閉幕
8
それは一瞬の出来事だった。
ずっと頭を抱えたまま座り込んでいた矢倉さんが急に立ち上がると、そのまま教祖に体当たりをした。ただ、彼女の両手にはしっかりとナイフが握られていて、そしてそれは見事に彼の脇腹あたりに突き刺さった。
全員が驚嘆するが、刺された当人だけは平然としていて、刺した彼女を冷たい眼差しで見つめていた。まるで痛みなど感じていないように見えたが、彼女がナイフを引き抜くと同時に、その場に倒れた。
「きゃああああああああああっ!」
あまりの出来事にさよちゃんが悲鳴をあげる。それと同時にホールの扉が開いて数名の警官が入ってくる。どうやら外で待機していたらしい。
「協会関係者全員確保しろっ。救急車も呼べっ!」
父がそう声をあげて命令すると警官たちがすぐさま大蔵さん、そして未だに血で濡れたナイフを両手で握ったまま青い顔で小刻みにふるえている矢倉さんを確保する。大蔵さんは「教祖っ!」と叫びながら抵抗していたが、数名の警官に押さえつけられていた。矢倉さんは警官たちなど目に入っていないのか、ナイフを奪われると何も言わず手錠をかけられた。
倒れた教祖に父や警官、そして私がかけよる。彼は脇腹を抑えたあと、その血まみれになった手のひらを自らの顔の上に持っていき、それからふふっと不気味に笑った。
「ふむ……これが、死か」
「死なせるか。あなたには償ってもらわないといけない」
「蓮見、分かっているだろ? 俺は直接犯罪に手を染めていない。どうせ法では俺をちゃんと裁けない……」
教祖の声が段々と小さくなっていく。それでも笑顔は消えない。あの嫌らしい、余裕たっぷりの笑みを残したまま、私の目を真っ直ぐに捉える。
「早く、行け。あれはお前の……大切な人間なんだろう」
もうお前に用はないといわんばかりに、教祖は目を閉じた。警官がなんとか止血措置をするが、溢れ出る大量の血液は止まらない。まるで蛇口でもひねったかのように、傷口から血が出ていく。
父が「早く行け」と促してくる。私は意を決して踵を返し、ホールから飛び出した。そしていままで出したことのないスピードで走っていく。
教祖は春川になにかしたようだ。プールといっていたが、なにをしたのか分からない。少なくとも彼女の身に何か危険が迫っていることは確かだ。
間に合えっ――。
協会から飛び出しても土砂降りの中、必死に走り抜けた。アスファルに溜まった水が跳ね返ってきて、足を重くするがそれも意に介さず、向かい風が髪を無茶苦茶にするがそれも気にせず、とにかく必死に走った。
息があがってきても、不思議と力がでた。顔にかかる大量の雨粒が冷たい。それでもスピードは一向に落とさなかった。
そして教祖の言っていた建物についた。そこに入って、入り口のすぐそばにあった薄暗い階段を駆け下りると地下にでて、そこには一つだけ部屋があった。緑の塗装がされた、重圧のある鉄の扉。
そのノブを回してみるが当たり前に開かない。焦りのせいでポケットから出した鍵が落ちてしまったところで、その扉の隙間からわずかに水が漏れているのに気がついた。
瞬時に教祖が何をしたのか理解し、戦慄した。
「……うそ」
思わずそう呟いたあと、急いで鍵を差し込んで解錠した。そして扉を引いてみるが、むこう側から引っ張られているような感覚がして開かない。
「クソッ!」
もっと力をいれて強く、本当に強く引いたとき、なにかが剥がれた感覚がしたと同時に扉が一気に開いた。思わず扉と壁の間に挟まれそうになるのをなんとか避けたが、室内から大量の水が流れでてきたせいでそれに足元をとられて、その場に転んでしまった。
立ちあがり、もう水がなくなった部屋の中をみてみると、部屋の真ん中に女性が横たわっていた。
「春川っ!」
そう叫びながら彼女に駆け寄っていく。手足を拘束された状態で彼女は俯けになっていた。それを抱き起こすと、水で膨らんだ服のせいでひどく重く感じた。
「春川っ! おい、春川っ!」
彼女は白い顔で青い唇なっていた。そして全身が冷たくて、まるで生気が感じられない。私はそんな彼女の体を大きく揺さぶりながら彼女の名前を呼びつづけた。
「春川っ!」
