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16 夕餉とベッドと気付き



 レガとの問答から少しして、すっかり夜になり、森の中が全く見通せなくなる程の闇が辺りを覆いつくしていた。

 空とヤグたちの家族は、竪穴式住居のような家の中で夜ご飯を食べていた。

 献立は、魚の串焼き、ウシの串焼き、どんぐりのクッキーのようなもの、お湯が並んでいた。なぜかあったお湯だが、ヤグが言うには、夜は冷えるから体を温めていた方がいいとのことだった。

 けれど、空はこの献立に不満があった。いや、不満しかなかった。


 (調味料、塩だけ!)


 そう、先程紹介した献立には塩しか使われていないのである。

 縄文時代ほどの文化しかないヤグたちに塩以外のものを期待するのは無理があるが、その遥か先の文明に生きていた空からすると、調味料塩のみの食事には我慢ならないのであった。

 実は、その塩にもヤグたちの大変な努力の結晶なのではあるが、流石に空にはあずかり知らぬ事柄だった。

 そうして、空はこの塩味しかない食事をどうにかする為に思考する。

 

(あ!創造神の力使って調味料創ればいいや!)


 だが、すぐにその考えの問題点にも気付く。


(でも、俺が居なくなった後に調味料がなくなってしまっては可哀そうだよな……)


 そして、その問題点すら解決する案を思い付く。


(森の中にある植物を調味料にすればいいんだ!)

(そうすれば後で植物の見た目とか、栽培の仕方とか教えておけば自分たちでどうにか出来るはずだ!)

  

 こりゃ名案だと、そう思い実行に移す空。

 家を中心にして香辛料や調味料になるような植物はないかと、念じる。

 すると頭の中に声がした。


『マスター、イヴです』

『細かい指示が必要そうな想いでしたので、私が説明をしてもよろしいでしょうか』


(うん、頼んだ)


『周囲にある植物は………………』




 そんなこんなで、数種類の栽培可能な調味料を手に入れた空。

 その調味料を夕食の際に、ちょっとかけてみてよ、とヤグたちに勧めて食べさせる。


「ソラ、おまえ、もうなかま、だけど、この、ちょうみりょ?はこわい」


「まぁまぁ、とりあえず食べてみてって」


「うーん、わかった、ソラ、しんじる」


 調味料がかかったウシの肉をおそるおそる口へ運ぶヤグ。

 そんなヤグを不安げに見守るレガとルーガ。

 あむ、と縦に開いた口に肉が放り込まれる。

 そのまま、ヤグの口がもぐもぐ、と咀嚼を始め呑み込む、そしてヤグは目を見開いて、


「これ、うまい!!!」


 と叫び、ヤグがそう言うならと、他の二人も肉に調味料をかけて食べ始める。

 すると、その二人も、


「おいしい!!!」

「あら、ほんと」


 そう言って、嬉そうな笑顔を浮かべている様を、空は心底幸せだという顔で見ていた。

 それは、すでに失くした家族への郷愁なのかもしれない。


 その後、楽しい食事も終わり、ヤグとルーガにも自分は神様だという趣旨の話をしたら、


「ソラは、かみさまか!じゃあ、おれたち、あんしんだな!」

 

 とヤグがバシバシと背中を叩いて来たり、


「じゃあ、ソラは、あのそらに、ひかってる、へんなのも、しってる?」


「ああ、あれは星って言ってね、とっても遠いところにあるんだけど、俺たちみたいな色んな生き物がいたり、海だけみたいな場所があったりするんだ」


「へぇ!すごいね!」


 といったような他愛もない会話をして、藁を敷いただけの寝床で寝ることになった。

 が、そこも現代人の空が許せるわけもなく。

 木の枠組みに繊維を編んで作った簡易ベッドを人数分作り、そこで寝ることになったのだった。

 どうしてそんなベッドを寝る前の短時間で作れたかというと、もちろん創造神の力である。

 この程度なら、知識があれば作れるから……との考えであるが、頑丈なベッドの木枠、人が寝れるほどの繊維の織、それらをヤグたちが再現できるかは怪しいものがあったが、出来てしまったものは仕方がないものであった。

 

 その夜、空はぐっすりと眠った。

 創造神に睡眠は必要ないものであるが、精神の安定のために眠ることが出来るのであった。

 だが、その夜の空はヤグたちへの緊張、慣れない狩り等でしっかりと疲労していたため、創造神の云々関係なく熟睡していたのだった。




 一晩明けた次の日、日の出とともに目が覚めた空は、身体の関節をボキボキと鳴らして伸びをして、外へ出て、そこで水を浴びていたヤグに出会った。

 川から汲んで来たのであろう水でバシャバシャと体に水をかけていたヤグが、空に気付く。


「おう、おきたか、ソラ、よく、ねむれたか」


「ああ、結構疲れてたのかな、よく眠れたよ」


「それは、よかった、おれも、おまえの、つくってくれた、べっど、のおかげで、よくねむれた」


 ブルブルと、体を震わせて水を飛ばすヤグ。

 ふと、ヤグが呼びかけて来た。


「もう、いくのか」


「うん、俺は、神様だからさ、やらなきゃいけないことが沢山あるんだ」


「そうか、また、くるといい」


「うん、ありがとう」


 そう言って、イヴがいる空間、宇宙全体を俯瞰するための場所へ転移するように念じようとして、声を掛けられる。


「かみさま、ルーガを、あとに、うまれるこを、たのみます」


 神様の役割など理解出来ないだろうと思われたヤグ。

 けれど、その時は確かに、神という者の役割を理解して願いを言っていた。

 そして、その言葉に空は、


「任せろ、俺たち仲間だろ?」


 そう言って再び転移を念じ、その身をニューアースから消した。

 転移するその瞬間、笑顔で手を振るヤグの姿が見えた。






 ヤグは、分かっていた。

 空とは、二度と会えないであろうことを。

 それを知っていたから、知っていたけれど、またくるといい、そう言ったのだった。

 その心は、空という、新しく出来た仲間を失わないための我儘、ちょっとした悪戯のような言葉だったのかもしれない。

 けれど、その後に放った祈りの言葉。

 それは、確かな神への祈りであった。

 これから生まれてくるであろう子孫への、健やかな祈り。

 その祈りは、間違いなく叶うであろう。

 なぜなら、ヤグが祈りを捧げた神、その神は、森羅万象を操りし創造神なのだから。




 こうして終わりを告げた、空の罪滅ぼしの二回目のニューアース観光。

 この時に生まれた波紋が、遥か彼方まで進んだ未来でとあることを引き起こすのだが、それが分かるのは、もっと先の話…………

 

 


毎日誰かが見ているのだと知ると創作意欲が湧いてきます。


出来れば評価、ブクマ、感想等して頂けるととても嬉しいです。

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