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14 謝意と団欒と狩り



 イヴの名付けからすぐ、そうだ、と言い向き合う空とイヴの二人。


「ごめんイヴ、ちょっとやらなきゃいけないことがあってさ」

「ちょっと行ってきてもいいかな?」


「マスターはマスターのしたいことをして下さい」

「私は助言をすることはあっても、マスターのしたいことに口を出すことはあり得ません」


 毅然とした態度できっぱりと言い切るイヴ。

 先程の笑顔とは打って変わって、創造神の命令を忠実にこなすホムンクルスらしい言葉だった。


「そっか、ありがとう」

「でも、言いたいことがあったら何でも構わないからな?」

「休みたいー、とか、仲間が欲しいー、とか何でも」


「マスター、私が自ら何かを望むというのは決して……」


 何かを悩むように言い淀む。そして、


「仲間が欲しいというのは少し考えてもよろしいでしょうか……」


 恥ずかし気に小声で言うイヴ。

 感情が芽生えたことで仲間がいたら、という願望が出来たのだった。


「うん、全然大丈夫」

「じゃあ、ちょっと行ってくるね。一日かそこらで帰ってくるから!」


「畏まりました、マスター」

「ですがマスター、マスターが念じれば世界の何処であったとしても話は出来ますので、心配なさぬように」


「それでは、マスター」

「行ってらっしゃいませ」


 従者らしく腰を折って礼をするイヴ。

 服はメイド服ではなくワンピースだが、そこには滲みだす気品があった。


「行ってきます!」


 やっぱり人に見送ってもらえるのはいいな、としんみりと思ってニューアースに移動するように念じる。

 その瞬間、空の体はその空間から塵一つ残さず消えていた。






 鬱蒼と茂る森林、そこを流れる川、上空を飛ぶ未知の生物。

 空は再び、自らが創ったニューアースに降り立ち、その異常性を再確認していた。


「時間は……一晩明けたぐらいかな」

「よし、じゃああいつらに会いに行かないとな」


 そう言って、人間もどきたちの拠点がある場所へ、草木をかき分け進んでいく空。

 やがて、粗雑なつくりの竪穴式住居のようなものが見え始め、


 (あの生き物と意思疎通が出来るようになれ)


 そう念じて、その家々に進んでいった。


 



 家の生活音が聞こえるくらいの距離まで来た空、そして、


「前のことで話があるんだ!姿を見せてくれないか!」


 と叫んで、無音の家の方へ意識を向けた。

 すると、その家の中で何かが動くような音がし、メスの人間もどきが後ろに子を連れてゆっくりと、空の方をきつく睨みつけながら出て来た。


「なに、しにきた、おまえは、ヤグをころした」

「わたしと、このこも、ヤグのよにころすのか」


 そう言ってこちらを見つめるメスの人間もどきの瞳には、少しの怒りと大きな絶望が見えた。

 その人間もどきの後ろに隠れている子供の人間もどきも、こちらをとても怖がっているようで空のことを少しも見ようとしない。

 放つ言葉は少し曖昧だったが、その語気には暗い何かが確かにあった。

 その姿を見て、空は自分がしてしまった我儘(わがまま)の罪深さを深く感じていた。

 その感情を振りほどくように、


「まず、君が言っているヤグは生きている!」

「ここに!」


 そう宣言して、再び念じる。

 自分が消え失せろと言い放ったオスの人間もどきをここに、と。

 すると、まばたきをしたその瞬間、空とメスの人間もどきとの間にオスの人間もどきがいた。

 ヤグと呼ばれていた人間もどきは、その場で魚を口に咥えてぽかんとしていた。

 きっと、飛ばされた場所にあった河で狩りをしていたのだろう、そんなことを思うのも束の間、ヤグは空を視認するとそちらを睨みつけ、ガララララ……、と牙を出して威嚇していたが、後ろにいたメスの人間もどきの、


「ヤグ!どうして!」


 という声に反応してそちらを向くと、驚いて、けれどとても嬉しそうに、


「レガ!いきてて、よかった!」


 そう言って駆けだし、家族三人で抱き合って再開を喜んでいた。

 その姿を見て空は、


 (ヤグっていう人間もどきのことを死ねだとか思わなくてよかった……)

 (もしそう念じていたら、生き返れって念じればいいんだろうけど、それじゃなんか違うもんな)

 (家族、家族ね……母さんも、父さんも、殺してしまった弟も、何処かで元気に生まれ直してたらいいな)

 (というか、地球の管理って今どうなってるんだ?後でイヴに聞かなきゃなきゃな)


 そんなことを思っていると、家族の再会を喜びあっていたヤグから声が掛かった。


「おい、おまえは、なんだ、かぞくとあわせたのは、ありとう」

「でも、おまえは、てき、じゃなのか」


「ごめん、自己紹介が遅れた」

「俺は、空」

「あの時は本当にすまなかった、俺も焦って混乱しちゃってて、酷いことをしてしまって……」

「とにかく、今は絶対に君たちに危害は加えない」


 心の底から謝り、訴えかける。

 少し意味が伝わらなそうな言葉を使っていたが、創造神の力を信じて思っていた通りの言葉を伝えた。

 これで許されなければ、このまま帰るつもりだったが、


「それは、わからない、おまえを、おれは、しらない」

「だから、おまえ、おれと、いしょに、かり、する!」

「ほら、いくぞ!」


 そう言って、空をヒョイと肩に乗せて川の方向へ連れていくヤグ。

 てっきり罵詈雑言の一つや二つは飛んでくるものかと覚悟していた矢先に、狩りをする宣言がきて、混乱を隠せない空。

 え、あ、ちょ、と情けない声を出して連れていかれていた空と、それを無視して強引に進んで行くヤグを、その奥さんであるレガと呼ばれていた人間もどきが小首をかしげて不思議そうにしていたが「いてらっしゃい」と見送っていたのだった。




 連れて行かれること数分。

 ヤグと空は、近くの最初に空が見つけた川に来ていた。

 すっかり落ち着いて、特に抵抗することもなく担がれていた空を河原におろすと、


「レガと、ルーガは、ごはんいる、まだとってない」

「いま、おまえと、とる」

「おまえ、いっぱい、ごはんとれたら、なかま、みとめる」


「わ、わかった、俺も魚捕ればいいんだな」


 ヤグの体格に面と向かって話されると威圧感がすごく、少し尻込みする空。

 けれど、罪滅ぼしの意味も兼ねるこの魚捕りに、ヤグが怖くてあまり魚捕れませんでした、だなんてことがあっては罪滅ぼしの意味がなくなってしまうし、創造神の力を使って食べ物を創ってはなんだか不誠実。

 よって、真面目に魚捕りを始める空。その横で、


「おれ、もりで、とってくる、おれがとれたら、おわり」


 そう言って、森の中へ再び入っていった。

 その後ろ姿を見て空は、


「いや、一緒に魚取りしないんかい」

 

 とちょっとしたつっこみを入れていた。



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