13 自己紹介と美少女と名前
13話にして、ようやくヒロイン登場!
時は少し戻り、神想人間が目を覚ますその瞬間。
空は、目を覚ました女の子とガッツリ目が合っていた。
その目は、綺麗な黒目だったが、異常だった。
その異常とは、虹彩、目の色が付いている部分が美しい幾何学模様をしていたからだ。
けれど、その時の空にはそんな幾何学模様の目は関係なく、ただ、女の子と超至近距離で目を合わせてしまった。
そんな下らない混乱で一杯だった。
結果、目を覚ました女の子の最初のあいさつにたじろいでしまい、あまり格好が付かず、挙句の果てには、急ごしらえの下手な笑顔で、「じゃあ、まず君のこと教えてよ!」とイケメンにしか許されないセリフを吐いてしまったのだ。
空は、今内心で、物凄い後悔に苛まれており、初めましてでやっちまった、の精神であった。
まぁ、実際の所は、ホムンクルスの少女は何も気にしてはいないのだが…
「私のことですか?創造神様」
無表情で疑問を返すホムンクルスの少女。
返事を返されるごとにビクッと少し反応してしまう情けない空。
落ち着きを取り戻して、
「うん、とりあえず君がどういう子なのか知らないと始まらないしね」
「というか、その創造神様っていうの、なんか背中がむず痒くなるような気がするから止めてほしいな」
「そうやって仰々しく呼ばれるの慣れてないんだ」
久しぶりに女の子と話した反動か、少しまくし立てて話してしまう空。
「そうでしたか、申し訳ありません。では、どうやってお呼びすればいいでしょうか?」
うーん、と少し悩んで、
「マスター、うん、俺のことはマスターって呼んでよ」
「畏まりました、マスター」
「じゃあ、君のことを教えてほしいな」
私のこと…、そう言って小首をかしげて悩む少女。
少しすると、
「私は、ホムンクルスです。そして、創造神のお手伝いをするために創られた命で、創造神様の従者であり、世界の管理者にもなれます。ご自由に私をお使い下さい」
そう少女が言った後、空は頭を押さえて悩んでいた。
それを、何か不備がございましたか?マスター?とそう言って空の顔を覗き込もうとしてくるホムンクルスの少女。
その時の空の脳内は、
(この子……最初に願った通りに感情持たせられるのかなぁ……)
とそんなことを悩んでいたのだが、いつの間にかに目の前に美少女が、どうしましたか?とそう言いながら急接近してきたので、
「な、何でもないですぅ…」
となぜか敬語になっていた。
すでに少女には、少なからず感情が宿っていること、空がそれを知るのは、もうすぐ後の話。
その後、とりあえず外に出なきゃと空が言い、暗い洞の外へ出た二人。
そして、空の創った世界を見て、ふとホムンクルスの少女が、
「ふふふ、面白い世界ですね」
ちょっとした笑顔を携えて言う。
その笑顔に、何かに笑うことが出来るだけの感情はあるのだなと、少し納得して先程の言葉の意図を聞く。
「ん?それはどういう意味?」
「あ、いえ、この世界をマスターが創った際、様々なことを想像したのだなと」
「え、ホムンクルスってそんなことまで分かるの?」
すぐさま少女が答える。
「はい、私は創造神様のお手伝いとして創造されたので、少なからず神の力、最初の創造神様の万能の力を使うことが出来ます」
その後、ハッと気付いて急いで訂正する。
「でっ、ですが、マスターに逆らうとか、そういったことは一切ありませんので…」
空は、その言動を見て、
(お。やっぱ、結構人間っぽいなぁ、この子。まぁ俺がそう願ったし可愛いから全然嬉しいんだけど)
そんな下種なことを考えてる内に、ふと疑問が。
「あいつの力っていうと、ひょっとして心とかも読めるの?」
そうだったらヤバいな、そんなことを思いながら聞く空。
「はい、マスターがご命令すれば、常にマスターの心を読んで効率的にお手伝い出来ます」
あいつみたいにされるのは普通に嫌だな、そう思っていたが、ふとアイデアが閃いて。
「じゃあ、俺の心が読めるようにして貰ってもいい?」
「はい、畏まりました、マスター」
目の前の少女の虹彩の模様がカチャカチャ、と少し変わる。
それを見た空は、
(へー、目の模様って力の切り替えを表してるんだ)
とふと思っていて、少女が、
「はい、他にも大きく分けて、創造、戦闘、人間、と切り替えが出来ます」
空の思っていたことを読み取って、追加の情報を言った。
「ああ、そうか心読まれてるとそれでも返事出来るんだったな」
「ちょっと忘れてた」
「元に戻しましょうか?」
と上目遣いで言われ、
「うん、やっぱり元の方が会話に違和感ないからね」
(うわ、この目線めっちゃ可愛いな、まじでやばい)
口と心の二重で別々のことを考えて、
「あ、え、ま、マスター、か、畏まりました。元に戻します」
予想通りに少女を混乱させたのだった。
そしてその反応を見て、空は、
(くぅー、中途半端に人間らしいの可愛いなぁ!)
