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18 再創造と願いと魔法

ちょっと長いです。



「そっか、それは困ったな……」


 言葉では平静を保っている風ではあるが、その内心はようやく思い付いた計画が一気に無に帰すような問題の発生による困惑と、ヤグからの願いであるヤグたちの子孫の繁栄を約束出来なくなるかもしれないという無気力感が胸の内を満たしていた。

 その感情を表情には出そうとしなかった空であったが、従者として生まれて来たイヴにとっては主の感情の機微を察するのは容易いらしく、どう声を掛ければよいものかとそばで立ち尽くしていた。

 世界の方向性、それは本来創造物に特定の感情を持たなかった元創造神が、気に入らない世界だったのならば一から創り直すということを行っていた弊害に思えた。

 ふと、自分の望む世界を洗い直す空。

 その考えに、とある勘違いがあることに気付いた。


「なぁイヴ、ヤグたちがそのまま人間に進化していくって可能性はあるのか?」


「はいマスター、可能性だけなら僅かにありますが、やはりマスターが思い浮かぶような人間らしい人間の種族には進化出来ないかと」

「彼らが人間のような風貌に進化するには、あまりにも骨格や知能が完成されているので……」


「うーん、それで人間も生まれてくるというか、今も進化していっているんだろ?」


「はい、マスターが最初に世界を創造なさった際に、どこか無意識で人間の誕生を想像したのだと思われます」


「確かにしてるかもしれないな……」

「でも、このまま人間とヤグたちみたいな種族が入り混じる世界だったら……」


 その結果起こるのは、ヤグたち異種族への迫害。

 いや迫害なら優しい方かもしれない、ヤグたちの力や容貌を過度に恐れた人間がヤグたちの種族を滅ぼしかねない。地球では同じ種族であるのにも関わらず差別や迫害が絶えない。

 その人間が異種族という分かりやすい相反する者を見つけた時、果たしてどのような結果を生むのか、空には想像もしたくなかった。

 そう言った想像をしより気持ちを落ち込ませる空、たとえもしもの話だったとしてもその可能性が多分にある限り、その道を考えもなしに選ぶわけにはいけないのだ。


 自分が最初に願った、『創造した世界の冒険』それに『人間の』という修飾語が入っていたこと、おそらく願ったその時にはそう思っていたのは間違いなかった。

 その時は、ヤグたちのような純粋な生き物を愛しい一つの命だと、そう認める心は持っていなかったのだから。

 忘れていた命への思いやり。

 そのでかしたことへの後悔と、その時の自分が何の考えなしに動いていたという自己嫌悪の念で失意の底に叩き落される空。

 ソファーに深くのしかかり、溜息をついてどこかをぼーっと見詰めることしか出来ない。




 そんな空を見て、何かマスターのためになることがしたい、そう思ったイヴは自らの知識の中を探すが、イヴには創造神の質問に対してそれに答えるための知識しかなく、自分であれこれと考えて問題を解決したりする能力には乏しかった。

 そして、自分にその能力が無いのであればと考え、とある方法を思い付く。

 けれどその方法には欠点があった。だが、目の前で意気消沈する空を見かねて、失礼を覚悟で提案する。


「マスター、もしかしてですがその問題を解決することが出来るかもしれません」


「本当か!?どういう解決法だ!?説明してくれ!」


 食い気味に反応し、立ち上がってイヴの方に向き合う空。


「はい、マスターの記憶や知識を読み取ってそこから何か案がないかを探すという案があります」

「人の記憶というものには、その人間がその時どのように思ったかなどの感情もこもってので、マスターがより好むような解決法が探せるとは思いますが……」

「ですが、そこに確実に解決法があるかは分かりませんし、マスターの記憶を私が読み取るというのはマスターに対して大変無礼なことですし……」


 言いながら自分の考えに自信が持てなくなっていくイヴ。


「このような幼稚な案しか出せず申し訳ありません、どうかお忘れください」


 説明している途中でどんどん顔が曇っていき、その果てにはその案を取り下げてしまう。

 けれどそんなことは気にせず、しっかりとイヴと目を合わせて話しかける空。


「いい、その案でいこう」

「やらないよりやって出来ないほうがいいしさ、俺は頭の中とか見られても大丈夫だしさ」

「やってくれ、イヴ」


「本当に、よろしいのですか?」

「マスターの過去や思い出、知られたくないようなことも、その全てを私が知るということですよ?」


 未だ暗い顔が晴れず、口から出る言葉にも元気が無くどこかうつむきがちなイヴ。

 そんなイヴの顔を持ち上げ、再び目を見て話す。


「大丈夫だって、イヴはこれから俺とずっと一緒にいるんだろ?なら色々知っといた方が楽かもしれないぞ?」


 その時の『色々』には、もちろん空が過去に犯した過ちについても入っていた。

 その事実を知られるのはあまり心地の良いものではなかったが、イヴにもっと自分を出して打ち解けること、その為には自分の隠したい過去もさらけ出さないといけない、という空の覚悟あっての言葉だった。 

 そして、その覚悟に折れたかは定かではないが、表情を晴らして空に向き合うイヴ。


「畏まりました、では記憶を読み取ってもよろしいでしょうか、マスター」


「いいよ、何時でもどうぞ」


 では、と言って、空のこめかみの辺りを両手で優しく押さえ空を前かがみにさせ、白磁のような白い肌を持った顔をすっと寄せてくる。

 とてつもない美少女が頭に手をやって顔を近付けてくるこの状況を見て、空は、


(え、記憶の読み取りってひょっとしてキスですか!?)

