11 決断と再想像と命
第二章 世界再想像編 始まります
あまり思い出したくない、けれど決して忘れてはいけない記憶をはっきりと思い出す。
『あぁ、やっと思い出したんだね?』
「あ?何のことだ?」
『ほら、君の弟のことだよ』
『君の両親が死んだストレスで忘れたのかは知らないけどさ、全然覚えてないみたいだったからさ』
「それは……仕方ないところも少しはあるだろ」
「というかなんでお前が、って神だから知っててもおかしくはないか」
『うん、それが君を創造神に選んだ理由の一つでもあるからね』
『弟を間接的に殺して、それでもなおその罪に向き合ってきた、そんな胆力があるならさ』
そう言って、はにかんだような、そんな笑顔が見える声音で、
『きっと自分が創った命にも向き合えるんじゃないか、そう思ってね』
「そうか」
未だに、空の心の内には、幼い頃の後悔が少なからずこべりついている。
きっと、高橋空という人間は、その後悔を拭うことは一生ない。
だが、その後悔と共に生きるという決心であれば、とうの昔に終えており、空の心に根付いたその決心は、今こうして、創造神として己が創る生命への責任への覚悟として芽吹いたのだった。
(別に、俺が殺した弟の為に創造神を続けるってわけじゃない。自分が勝手にやったことの責任を取るってだけ、それに……)
(自分が創った世界を自由に冒険するっていう、めちゃくちゃ最高なことをまだしっかりし切ってないからな!)
どこまでも、楽観的な性質は抜けない空であった。
『うんうん、生命への責任に向き合うのも創造神の仕事だけど、やっぱり創造神自身が楽しむってのも重要な所だからね』
『応援してるよ、高橋空、いや創造神様』
妙に媚びへつらった態度に寒気がする空。
「お前にそれされると気持ち悪いからやめろ」
『ははは、まぁいいじゃないか』
『これで君に立ちはだかる創造神としての問題はすべて解決したわけだし』
『君がいきなり創造神辞めない限り、正式に私の後任の創造神になるってわけだからね』
「ああ、そうなるんだよな」
「じゃあ、あの人間もどきの家族にも会いに行って、飛ばしたやつ呼ばないとな」
『うん、まずはそれがいいね』
『君が創った生物が、どんなことを思って、どうやって生きているか、それを知るのは創造神としてとても役に立つことだろうしね』
ああ、と相槌を打って答える。
「お前も地球に下りて生活とかしてたのか?」
『うん、たまにね』
『結構色んな時代の色んな場所に下りてたから、神の奇跡だとか、超常現象だとかで騒がしくなった時もあったね』
「お前…」
自身の創造神の自由奔放な行動に呆れ、
気分で奇跡起こされちゃ地上もたまったもんじゃないな、と内心で溜息を吐く。
『まぁまぁ、これからは君がそのたまったもんじゃない神になるんだからさ』
『慣れだよ、慣れ』
『もっとも、私は最初から神だったから慣れとかなかったんだけどね』
自慢気味の発言に少しイラっとする空。
こんなやつに創られたのか俺…、と微妙な気分になっていた。
そうして、創造神を続けていく決心がついた、空の遠い背後。
元創造神から貰った種が成長した大木、話し相手ちゃんが育つ予定の木にとある変化が訪れていた。
その変化は、幹に表れていた。空が時間を進めていた100年の年月、ボケーっとしていた空に無視をされていた木は、その幹を教室一部屋が丸ごと入るほどに成長し、空がニューアースを探検していたその間に、人一人は簡単に入れるような大きな洞を形成していた。
その洞は、とても暗く、外からその穴の中を覗こうとしても、その暗さゆえに中にあるものの判別は不可能であった。
そして、その大きな洞の中にあるものとは…………
創造神としてのちょっとした知識や注意点を教えてもらっていた空。
「じゃあ、お前ともそろそろお別れか?」
『うん、そうだね』
『これ以上私が何か言ったら、君の想像にも影響してしまいそうだしね』
「お前の言うこと程度で俺の想像が変わるかよ」
元創造神の言ったことを笑って否定する空。
『それもそうだね』
『それじゃあ、君の創る世界、堪能させてもらうよ』
「ああ、くつろいでけ」
「これから創る世界は、きっとすごい世界になるぞ」
現創造神と元創造神の不思議な掛け合い。
何時しか、二人の間には変わった友情のような何かが出来ていた。
『ああ、それと君』
「? どうした」
『君の後ろの木、もう成長しきってないかい?』
そう言われて、バッと後ろを振り返る空。
そして、その眼に入って来た大木の光景に思わず、
「わぁすっげ」
と間の抜けたセリフをこぼしていたのだった。
『ふふふ、君は面白いね』
『それじゃ、また』
そう言って元創造神が消えていくのと、空がそちらを振り返るのはほぼ同じタイミングで。
そうして振り返った空の前には、小馬鹿にするように振られた手が消えていく所だった。
「あんのやろう最後まで……」
そう言って悔しがる空の口元には笑顔があり、憎み口を叩いたとしても、何だか嬉しそうな空なのであった。
そうしてまた、広い宇宙の異空間には、空と、成長した大木の二つだけになったのだった。
元創造神がニューアースに移動したそのすぐ後、空は大木に発生した洞を調べようとしていた。
「本当に大きいなぁ」
「時間加速させてた時は、動く雲とか緑の移り変わりが面白くてずっとそっち見てたからなぁ」
「ごめんなぁ、こんなに成長してたのに」
そう言って洞のすぐ前まで来た空。
「この穴の中ってどうなってんだマジ」
「光るように念じても……無理だな」
色々試行錯誤を繰り返すが、すべて洞の暗闇に吸い込まれていく。
「ひょっとして俺が入るしかないのかなぁ」
そう言いながら洞の中へ半身を乗り出し、中を確認する空。
だが、分かったのはただ暗いというそれだけ。
決心して空がその暗黒に一歩踏み出そうとしたその時、空は洞に足を引っ掛け、乗り出していた半身ごと前のめりに転倒する形で洞の中に入って行ったのだった。
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