もう何度目かもわからない呼びかけをしたときだった。彼女が「こほっ」と、口から水を吐き出して、そのまま咳き込み始めた。そしてゆっくりと目を開いて、弱々しい声で確認する。
「……レイ?」
その声で私の緊張の糸がきれた。思わず彼女を強く抱きしめる。
「よかった……よかった……」
「レイ、痛いわよ……」
春川がそう訴えてくるが、それでも放してやらなかった。思わず涙が出てくる。そんな私の様子に春川は、少し困ったような顔をした。
「全く君というやつは……なにを考えているんだよ。私がどれだけ、どれだけ……」
「ごめんなさい。でもね……レイ」
春川は弱々しくもにこりと笑い、私の胸に頭を預けてきた。
「――信じてた」
「……私も、信じられてるだろうなと、信じていたよ」
二人で声を揃えて笑った後、さっきの鍵束をまた取り出す。あの鍵束には小さなものもあった。案の定、それで彼女の手足の手錠は解錠できた。ただ彼女は相当弱っているらしく、一人で立ち上がることができない。
彼女を肩に担いで、部屋から出て行く。
「レイ……ごめんね」
「もう聞いたよ」
「あの件。やっぱり、私が間違ってた」
彼女が今回の件じゃなくて、あの事件のことを謝っていることに気がついた。私を思わずため息を吐く。
「私が君を、許さないわけがないだろ」
怒っていないというと嘘になる。けど彼女のああいうどこまでも献身的な思いがなければ、彩愛ちゃんは誘拐されていた。そうなればきっと助かっていなかっただろう。彼女のやり方には色々と問題があると思う。
それでも、だ。
「私たちは、似たもの同士だそうだよ。知り合いの女の子が言っていた。曰く火と油、二人揃うと怖いものなしだってさ――私もそう思う。君は?」
春川は弱々しい足をゆっくりと進めながら、そうねと答えてくれた。
問題はあるだろう。それは彼女もだし、きっと私もだ。だからお互いに指摘しあえばいい。ぶつかり合えば良い。なんたって、友達なのだから。
いつかの教授の言葉を思い出す。人間は例え似たもの同士でも、少しの違いが許せないことがある。それを受け入れられなければ人間関係は崩れるが、受け入れられればより強固なものになるという、あの言葉。
『お前はどっちだろうな?』
教授がそう問いかけてきたことまで思い出し、思わず笑ってしまう。
答えは出たよ、教授――。
建物から出ると同時に「レイ姉っ、ハル姉っ!」という彩愛ちゃんの声が聞こえてきた。彼女とさよちゃんの二人が息を切らしながら、こちらの走ってきていた。どうやら追いついてきたみたいだ。彼女たちは私の肩に担がれた春川を見て驚いたが、無事だとわかると安心したのか、さよちゃんなんて泣きだした。
春川がさよちゃんをなだめている間、私と彩愛ちゃんは目を合わせた。まだ少し腫れた目をしている彼女は、それでも気丈に親指を突き立ててにっこりと笑ってみせた。私もそうして、お互いの健闘を称える。
「おや?」
思わず声をあげて空を見上げると、私につられた三人もそうした。雨があがっていて、さっきまでの土砂降りが嘘のようだ。
そして暗雲の隙間から、明るい陽が差し込んでいた。
エピローグ
案内されたのは取調室だった。警察署の暗い雰囲気がただよう廊下を歩いた先、鉄の扉見えた。
「いいのか?」
ここまで案内してくれた父が確認のためにそう尋ねてくる。私は余裕をもってふっと笑ってみせた。
「いいよ。ここまでありがとう」
父は私の返事を聞くと覚悟したように、小さく一度だけ頷いた。そしてその扉のノブを握り、ゆっくりと開けた。テレビドラマなんかでよくみる、テーブルとそれを挟むように置かれた椅子。そして記録係のために部屋の隅に一人がけのテーブルがあり、小さな窓から慰め程度の日差しが、漂う闇を切り裂けもしないのに差し込んでいる。
その日差しと小さな照明だけが明かりになってる室内には、一人の男がいた。一週間ぶりに見るが、変わっていなかった。私の顔を見ると、にやりといやらしく笑った。
「久しぶりだな蓮見。話は聞いているぞ。どうやら友達は救えたようだな、祝福してやる」
取調室の椅子に座った教祖は、拍手をしたがその音は虚しく小さな室内に響くだけだった。