(いやぁ、いくらなんでも性急というかおませさんというかって顔ちけぇ!)


 とさっきの真剣な空はどこへ行ったのかと言いたくなるような頭の中になっていたが、イヴの唇が空の唇に近付くことはなく、おでことおでこがくっついた状態になっていた。


(あーなんだおでこくっつけるだけねって言ってもやっぱ顔近いんだよな!)


 そんな空の内心はいざ知らず、イヴは何も動じるものはないといったようで、


「では、読み取りを始めますので、額は動かさないでくださいねマスター」


 とそう言って目を閉じ静かになってしまった。

 

 




 しばらくしてイヴが離れる。

 空は、イヴが離れるまでの時間が永遠のようにも思えた。が、実際の時間は1分程。空の美少女が目の前にいるという緊張がゆえにそんな作用を生み出していた。


「読み取りが、終わりました」


 空の記憶、つまるところそれまでの人生全てを見てきたことに等しい情報を受け入れているからか、どこか緊張した面持ちで言うイヴ。

 

「で、何か解決法みたいなのはあったか?」


「申し訳ありません」


 その返事に少し気を落ち込ませる空。イヴに全部を期待するというのがどれ程お門違いの期待は分かっていたつもりだったが、それでも落ち込みはするのだった。

 空にそんな表情をさせてしまったことを酷く後悔しているイヴ。とりあえず何か話しかけて気を紛らわせようと、空の記憶を元に思ったことを言う。


「マスター、私がマスターの記憶を読み取って気付いた感想を少しよろしいでしょうか?」


「ああ、うん、いいよ」


「ありがとうございます」

「マスターの知識の中にあった物語に、オーガやオーク、ドワーフなどといった人間の形を持った生き物があったのですが」

「その魔物?や魔族といった種族が少しヤグ様たちの種族に似ているように思いました」

「ヤグ様たちがあのような容姿になったのは、マスターのそういった知識が元になっているのかもしれませんね」


 そのイヴのただの感想に、とある案が稲妻のように思い付く空。


 その案とは、魔法の存在。


 ヤグたちのような優秀な体を持っていたり、はたまた優秀な知能を持っていたりするが人間とは全く違う存在の種族は、この後もぽつぽつとニューアースに生まれてくるだろう。

 だが、その種族は空の最初に願った、人間の世界で冒険がしたい、その願いによって生まれ繫栄するであろう人間に迫害されたり、最悪滅ぼされるかもしれない。

 少数の種族が生まれ人間に疎まれる、そんなことは当然で、もしかしたらそれはそういうものと切り捨てるものなのかもしれない。

 けれど、彼らにも命があり知性を持って、愛を持って生きている。

 そのことを何よりも感じた空は、彼らに力を持たせることを考えた。 

 それは、迫害をより促進させるかもしれない。だが、その迫害に打ち勝てるだけのアドバンテージがあれば、ないよりは生きやすくなるだろうと考えたのだ。

 それは、ヤグたちのような種族を『魔族』という、人間よりも強い力を持った種族への進化だった。

 力を持つことによる助長、それがあるかもしれないのは空も理解していたが、人間たちの集団の力であればどうにかなるだろうという気持ち、そして何より、ヤグたちの健やかなる生の確保が優先された。


 そして、魔族への進化には『魔力』といった存在が不可欠である。

 それは、ニューアースに『魔法』が起こるということだった。

 

 その結果にどのような未来が待っているかは、全く分からない。

 もしかしたら、その魔法により人間がもっと栄えるかもしれない。また魔力により、強大な力を持つ生物が生まれその他の生物全てを淘汰するかもしれない。

 けれど、そんな考えは、


(魔法がある世界の冒険、めっっっちゃ楽しそう!)


 という身勝手で、それでも空の創造の推進力となっている想いには、勝つことは出来ないのであった。

 









「魔法があればいいんだ……!」


 自分が言った感想の後に考え込んでしまったので心配していたが、何だか嬉しそうな様子の空に聞くイヴ。


「魔法ですか?」


「うん、魔法だよ!イヴ!」

「ニューアースに魔力を創って、ヤグたちみたいな種族の力を強めて、少しでもいいから生きやすくさせるんだ!」


「確かに、マスターの知識の中にあった魔族にヤグ様たちをそうしてしまえば、ヤグ様たちは救われるかもしれませんが、マスターの考える可能性の多い世界にはならないのではありませんか?」


「いや、そこの問題も大丈夫だよ」

「魔力の量を地域や場所で変えてけばね」


「変える、ですか?」


「そう、俺が思う魔族の性質にね、魔力の濃い場所で生息することが多いというものがあるんだ」

「そして、魔力が多い場所にはその魔力を取り入れて強くなった生き物が増える」


「そうすることで人間から遠ざけようと?」


「うん、その場所から移動できるぐらいに強いなら、人の生活圏に行っても大丈夫だろうしね」


「流石です、マスター」


 空の案に驚いたようで、胸の前で小さい拍手をしながら可愛らしい顔で感嘆しているイヴ。


「では、また創造致しますか?マスター?」


「うん、この世界に魔法を創ろう!」




 目を閉じ、魔法よ有れ、と念じ、世界の理が書き換わる。

 そして、ヤグたちような種族を魔族として進化するように、とも。

 そうして、空の創った世界に魔法、もとい魔力が出現した。

 その存在は、ニューアースの生き物に大きな影響を与えることは間違いなかった。

 良い方向にも、悪い方向にも。

 


魔法の登場です。

やっぱりなろうならこれが無いとと思いましたので……

少しでも面白いと思いましたら評価、ブクマ、感想等頂けると幸いです。

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