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23 トカゲとドジっ子とじゃあね



 トカゲの精霊のあまりの威圧感に少しビビってしまっていたが、よくよく見ると体色赤めの大きい六足のトカゲなのでちょっと冷静になる空。ヤグというインパクト大の見た目の友達を知っていたからこそ、簡単に慣れることが出来た。

 火、溶岩、トカゲってもろあの精霊だよな……と思い浮かべていた空だったが、この精霊もティターニアと同じように神だと分かっているようだったのが気になり質問する。


「なぁ。お前もあそこの妖精みたいに俺の魔力と似た魔力で生まれて来たのか?」


「はい!その通りだと思いまする」

「私の中の魔力が自然と神のことを敬っておりますゆえ、間違いなく私の創造主はあなた様でありましょう!」


 魔力発生の最初期に生まれた精霊は、きっと変異する前の魔力から生まれたのだろうと推察する空。


(それだと、他の地脈の近くにも俺と同じ魔力の精霊がいるんだろうなぁ……)


 そんなことを考えている内に、どのような用件で来たのかを聞かれたので、空たちが地脈の操作をして魔族や魔物の棲み分けが出来るようにしていると説明すると、


「それでは、こちらの溶岩湖がいいでしょう!」

「私が生まれるほどの魔力はありましたので、その地脈にもきっと良く通じていましょう」


 丁寧な口調で紹介してもらい、一言ありがとうと礼を言ってから、躊躇しながらも溶岩へ手を突っ込んで地脈の操作を始める。

 横で「おお、そんな私には勿体ないお言葉……」とよく分からない感動に打ち震えているトカゲがいたが、無視して溶岩に向き合い、その沸騰した様子に少し怖気付いてしまう。

 きっと大丈夫だろうがもしも入れた瞬間に手が蒸発したらと……と身構えていた空だったが、老舗の旅館に一つはある熱湯風呂くらいの感覚だったので、安心して地脈を整えていく空。

 ティターニアがいた森で多少慣れたおかげか、地脈操作中にも周りに注意を向けれるようになり、イヴたちが何をしているのか確認する。

 視界の端で、空と同じように溶岩に手を突っ込んでいるイヴを発見する。


「おい!イヴ何やってんだ!?」


「あ、マスター、地脈操作していても喋れるようになったのですね」


「慣れたからいけるようになったけど……熱くないのか?」


 両手で溶岩をかき混ぜているイヴ、その目は新しい発見に爛々としており、遊び道具を離せないでいる子供のようだった。


「私はホムンクルスなので、高温のものを触るのなんて問題になりませんよ」

「安心してください、マスター」


 それもそうかと納得し、再び地脈に集中しようとするが、何だかドタドタと音がし出した後ろを振り返る。

 そこには、楽しげにトカゲに跨り『とつげぎー!』と命令するティターニアと、それに嫌そうにしながらも、六足の手足を大げさに動かし大地を揺らしながら駆けずり回るトカゲ精霊。

 その二人の間には明確な上下関係があるらしく、ティターニアが上、トカゲ精霊がそれに従うといった風であった。

 きっとティターニアって名前がそうしてるんだろうな、と考察する空。

 その考察は見事に的を射ており、精霊のような不定形の存在は、名前という確かなものを与えるとその名前の格によって強さが上下するのであった。精霊の女王である『ティターニア』の名は、精霊の中でも有数のビッグネームであり、空の限られた知識によって創られたこの世界上において、ティターニアは事実上最強の精霊になっていたのだった。


 溶岩で遊ぶイヴ、段々と轟音を出し始めたティターニアとトカゲ精霊をスルーし、着々と地脈の操作を進める空であった。






 作業が終わり、手に付いた溶岩を払って背後を向き、操作中に無視していた轟音の結果を目の当たりにする空。

 溶岩湖を囲むようにそびえる火口の一部が抉れ、高温で焼かれ溶岩と化した地面がそこら中に散らばっており、空が地脈を弄っていた短時間に、休火山の山頂は悲惨なことになっていた。

