聞いてニューアースでの魔法の概念を知った空たち。
ニューアース上では魔法はこのような体系を取っているそうだ。
魔法とは、生物が誰しもが持つ魔力を特定の法則に当てはめて放つものである。
その才能は、生まれ持った魔力の質や属性によって大方決められており、最大魔力量や属性などは後天的な干渉では変えられない。
大きく分けて四つの魔法に分けられる。
・第一魔法
火、水、風、土の四つの属性の魔法。魔法使いであれば最初に習う基礎中の基礎。それ故に奥が深く、単純な作用の魔法が多いため、二つ以上の魔法を合体させた複合魔法も多いそう。
・第二魔法
第一魔法以外の属性の魔法のほとんど。雷、氷、光、闇といった魔法が第二魔法。他にも多くの種類があり、第一魔法の複合魔法もここに属することもある。光に近い属性の治癒もここに属する。
誰しもが使える第一魔法だが、この第二魔法は魔法の才に優れたものが使えることが多い。
・第三魔法
体内でも魔力の循環により発動する魔法。身体能力の強化や五感の鋭敏化、魔力的な魔法壁もこれに属する。自身の傷や疲労の回復が出来、その応用で他人の魔力を操作し回復させることが出来る者もいるそう。
・第四魔法
力を操る魔法全般を指す。今の所、無属性の魔力の発射や、重力や引力といった魔法しか発見されていない。重力や引力が常識になったのは最近だそうなので、イレイナが通った学校でもあまり教えられなかったそう。
といったような話を聞いていると、いつの間にかに馬車は目的のアルドーに付いていた。
馬車の外に下りると、日が落ちかけているのに気付いた空。
今日泊まる宿のことを考え、みるみる内に顔を青くしていった。
(やっべ、お金のことなんも考えてなかった……)
思えば、最初に出会ったドラゴンの素材は冒険者としての必需品と馬車代に消え、現在空が持っているのは、最低限のものが入ったバックパックと背中にしまってある刀、それとシルフから貰った石で作ったネックレスのみ。
バックの中の銭袋を見ると、申し訳程度の硬貨二つが悲しい音を鳴らしていた。
そんな様子の空にイレイナが声をかけてくる。
「あんたひょっとして金無いの?」
「はい……」
「今日の宿代も?」
「銅貨二枚です……」
「それじゃ屋台の串焼きしか買えないじゃない……」
「仕方ないわね、ほら」
イレイナが鎧の隙間から取り出した袋を空に投げる。
重量感があるその袋の中を覗くと、大量の銀貨に数枚の金貨がところ狭しと詰まっていた。
ドラゴンの牙一つが銀貨十数枚だったことを考えると、おいそれと人に渡せる値段ではないのは確かだった。
「こんなに!?おいおい、こんなの受け取れないぞ?今日の宿代ぐらいは借りれないかなとは思ったけどさ……」
「いいのいいの、私ぐらいになったらはした金みたいなものだから。それにあんたならその額ぐらい依頼一個済ませれば返せる値段よ。いつか倍にして返しなさいよね」
「本当にいいのか?マジで?リアリィー?」
「意味わかんない言葉言ってんじゃないわよ。いいって言ったらいいの、さっさといい宿行ってその背中の女の子休ませなさい」
「そっか、じゃあ有難く借りるよ」
「ん、私はギルドで依頼の報告してから帰るからここで解散ね。しばらくはアルドーにいるからお金溜まったら返しに来なさい」
「ああ、今日は色々とありがとな」
「ええ、またいつか会いましょ。じゃあね空、イヴ」
「じゃあなー」「また何処かで、イレイナ様」
そんなあいさつの後、アルドーの中でも高めの宿を借り、女の子をベッドに寝かせる。
傷の治癒は済んでいたので、空が見守りをしてイヴに栄養のある食事を取ってきてもらうように言う。
今もすうすうと寝息を立てて寝ている女の子の顔を見つめていた空だったが、その顔を眺めていてふと気付く。
(よく見るとティターニアに似てるところあるなぁ……)
そんなことを考えていると、眠っていた女の子の目がゆっくりと開いていく。
目を覚ましたら全く違う場所にいたためか少し取り乱すが、空が落ち着くように言うと平静を取り戻した。
ベッドの上だったが、上体を起こし佇まいを直す女の子。
しっかりと空の目を見て自己紹介を始める。
「私は、リリ・アルマ。妖精である母と人間の父の間に生まれた半精半人です。先ほどは危ない所を助けて頂きありがとうございます。失礼ですが、あなたのお名前を聞いてもよろしいですか?」
「俺は高橋空、空って呼んでくれ」
「空!?そ、空と言いましたか!?」
「うん、空です」
突然慌てふためくリリ。
しばらくして冷静を取り戻すと、深呼吸のあとに言った。
「空様、いえ我らが創造神様。私の故郷、妖精の森を救って下さいませんか?」
「え゛」
世界に降臨してから一日。早速神バレした空であった。
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