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25 海龍と波動と走れグノス



「お、まだまだ眠っておるか」

「起きとったら大変なことになりそうじゃからのう」


「確かにこの巨体じゃな……」

(こいつってリヴァイアサンだろうな……)


「わぁー、でっかいねぇ」


「はい、それにこの巨体で私の検知に引っかからなかったので、何か特殊な能力を持っているのではないかと思います」

 

 はしゃぐティターニアと冷静に推察しながらも警戒心を高めているイヴ。

 空はというと、地球では神話上の生き物とされていた巨大な龍の圧に少し押されていた。

 そんな空にグノスが話しかける。


(あるじ)さまはこいつが何だか知っとるのか?」


「うん、こいつは多分リヴァイアサンっていう海龍だ」

「でも俺の知識だとこんな洞窟の海に入る大きさではないから、もっとデカくなる可能性あるかもな……」


「ふむ、そんな厄介な奴じゃったか」

「どうりでわしらが刺したり切ったりしても起きぬわけじゃわい」


「こいつに攻撃したのか!?暴れたら大変なことになるだろ」


「暴れる前に追い出すつもりじゃったんだが、そもそも起きぬでな」

「それでわしらにはもうお手上げだった所に主さま方が来たのでな、地脈に用があるそうじゃしついでに追っ払ってくれんかの?」


「ああ、こんな奴がいる中じゃおちおち地脈弄りなんて出来やしないだろしな」


 鍛冶に長けたノームたちの武器による攻撃でも、起きることすらしないというリヴァイアサン。

 そんな海龍を追い出す手段を考え込んでいた空にイヴが提案する。


「マスター、提案してもよろしいでしょうか?」

 

「もちろんいいよ」


「ありがとうございます。海龍を追い出す案なのですが、マスターは創造神ですから普通に話しかけるのはいかかでしょう?」


「ん?それはどうゆう意味?」


 イヴらしからぬゴリ押し気味の案に少しばかり疑問を覚えてしまう空。

 

「あ、申し訳ありません、詳細を省いてしまいました」

「つまりは、その海龍はマスターの創造物ですので創造主たるマスターが話しかければ命令も聞くのではないか、とそういった提案でございます」

「それに、この海龍もマスターの魔力を多少なりとも帯びているように感じますし、精霊の方々のように恭順の意を示すのではないでしょうか?」


「なるほど、確かにそれならやる価値は全然アリだな」

「もし暴れたとしても創造神の力を使えばいいもんな」


「んー?最初から神さまの力使っちゃダメなの?」


「こういう状況なら使ってもいいんだけど、創造神の力って頼り過ぎるとちょっとな……」


 空が魔法創造後のニューアースで力を使わないのには、しっかりと空なりの理由があった。

 それは、ヤグへの消えろという咄嗟の言葉や、無思考の創造によりどんなことが起きるかを空は身に染みて感じ、力を使わなければ空以外に害が及ぶといった本当に危険な時にしか使わないと、固く心に決めていたのであった。

 折角魔法があるのだからそっちを使いたい、という欲求も混じってはいたが、それ以上に創造神の力が便利すぎてそれにしか頼らないというのは、ヤグたちの時のようなことを起こしてしまうかもしれないという恐れもあった訳だが。


「よし、じゃあ起こすか!」

「みんな、もしものことがあるから一応後ろに下がっててくれないか?」


「分かったぞい」「畏まりました、マスターもお気を付けください」「はーい」


 三人が安全な場所に下がったのを確認し、地下海の中へと入っていく空。

 幸いなことに、リヴァイアサンの体の一部は浅瀬の方にあったのでそこへと向かっていく空。

 空がリヴァイアサンの体に近付いていく間、今までゆっくりと動くことしかなかったリヴァイアサンが、何かを察知したようにぶるりと震える。

 起きてはないようだが、その体躯が揺れた振動で小さくない波が立つ。

 普通の人間では体が持っていかれる様な波だが、空の創造神ボディの前には凪と同じ。

 ずんずんと進んで行き巨大な体に手を触れる。

 が、何だか寝辛そうなだけで起きはしないリヴァイアサン。

 このままにしていればいつかは目を覚ましそうだが、それは面倒臭い空が体内の魔力を練り始める。

 


