12 話し相手と女の子と想い
「あっ、ちょおぉ!」
そんな情けない悲鳴を立ててスッ転ぶ創造神。
地面と激突しても大してダメージもない顔を擦って洞の中を見回す。
「これは……外から見た時と同じくらい暗いだけ…………あっ」
そう言って声を上げた空の視界の先には、木の根で張り巡らされたような大きな椅子。
不思議とその周りはしっかりと認識することが出来、そして、それに座る、中学生くらいの見た目の美しい女の子が眠っていた。
「あれが……話し相手ちゃんか……?」
少し警戒しながら、眠っている女の子に少しずつ近付く空。
傍から見たら、暗闇、眠っている女の子、ゆっくりと近付く男、事案である。
が、ここは創造神のみが居ることを許された特殊な空間、そんなことを指摘するものは絶対に存在しないのであった。
ゆっくりと、けれど確実に女の子に近付いていく空。
空が何故すぐに近付いていかないか、それには深い訳があった。
それは、空の女性経験の無さ、つまるところ、童貞拗らせすぎて可愛い女の子に近付けないのである。
なので、今現在こうしてゆっくりと近付いている空の内心は、焦りに焦り、混乱の最中にあった。
(うわあの子が俺のホムンクルスになるのかめっちゃ可愛いけど俺いきなり嫌われないかなでもあの子の親って植えて願ったから俺だしてかその理論でいうと俺って娘に発情するようなやつってことになるしというか今俺って勃起とかすんのかなもしするんだったらちょっとやばいけどというか創造神に繁殖の能力っているのかというかもう結構近いしいやこれもうほっぺた触れる距離まで近付いててか初めのあいさつどうしよよよよよよ)
大混乱であった。
根でできた椅子と、そこで眠る話し相手ちゃんの目の前まで来た空。
近付いて、驚く。
(どちゃくそにかわいい!!!)
そう、女の子が可愛いのだ。
腰くらいまで伸びた真白の髪、閉じた瞼にかかる白雪のようなのまつ毛に、ほんのりとした淡いピンクの唇、健康的な色だけれど肌理細やかなシルクのような白い肌、そして可愛らしい華奢な体躯、それによく似合う白いワンピース。
それら顔のパーツが見事なまでに完璧に整っていた。
まぁ、空自身が自分の好みの顔、とそう願ったのだから空の好みドンピシャな顔になるのは当然の帰結であった。
そうして、目の前の女の子に見とれていると、早く話したい、そんな空自身の欲求に押されて、少しどもりながらも話かける空。
「あっ、あ、あのー、初めまして、高橋空といいますぅ……」
「………………」
(あっれぇー、まじか、無視されたのか…)
自らの女性に対する勇気を使い切って話しかけた空の心は結構へとへとだった。
(いや、まだ寝ているという可能性がある…!)
が、持ち前のよく分からないポジティブシンキングで持ち直した空。
(人を起こすならば……そうだ!)
何やらアイデアを思い付いた空、そして、さっそくそれを行動に移し、
「お、起きて下さーい」
とぺちぺち女の子の頬を叩いていたのだった。
寝ているならキスをして起こすのが流儀、とふざけたことも思い付いてはいたが、そこは生粋の童貞。
女の子にキスなど、そんなハードルの高いことは到底出来ず、普通にほっぺたを優しく叩く、とそんな安全策しか出来なかったのである。
私は、最初の創造神様に創られた、神想人間。
神の血肉より創られた、創造によって創られる生物とは、違う生命。
世界を創造する創造神様に仕える従者であり、その世界の管理者。
そして、新しい創造神様が来る度に、自らを願いの通り生み直す。
生まれる前からどうあるかを願われて、その想い通りに生まれていく。
故に、私に決められた形はなく、想った形によってその在り方は変わる。
その性には、男も、女も。両性も関係なく変わって。
ある人は、失った恋人を想い、またある人は、豊満な肉体を持った性処理の奴隷として。
その時の記憶はもうほとんどないという位には薄れて行ったけれど、それでも、情報として、私の中に残り続ける。
それは、私が、創造神様方の頭脳であり、創造神様に代わって管理を任される者であり、どんな情報も教えられるようになっていて、そして創造神様の願いをより円滑に叶えていくための道具だからで。
私自身には、それを嬉しい、悲しい、そう思うような機能が備えられてはいないから。
私の表層のこう在れという想いが、感情を操作して、反応する。
別に、それを酷い、やめて、そう思うことは一切なく、ただ私は、そういうものだから。
そういった認識しか許されなかった、というよりもそうとしか存在しなかったから。
けれど、新しい創造神様はそうではないらしく。
私に、共に成長出来るような、そのままの私を願ったらしく。
少し時間をかけて、私を形作って。
これでいいのだろうか、大丈夫かな、と今までにない不安を感じて完成した私を、
私は、何故不安を感じているのでしょう、そんな神想人間らしからぬ疑問を残したまま、
暗い洞の中へ産み落とした。
今度の創造神様はどうなるんだろう、とそんな楽しみを抱いて。
あれ、私、今何で楽しいだなんて感じて…………
そんな疑問を抱こうとした瞬間、目を閉じたホムンクルスの頬を、何かに叩かれる感覚があって。
創造神様が呼んでる、行かなきゃ。
そう思って現世へ、新しい生命を始めていった。
そして、その産み落とした生命とは、ホムンクルスの彼女の最も元に近い姿。
空が、ありのまま、そう願った結果だった。
「初めまして、創造神様。ご命令を」
目覚めたホムンクルスの少女の前には、驚いた顔のままで固まった青年がいて。
その青年は、ふと佇まいを直すと、朗らかを繕った、少し不器用な笑顔で、
「じゃあ、まず君のこと教えてよ!」
そう、言ったのだった。
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