私はそれに返事をせず彼と向き合うように椅子に座った。父が最後まで不安そうな顔をしていたけど、私はそれを払拭するために笑顔で手を降った。父はそれでも不安そうだったが、少し唇を緩めて取調室から出て行った。
これでここには私と彼の二人だけ。
「できればもう二度と、あなたとお会いしたくはなかったんだけどね」
「冷たいな、いや人間らしいと言うべきか。しかし俺としてはお前の気持ちなど汲んでやる義理も必要もないわけだ。どうせこれから数年、退屈に過ごさねばならん。その前にできるだけ楽しい思い出を作っておきたいんだよ。どうせ暇なんだろ? 付き合え」
教祖は両手に手錠をかけられたままだというのに相変わらず余裕で、そして上から目線だった。
彼は結局、一命を取り留めた。あの後すぐに病院に搬送され、医師たちにより適切な処置を施してもらった彼は、三日間昏睡していたが、まるで朝起きるときみたいに、ごく普通に目覚めたという。そして自分が生きていることを確認すると、冷めた声でこう呟いたという。
『なんだ、つまらん』
もちろん警察は彼から聞きたいことがあったので、殺人教唆のお互いで取り調べを開始した。そこから事件全体のことを聞き出そうとしたわけだ。しかし、教祖は口を割らなかった。それは「言いたくない、話したくない」という保身からくる黙秘ではなく「面倒くさいから嫌だ」という、子供っぽい感情が原因だった。
最悪なことに他の幹部たちも逮捕していたが、彼らはまともな供述をしていなかった。全員バラバラで、しかもチグハグで支離滅裂なことばかり言って、警察は頭を抱えていた。
しかし、そんな時に教祖が言ったという。
『蓮見レイに面会させろ。そうすれば、全て話してやる』
もちろん警察はそんな要件のめないと拒んだが、彼は「なら何も話すことはない」と黙秘する体勢にもどった。警察としては事件解決に一役かったとはいえ一般人の、しかも学生で女性の私と彼を合わせるわけにはいかなかった。ましてや彼の出した条件は「誰もいないところで」というものが含めれていたのだから。
しかし彼が話してくれないと捜査が進まなくなった警察は特例的に私と面会することを許可した。そして今日、私がここに来たわけだ。室内には彼と私だけ。彼は手錠で拘束されていて、私のポケットには防犯ブザーがある。いざというときにはワンタッチでブザーが鳴り、外に控えている父たちが駆け込んでくる。
「で、わざわざ警察と交渉までして私と話したいことがあったのかい」
「お前の友人の事件。あれは協会の起こしたものじゃない。俺はそんなこと指示していないからな」
春川の事件というのは、彼女の自作自演をしたあの事件のことだろう。
「しかしまるで協会のせいみたいにされた。最初は変な偶然が重なっただけだと思ったが、どうやらそうでもないと確信したよ」
「なぜだい」
「お前だ、蓮見。お前は他人の嘘を見抜く才能はあるが、どうやら嘘をつく才能はないみたいだ。言っておいてやろう、それは大きなハンディだ。嘘を見抜く能力は確かに騙されないという生き方ができるが、同時に傷つくことを意味している。なにせ信じてたやつさえ平気で嘘をつき騙してくるからな。お前はそれを身にしみてわかっるだろ?」
唇を釣り上げて、嫌らしい笑みを向けてくる。心の奥底が見透かされたような気持ちなって、落ち着かない。
「逆に嘘をつく才能は天の恵みだ。それさえあれば、うまく世を渡れる。罪悪感に苛まれても、最後には自分にも嘘をつけば問題ないからな――。蓮見、お前は事件を見事に解決した。しかし、まるで当然のように友人の事件には触れなかった。おかしくはないか。お前があの教会に介入したのは、その事件があったからなのに」
冷や汗がでてくる。それは私の頬を撫でるようにゆっくりとたれていく。
「そして聞くところに今も捜査していない。お前、事件を解決してるだんだろ。そしてそれを警察にも誰にも話していない」
膝の上にのせていた拳をぎゅうっと力強く握る。鼓動が少し激しくなってきた。
「なんでそんなことするか、興味もないが……暇だったから考えた。思いの外、簡単に答えは出たな。なあ蓮見よ、あの事件は」
「黙れ。あれは私と、私と……。とにかく、あれは私が終わらせた事件だ。あなたは関係ない」