 瞬間、空の身体から惑星の格に匹敵する魔力が発散された。

 物質に変換してはいないが、その圧は惑星一つ分。どんな生物であろうがその圧倒的な格にひれ伏せる。

 無論、リヴァイアサンもその生物の一つであった。






 極大の魔力の波動により、明確な死の危険を感じたリヴァイアサンは洞窟の天井をぶち壊すほどに跳躍した。

 ドガァン!!!と轟音が響き崩落が起きるがお構いなしに逃げようとする。

 だが、その逃亡は腹部辺りを抑える恐ろしく剛力によって失敗に終わった。

 その巨体を力の限り動かし抵抗するが、逃げることは叶わなかった。

 じゃあもう駄目だ、と覚悟を決め自分を殺す存在を一目見ようと、後ろを向く。

 そこに居たのは…………






 ビビらせてやろうと今出せる全力の魔力を放った空。

 空の魔力はどうせ無尽蔵なので躊躇なくやったのだが、肝心のリヴァイアサンの反応が意外だった。

 波動の後、猫のように跳ね上がり、天井崩落。

 その次は、何もしてこずにに逃げようとしていたので、目の前の鱗を掴み話をしようとする。

 ここで寝るのは迷惑だから止めろ、と注意しようと思っていたのと、単純にリヴァイアサンと喋りたいという欲から逃亡を腕力で阻止する。

 リヴァイアサンだから流石に止められないだろう、と諦めていた空だったが、藻掻けど藻掻けど逃げていかないリヴァイアサン。

 その抵抗のせいで洞窟の壁が崩れまくっているのだが、そんなことは全然見えていない空。

 やがて暴れるのを止め、ゆっくりとこちらを覗き込んで来たリヴァイアサン。

 その威圧感がある風貌に口籠(くちごも)りそうになる言葉を吐き出す。


「この洞窟で寝るのは止めるように!」「殺さないで!」


「「え?」」


 お互いに予想だにしない言葉が聞こえてきてハモりながら疑問の声を漏らす。

 顔を見合わせ、しばし黙る。

 先に口を開いたのは空だった。


「狭い洞窟でお前が寝てると、ノームの迷惑になるから……」


「私のこと、殺さないの?」


「うん、どいてほしいだけだし」


「何だぁーーー!!!もう死ぬかと思ったーーー!!!」

「何か超近くでいきなりめっちゃ強い魔力感じるし、私と似てたけどもっと凄い魔力だし、絶対私のことつくった何かが殺しに来たんだと思ったぁーーー!!!」

「もうそんな意地悪しないで普通に起こしてよ!もう!もーう!」


「え、いきなり馴れ馴れしいし、俺創造神だぞ?」

「あとお前メスかよ」


「もー!どう見たら私がオスに見えんのー!?」

「あとあんた神さまなんだー、通りでんなヤバい魔力してるワケだわー」


「かるっ」


 生きていたことへの喜びか、空のことをガンガンと脇腹で押してくるリヴァイアサン。体格が体格なので、痛くはないが創造神ボディを以てしても体勢を崩しそうになる空。

 そんなことよりも、何よりもあのリヴァイアサンがギャルっぽいのが気になり過ぎていた。


「そのぶつかってくるのやめ……うわぁ!」


 空の横を疾風に乗って来た飛んできたイヴが通り過ぎ、今なおくねくねしているリヴァイアサンの顔目がけて盛大なストレートをお見舞いした。

 咄嗟に後ろを振り返ると、舌を出してウィンクをしているティターニアがおり、イヴをここまで運んで来た突風はティターニアの魔法であることが分かった。


「私のマスターに!何をしているのですか!」


「あいってぇ……何だしいきなり!私何かした!?」


「マスターに攻撃していました!その前も意味もなく暴れ出し……マスターの言葉も聞かずに!」

「なのに自身の罪を認めない、恥を知りなさい!」


「え、これ悪いの私!?今のは悪かったかもだけど、かみかみの魔力にビビったのは仕方なくない!?」


「それは僕も思ったー!神さまやり過ぎー!」