とくだらないことを考えていた。
そんな下らない出来事の後、ふと少女が聞いてきた。
「マスター。マスターはなぜ、私に人間らしさやそのままといったことを願ったのですか?」
それは、少女がすぐに、過ぎた真似をしました、と訂正するほどにはふと出て来た質問らしく、いいよ、と発言を許して、
「うーん、理由っていうと、あんまりしっかりしたものじゃないんだけどさ」
「やっぱり、ずっと一緒に世界を創って行くんだからさ、人間らしい子の方が楽しいだろうなって、ただそれだけだよ」
「ずっと……」
「マスターは、創造神をこれからずっと続けていくつもりですか?」
何故か少し不安そうに尋ねる少女。
「うん、特に地球に戻ってもやりたいこともないしね、あ、でも漫画の続きは気になるかな」
「というか、どうしてそんなことを?」
「マスターも、他の創造神様と同じようにすぐに前の世界に帰ってしまうのかと……」
「申し訳ありません、マスターのお気持ちを疑うようなことを言って……」
急いで訂正するホムンクルスの少女。その姿には、今まで彼女に今まで希薄であった感情を、その身にありありと感じさせるものがあった。
そして、その感情に少しながら戸惑っているようなそんな姿も思わせた。
空は、そんな不安そうな彼女のことをしっかりと見て、言った。
「安心しなよ、俺は絶対に創造神はやめないよ」
「根拠はって言われると、少し説明に困るけど、絶対に君を悲しませるようなことにはならないよ」
その空の言葉で、少女の顔は少しだけ明るくなって、
「はい、ありがとうございます、マスター」
「ところで、この私の中にあるこの何か、思考の他に追加された感情のような何かは、マスターが願ったものでしょうか?」
自分の中にある新しい感情にまだ整理がついていなさそうな少女。
「多分、俺が人間らしくって願ったからかな?というか、今までそういうのって無かったの?」
「ちゃんと人間みたいにー、っていう感じの願いみたいな」
「そういう願いの場合は、その時に創造神様が想像した通りの性格で生まれてくるので、私自身の感情とは言えず……」
「マスターの場合は、私のことを願った際に、その想像の中に決まった性格がないようでしたで」
「こうして私本体に感情を持たせて生まれて来たのですが……」
何だかむず痒そうな表情をする少女。
「え、どうしたの、何か異常とか?大丈夫?」
「大丈夫です、マスター。元から、素のままの私自身に感情という機能は付いていなかったので、少し感情というものに慣れず……」
「元っていうことは、前の創造神の願いの時は、君自身の性格ではなかったってことなんだ」
少し慣れて来たのか、元の無表情に戻って返答する少女。
「はい、前の創造神様方の場合、創造神様の願いに沿って創られた表面的な私が形成され、そのままの私は、表面的な私を通して創造神様の命令を聞いていました」
「あー、なるほどね」
(ってことは、今の女の子は正真正銘、感情持ちたてほやほやのただの女の子ってことかやりぃ!)
そんなアホなことをことを考えていた空であった。
「よし、ありがとう、ちょっとずつだけだけど分かって来た」
「これからもよろしく、あー、えっと、名前、決めてなかったね」
「君って名前って、あったりする?」
「いえ、創造神様ごとに名付けられていましたので、私自身の名は、何もありません」
「そうなんだ……じゃあ、俺が名前考えないとだよね?」
そう空が言うと、少女は名前という言葉に反応して、
「はい、マスター私の名前を考えて下さい!」
と期待するような目線で言うのだった。
その目線を身に受けながら、うーんうーんと悩むこと数十分。
「あ、一個思いついたんだけど、いいかな?」
「はい!お願いします!」
キラキラと光るような笑顔に少し尻込みしながら、
「イヴ……イヴって名前とか、どう?」
「ちょっと、あれかもしれないけど……」
恥ずかしそうに名前を言う空、そして、
「イヴ、ですか……」
「イヴ……イヴイヴイヴイヴ、イヴ!」
「マスター!私はイヴです!」
とても嬉しそうに、初めて自分自身に付いた名を反芻する少女。
「うん、よろしく、イヴ!」
「はい、これからよろしくお願いします、マスター!」
今までに見たことがないような満開の笑顔で笑うイヴ。
その顔には、今まで感情が無かったという事実は噓のようであった。
ずっと孤独であった寂しい無名のホムンクルスの少女は、ただ無垢であった。
表面的でしかない空虚な名前なら幾つでも持っていた彼女だったが、彼女の奥底、彼女自身の名を持った。
その名は、イヴ。
旧約聖書に記された、アダムと共に生きた最初の女性。
空が、自分をアダムに見立てて名付けた、その対となるイヴの名。
少しばかり恥ずかしげではあるが、世界を創造する女性としてはこれ以上にない名前であった。
そして、その名は彼女の中の、いや、イヴの思い出の中の大切な第一歩だった。
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