「関係ないとは言えんがな。こっちはいわば被害者なんだから。いや、別に痛いとも苦しいとも思っていないが、立場的にそうだろ?」
そう、あの事件は春川が仕掛けた自作自演。協会からすれば冤罪をかけられたのだから、被害者ということになる。
「しかし、今のお前のリアクションはわかりやすいものだったな。確信が持てた。どうやら、お前の友人は面白いようだな。もとより、俺の計画が狂ったのはその友人が原因だったな、最初から最後まで。そしてお前は、その友人を庇っている。責める気はない。俺は気にしないし、どうせ誰も気づかない」
あの事件については私と春川だけの秘密にして、墓場まで持っていくつもりだった。それが正しいかどうか考えるのはもうやめている。確かに春川の行動を許せるかというと未だにうなずけないが、彼女がしたかったことを考えると糾弾はできない。あのどこまで愚直なほど真っ直ぐさが、最終的にさよちゃんたちを救ったわけだし。
私はふうっと息をはいた。ごまかすことも考えたが、無駄だろう。それが通用する人じゃない。
「……告白する気かい? せめてもの復讐に」
私がそう尋ねると教祖は笑顔をやめた。急に真顔になり、目を細め、品定めするように私を見る。
「バカを言うな。復讐? つまらんな。面白くもなさそうだ」
「じゃあなにがしたい? 私を呼びつけた目的はなんだ?」
教祖は真顔からまた笑顔になった。その質問を待ってましたと言わんばかりだ。
「あの事件はお望み通り、協会が仕向けたものということにする。この後、俺はお前の父親を含めたたくさんの人間に事件について話さねばならない。その時に、あの事件は俺の指示したもので、協会の犯行だったと供述しよう」
一瞬、目の前の男が何を言っているのかわからなかった。しかし、即座に理解する。私は目をおあちくりとさせ、その信じられない言葉にうまく返事ができなかった。
「嘘をつくのは得意だ。うまくやってやるから心配するな。お前の友達のところに警察が行くことになるだろう。どうやら聡明なやつのようだから心配はしてないが、警察に真実が悟られないように気をつけろとだけ伝えておけ」
「ちょ、ちょっとまってくれ。あなたは何を言っている?」
「だから、お前たちの罪をかぶってやると提案しているんだ。俺が裁判で裁かれてしまえば、もうあの事件は法的な意味でも集結する。真実が暴かれることはなくなる。どうだ?」
「どうしてそんな」
私が質問する前に教祖がクククッと小さく笑い始め、最後には椅子に座ったまま背中を反らせて、大きな声が笑い出した。その不気味な笑いがせまい取調室の中で何度も反響して、とても不快だった。
「どうして、か。いい質問だな。なあ蓮見……正義に背信した気持ちはどうだ? 自分が犯罪者と糾弾した人間にかばわれる気持ちはどうだ? 俺と一生嘘を共有する気持ちはどうだ?」
心底楽しそうな教祖の質問に答えられない。今ここで私が彼の提案を拒んでも、真実に気づいている彼ならば警察に証言できる。そうなると春川の事件は暴かれる。だから私に拒否権はない。私は彼の言う通り、正義に背信し、彼に庇われ、彼と秘密を共有するしかない。
「……これがあなたなりの、復讐かい?」
「復讐など興味はない、二度言わすな。これはレクリエーションさ。お前のその悔しそうな顔、最高だな」
私達二人が合う場所が、この取調室だったことは教祖の指示だろうか。それとも偶然だろうか。どちらしにしてもたちが悪い。私は今、一週間前と立場を逆転されている。今度は私が犯人。
「蓮見、お前は非常に面白い。今後も愉快な人生を送るだろうな。お前らしく、正しく綺麗な選択をしていくといい。そして常に、今日のことを忘れるな。お前は俺と同じだということを、忘れるな」
教祖が顔を近づけてきて、その真っ暗な瞳で私をとらえた。
「言ったろう? 誰かを救えれば悪も正義になり得る。しかし覚えておけよ――悪は、悪だ」
そう何がどういう理屈がはたらこうが、悪は悪。それは私が彼に言った通り。
教祖は椅子に座り直すと、ふむと呟いた。
「俺が言いたいことは終わったな。警察と交渉して正解だった。楽しかったぞ。お前はどうだ、なにか言っておきたいことがあるか?」
