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17 コーヒーと方向性と未熟



 転移が終わった感覚がし、目を開ける。

 

「お帰りなさいませ、マスター」


「うん、ただいまイヴ」


 そこには、まるで空の到着を予知していたかのようなタイミングでイヴが待っていた。もしかしたら、空が転移してからずっとここにいたのかもしれない。

 そう思ってしまうほどには、イヴは微動だにしなかった。

 けれど、そんなイヴの真面目な態度にも、敬意のこもった優しいお帰りの挨拶も、空の心にはとても心地よいものであった。


 そんなイヴを横目に、考え事をするため、三人掛けほどのソファーとイヴが座る用もソファーを創造し、それに横たわる。


(これから、何するかな……)

(やりたいことは何となくある気がするけど、いまいちピンと来ないな)


 せっかく創造神になったのだからと、何かをしなければならないというちょっとした焦燥感に駆られる空。

 うーんうーんとソファーの上でゴロゴロしていると、一人用のふかふかのソファーにちょこんと座っているイヴから声が掛かった。


「マスター、お悩みのようなら紅茶やコーヒーをお入れしますよ」


「え、イヴってそんなことできるの?」


「はい、創造神様方の創造を少しでもお手伝いするため、どんな奉仕も出来るよう、と原初の創造神様が仰っていましたので」

「家事はもちろん、給仕、遊戯、ご助言など、言ってくだされば何でも致しますよ」

「夜伽なども、マスターが命令するのであれば…………」


 ほんのり頬を赤らめてうつむきがちに言うイヴ。

 その顔には、羞恥半分、まんざらでもないのが半分といった風で、空は、溜息をして言った。


「あのな、イヴ、俺はそんなことをしてもらう為にお前を願ったんじゃないからな」

「イヴには、俺が一人で寂しいときとか、どうすればいいかわからないー、って時にそばにいてもらう為にお前を願ったんだからな、まったく……」


 嘘である。 

 いや、正確に表現するなら半分嘘である。空が言った、一人で寂しい云々と言っていた時、空の内心は、


(でもワンチャンあってもいいよな、でもイヴの見た目に発情するのってほぼロリコンだし、でもイヴって絶対俺のこと好きだし、しっかり迫られたらまあいいかなって……)


 といったようにくだらない想像で一杯であった。

 その想像を振り払うように、


「で、コーヒーとかの話に戻るけど、どうやって淹れるんだ?もしかして創造するのか?」


「いえ、お手間を掛けさせてしまいますが、私に創造の力の許可を与えて頂ければ、専用の器具を用いて一からお入れ致します」

「食べ物の創造というのは思い付いている記憶に依存することが多いので、味が安定しないので」


 そこで、創造神の力って許可してればイヴでも使えるんだと頭に入れ、ならいつでも使えるようにした方が絶対楽じゃんと考え付く空。思い付いたら即行動が原則の男、もちろんこの場でも同様だった。


「わかった、じゃあ」

「イヴが創造神の力を使うことを、永遠に、許可する!」


「ま、マスター!それはいけません!」


「なんでだい?イヴにはいつか裏切る予定があったりするのかい?」


 そんなことがないのは良く分かっているが、イヴへの悪戯心で意地悪を言う。


「そのようなことはありませんが、永遠というのは余りにも不用心が過ぎます!」


「大丈夫、俺が自分で創る世界なんだから用心なんて要らないよ」


「…………もう知りません、コーヒー淹れて来ます!」


 珍しく怒ったイヴがソファーから少し離れた場所で、テキパキとドリップの道具を創造していく。

 そんなイヴの違う一面を見て、また考えに耽る空であった。






 それから数分、香ばしいコーヒーの香りと共に、イヴが「コーヒー入りましたよ、マスター」と声をかけたのと同じくして、ソファーに横たわる空がとある考えを閃く。


「マスター、コーヒーがはい「そうだ!もっと沢山いてもいいんだ!」


 突然の大声に驚き、コーヒーを落としかけるイヴ。

 そこは、神の従者。危なげなくコーヒーをキャッチし、一滴も零さず再び平静を装う。


「何か思い付いたのですかマスター?」


 受けっとったコーヒーを啜りながら、うんうんと頷いて考えをまとめていく空。

 ティーカップをその場で創造したローテーブルに置き、少し興奮しながら口を開く。


「そうなんだ、いい案が思い付いてね、あとこのコーヒーとっても美味しいよ、ありがとうイヴ」


 さり気ない感謝に照れたようで、配膳するために持っていたおぼんで口を隠しながら、


「いえいえ、従者として当然のことですので……」


 内心では、マスターに褒められちゃった!やったやった!と小躍りしそうな嬉しさが満ちているイヴであった。

 一方空の方は、自分の喉につっかえていた小骨のような思いがようやく言語化出来るといった喜びで、早く説明したいとうずうずしていた。


「それで、その案とはどういったものなんですかマスター?」


「それは、これからの世界の創造に関わる話なんだ、聞いてくれるか?」


「もちろんです」


 そうして、空の新しい世界創造計画を話していく。

 その計画とは、ヤグたちのような知能を持ったような生き物がもっと繁栄するような、可能性に満ち溢れた世界、それを望んだものであった。

 空の最初の計画であった自分が創った世界を冒険する、その為にはその惑星の主な生物が人間でなければならなかったのだが、いまやヤグたちと仲良くなり、その容姿にも慣れた空にはその主な生物が人間である必要も無くなっていた。

 よって、色々な知能を持った生き物が生まれてもいいんじゃないかと、そういった考えに至ったのである。

 その計画を話し終えると、イヴは話始めとは違って少し暗い顔をしていた。

 どうしてそんな顔をしているのかと空が聞くと、


「マスター、世界の創造には一定の方向性のようなものが発生します」

「例えばマスターの創ったこの世界には、マスターが最初に想っていた時の冒険をしたいという欲求のようなものが方向性として世界をかたどっているのです」


「ひょっとして、その欲求が何かまずかったりするのか?」


 はい、と深刻な顔で答えるイヴ、続けて、


「その欲求によって、これから生まれていく生物はその想いに答えるように人間に進化していくのではないかと思います」


「じゃあ、その欲求をまた創造し直したりっていうのは?」


 ふるふると首を振って否定するイヴ。


「それをするには、世界の再創造、つまり今の世界の破壊をしなければなりません、マスター」


 現在の世界の破壊、それは今の空にとって絶対に選択することのないものだった。

 なぜならば、確かに交わしたヤグたちとの関わり、世界の破壊とはその思い出の破棄に他ならないからだ。

 よって、今の空に出来ることはただ一つ、創造の方向性を維持したまま、空が計画した可能性のある世界を創っていくことだった。



 

評価が頂けるととても嬉しいですね。

文章を書く手も少し早くなる気がします、気がする、ですが(笑)

これから、少しずつ異世界での冒険につながっていきますのでしばしお待ちください。

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