 無為な破壊活動を喜ばしく思えない空は、わんぱくが過ぎるティターニアたちに青筋を立てて言った。


「おいぃー?誰がここまで暴れていいって言ったぁ?」


 自分たちでもやり過ぎたと思っていたのか、一向に空に目を合わせようとしないティターニアとトカゲ精霊。

 やがて、顔を見合わせてひそひそと何かを話始めた。 


「我らが神がお怒りですよ、これはティターニア様のせいです」


「え、責任転嫁かい?そんなこと言う君も乗り気だったでしょ」


「そ、そんなこ「おい」


 低く唸るような空の声に二人して背筋を正して返事をする。トカゲ精霊は六足歩行なのでほぼそのままだが。 


「「はい」」


「自然は、大切に、しろ、分かったか?」


「「分かりました」」「神さま」「我が神」




 怒られて意気消沈している二精霊を放っておいて、イヴに次の地脈の場所について聞きに行く空。


「イヴ、次はどこの地脈が近そうだ?」


「はいマスター、次はこの山脈ともう一つ山脈を越えた先の洞窟がいいと思われます」


「洞窟かぁ、あいつみたいに別の精霊もいるんだろうな」

「土の中なら、ノームとかかなぁ……」

「ってトカゲのあいつの名前付けてないじゃん」


 見た目からそれという名前が浮かびすぎていて、名付けを忘れていた空。

 今なお落ち込んでいるトカゲ精霊に近寄る。


「おい」


 ポン、と空の胴よりも太い足に手をやる空。


「神……何か御用でしょうか……?」


「お前、名前ってあるの?」


「ありませんね、生まれてから今まで神以外の者たちとは会っていませんので……」


 口調と同じく性根も真面目なようで、怒られたことを結構引きずっているトカゲ精霊。

 

「じゃあ、俺が付けてもいいか?」


「よろしいのですか!?是非、お願い致します!」


 何だか傲慢な提案ではあったが、この精霊の名が空の脳内で完全に決まっているため、迷わず言う。


「お前の名前は、サラマンダーだ」


 サラマンダーとは、四つの属性を司る四大精霊の火の精霊。

 地球で言われていたサラマンダーの姿は、トカゲやそれに似た竜であり、溶岩に適した体を持つトカゲの姿を持つこの精霊は、一目でサラマンダーだと分かるような見た目だったという訳であった。

 空がその名を口にした瞬間、僅かにサラマンダーの体が発光したかのように見えた。

 そして、そのサラマンダー自身はというと。


「…………ッッ!」

「私はサラマンダー!偉大なる神の(しもべ)であるサラマンダーである!」

「感謝します!我が神よ!そのような荘厳なる名を頂けたこと、その名に恥じぬよう神が御身を奮って創り上げた地脈を未来永劫守って見せましょう!」


「あーあー、暑苦しいわ」

「というか、お前って地脈守ることになったの?」


 やるとしても火山を守るくらいかと思っていたが、予想よりも重要な役をすると言ってきたので思わず聞いてしまう。


「ええ、私は火や熱の属性を持つ身、それならば私が地脈を守るのがいいでしょう」

「地脈とは、この世全ての魔力の源の路。それは決して欠かしてはいけないものかと思いまする」


「確かに、ならよろしく頼むけどさ、ティニーに一緒にいてくれないかとか言われなかったか?」


 共に楽しく遊んでいたので、てっきりずっと一緒にいるみたいなことを言うものかと思っていたがどうやら違うらしい。 

 そんなことを思っていると、ふわふわと漂いながらそのティターニアが空の肩に止まった。

 火口に来た時のようにぐったりとしていた。


「あの魔法の魔力切れちゃってあつーい、神さまの近く涼しー」


「ティターニア様!我が神にそれは無礼が過ぎるのではありませんか!?」


 上下関係にしっかりとしているサラマンダーがティターニアに口を挟む。

 さっきまでのサラマンダーであれば「よしたほうがよいのでは……」といった感じであっただろうが、サラマンダーという強い名を与えられたことで自信を持ったのか、少ししっかり目に叱るサラマンダー。