ニヤニヤとした彼の表情を見つめる。本当に私にこの条件をのませるためだけに呼んだようだ。拒否権がない以上、私の負けだ。それをわかっていた。彼は罪を重くする、しかしそれが私にとっての「罪」になる。彼はきっと、そうなることが私にとって一番いやだということわかっていたんだろう。
「一言、最後に一言だけ言わせてくれ」
怒りと情けなさのあまり震えた声になってしまったが、私はなんとか言葉を絞り出した。
教祖は何も言わない。私が言葉を続けるのを待っていた。
「――地獄に堕ちろ」
「ならば、そこで待っていてやろう」
私達二人はそれ以上喋らなかったが、しばらく睨み合った。ただ睨んでいたのは私だけだ。彼はもう真顔に戻って、ただ私を見つめていた。見つめていたというより、そこにあったから見ていたという感じだった。
私は立ち上がって当然別れの挨拶などせず、取調室から出た。
外には父が待機していて、出てきた私に「どうだった」と尋ねてきた。
「なにもない。少し、お話ししただけさ。あとは素直になるだろうね」
「そうか、ご苦労だったな。……なにをはなしたんだ?」
「少し、善悪についてね」
私の答えに父は不服そうな顔をしたが、追及はしなかった。ここで父に素直に白状するのが正しいとわかっていたが、もう引き返すことはできない。
「父上、私はこの後、約束があるからもう行くよ」
逃げるようにそう告げて、背中を向けた。父は「気を付けてな」と声をかけてくれたが、私はそれに返答もせずに立ち去った。
署からでると、そこには思わぬ人たちがいた。春川とさよちゃん、そして彩愛ちゃんだ。三人は並んでいたが、私を見つけた彩愛ちゃんがこちらにかけよってきた。
「レイ姉っ」
「あ、彩愛ちゃん? どうしてここに?」
「ハル姉がね、ここにレイ姉がいるって。レイ姉の用事が終わったら、一緒に出掛けようって」
思わぬ回答に春川に目をやると、彼女はあっさりと答えた。
「お父様から連絡があってね。事情は聴いたの。きっと、嫌な思いをしただろうから、気晴らしが必要と思ったら二人を呼んだの」
「せ、先輩、大丈夫ですか……顔色、悪いですぉ」
さよちゃんがなぜか申し訳ななそうな声を出す聞いたら、思わず吹きだしてしまった。
それにつられて、春川と彩愛ちゃんも笑い、さよちゃんだけ困惑していた。
「……そーだね。ちょっと、遊ぼうか」
私は笑って彩愛ちゃんの手を握り、足を進めた。
今回の事件。沢山の嫌な思いをし、私は罪を背負った。それでも――。この手のぬくもりが、この出会いが、何よりに救済だ。彼女だけじゃない。目の前に二人もそうだ。
だから――感謝してるよ、依頼主さん。
私は少しでも彼女の体温を感じれるように、手をぎゅっと握った。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
今回の作品は、登場人物のほぼすべてが犯人という構造になっています。
それがやりたかったんです。それだけです。
前回の時は「秘密組織ならではのなぞを」と考え、今回は「宗教団体ならではのなぞ」に挑んだつもりです。
これでここ2か月以上ずっと続けていた「蓮見レイ」を主人公とする物語は、いったんストップとします。お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。
宣伝を二つ。
ツイッターやってます。よかったらぜひ。最近好きな作家さんにりぷをもらい、むっちゃテンションあがりました。
http://mypage.syosetu.com/?jumplink=http%3A%2F%2Ftwitter.com%2FPIPE_DREAM_YE
また、この作品と同時に新作連載はじめます。ずっとミステリを書いてきましたが、この作品はミステリではありません。
世界で一番、バカで、哀れで、愚かで、未熟で、愚鈍で、あさましくて、救いようがなくて、むしろ救われてはいけない。そんな少女のお話しです。興味がある方はお付き合いください。
タイトルは「凍てつく天使」です。
http://ncode.syosetu.com/n7627db/