「そうじゃぞー!あれは誰でもあんな反応になるわい!」


 背後の海岸より野次が飛んでくる。


「ちょっとどこまで出来るか試したかったんだよ!悪いか!」

「てか元はといえばこの海龍野郎がここでぐっすり寝てたのが悪いんだっつの!」


「かみかみひどーい、わたし女の子だよー?」


「知るかボケ!」

「ああもうこいつやだ!」


「マスター、私だけはマスターの仲間ですよ」


「イヴぅぅぅぅぅ!」


 もっと荘厳な喋り口調だと思っていたので、予想外過ぎるギャル口調にウンザリしていた空。

 ティターニアもグノスも空の最初の行動が悪いと言うので、空の味方をしてくれたのはイヴだけになっていた。






 もう狭い洞窟では寝るなよ、と言いつけておいてリヴァイアサンを海に帰させた空。

 そのリヴァイアサンは帰り際「みんなー!また会おうねー!んじゃー!」と最後までギャルっぽい軽さの口調だった。

 問題は無くなったので、目的の地脈の操作をしながら雑談に耽る空たち。


「さっきの俺の魔力放出ってそんなにだったか?」


「後にも先にも感じることの無いだろう魔力量じゃったよ」


「私はマスターなら当然だと思っていたのですが……」


「あはは、やっぱ神さまは違うねー」

「あんな魔力、サラマンダーとノームの皆と僕の合わせても全然足りないよ」


「サラマンダー、火山にいるトカゲのような精霊じゃったか?」

「火や溶岩を操れるのなら鍛冶に使わせて欲しいのう」


「いいんじゃないか?あいつがいる火山は遠いけど、リヴァイアサンもいなくなったんだし、遠出とかしてもいいじゃないか?」


「そうじゃのう……それも有りじゃなぁ」

「うむ、里でひと段落着いたら行ってみるとするかのぅ」


「では私が地図をお作り致しますね」


「おう!ありがとうなお嬢さん!」


「おじょ……いえ、マスターの従者としては当然のことです」

「情けは人の為ならず、でしたよねマスター?」


「うん、いいことをすればいつか自分に帰ってくるからな、逆もまた然りだけど」


「そうか、いい言葉じゃのう」

「そうじゃ主さま、今何か恩返しをさせてもらえんか?里の危機を救ってくれたことじゃし、何でも作るぞい」

「まぁ主さまは何でも創れるんじゃろうが、何か欲しいもんはないかの?」


「グノスに作ってほしいもの、か……」


 グノスが言った通り、想像さえしてしまえばどんなものですら創ることの出来る空にはこれといって欲しいものが無かった。あるとすれば、それは空の想像外のもの。

 作って欲しいもの、鍛冶、ノーム、と悩んでいると、空の知識の端から何かを思い付いた。

 空の作って欲しいもの、それは、


「剣だ…………」


「けん?けんとは何じゃ主さま?」


「剣っていうのは、生き物を狩ったり敵と戦ったりするための刃の付いた棒だ」


 自身がが知り得た言葉全てを使って、未だこの惑星上に存在しないであろう『剣』を生み出さんとしている空。

 やがて、空が言う剣を完璧に理解したのか、グノスがポンと手を叩き言う。


「なるほどの、それを剣というのか!」

「委細承知じゃ、このノームの長グノスが最高の剣を作ってみせるわい」

「そうとなれば地脈の溶岩を採らねばの、先に里に戻って溶岩桶を取ってくるわい」


 急ぎ足で里への洞窟を駆け上がっていくグノス。

 その目は、創作意欲によって爛々と輝いていて。


 それから少しして地脈の操作を終えた空は、イヴとティターニアを連れて後を追いかけた。

 


ギャルリヴァイアサン、書いてて楽しかったです。


続きが気になりましたら、下の評価やブクマのボタンを押して頂けると嬉しいです。

創作意欲が上がって更新が早くなるかも。

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