 けれど、その叱る相手は精霊の頂点であるティターニア。珍しく語気を強めたサラマンダーの説教など意にも介さぬ、といった風で、


「うるさいなぁ、君の近くちょっと暑いからどいてよ」


「なっ……!」

「私にはしっかりサラマンダーという素晴らしい名を付けてもらったのです!ティターニア様もしっかりサラマンダーとお呼び下さいね!」


「はいはーい、さらまんだーさらまんだー」


「ティターニア様!!!」


「もぉぉ、サラマンダーはやかましいなぁ」

「あ、神さま。サラマンダーは絶対森には連れてかないし、ここに住むのもしないからね!」


「あ、うん、何となく分かってた」


 暑いのが嫌いなティターニアがここに居続けるのは無いと思ってたし、ティターニアのすることに一々口を出してきそうなサラマンダーを傍に置くことも無いだろうというのは、容易く想像出来たことだった。

 サラマンダーが森に行ったら植物とか全焼しそうだし、という想像も添えて。




 


 火山でのやるべきことが一通り終わり、次の目的地である洞窟へ向かおうと火口付近に戻って来た空たち一行。

 その後ろには見送りに来たサラマンダーも付いてきていた。


「じゃあ、次の地脈の場所行くか」


「はい、マスター」


「おっけー!」


 顔を見合わせてイヴとティターニアに確認を取り、後ろで控えるサラマンダーに声をかける。


「サラマンダー、俺が地脈の操作を全箇所終えた後、地脈を預かるのはお前だ、頼んだぞ」


「お任せください我らが神よ、このサラマンダー、この身が朽ち果てるまでその使命果たし切りましょう」


 空の言葉にうやうやしく顔を下げる。そんな真面目な場面で、耐えきれないといった雰囲気のティターニアが、


「たまにくらいなら、ここ来て遊び来るからね!楽しみにしててよサラマンダー!」


「ははは、それは楽しみですね、お待ちしておりますティターニア様」

「それと、イヴ様」


 あまり接点が無さそうなイヴに声をかけるサラマンダー。その声音には少しばかり悔しさがある気がした。


「私はこうして地脈を預かる身ゆえ、神を直接扶くことが出来ません」

「イヴ様が神を心より慕っていることはしかと感じ取っていましたが、どうか我らが神の御身を傍より支えて頂けますこと、お願い致します……!」


 その言葉は、最も傍で仕えるイヴへの嫉妬心も混じっているようだったが、何よりも創造主である空の身を案じていたサラマンダーは「任せたぞ」とそんな強意もあるようなそんな願いをしたのだった。

 そんなことを言われるとは思わなかったイヴ。少し驚いた顔をしていたが、サラマンダーが込めた想いを感じ取り、確かな声で返事をする。


「了解しました。サラマンダー様のマスターを想う気持ち、よく伝わって来ました」

「あなたの使命に恥じぬように仕えると、この命を懸けて約束します」


「ありがとうございます、イヴ様」

「では、我が神」


「おう、じゃあそろそろ行くか」


「しゅっぱぁあつ!」


 ティターニアの勢いのある掛け声で宙へと浮かんでいく空たち。

 今度の飛行は、創造神の力ではなく魔法で体を浮かせている。


「じゃあなー!」「またいつかー」「絶対遊び来るからねー!」

 

 三者三葉の別れの挨拶をする空たち。

 ティターニアに至っては、さっきまでは「サラマンダーうるさくてきらい」などと言っていたのに一時の別れとなった今では、少し泣きそうな顔をしていた。

 そんな空たちに、サラマンダーは深い礼を以って返していた。

 地上にいるサラマンダーに手を振りながら、目的の洞窟へ向かっていく空たち。

 サラマンダーは、空たちが遠くを飛ぶ鳥たちと見分けが付かなくなるまで、固く頭を下げ、空たちの旅路を祈っていた。


  

サラマンダーがいるなら、後はもう、ね……?


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