そうだ王都に行こう
「指輪を受け取ってくれないか」
突然の俺の申し出に真っ赤になるミレーユ。
「結婚指輪ってちょっと早くない?嬉しいけど」
「実はこれ俺の護身用でもあるんだ。最近解明した式でちょっと特殊な魔法陣組めたんでね」
はい、グーパンチ頂きました。乙女心がどうこう言ってますが、ちゃんと結婚指輪でもあるから安心してくれ。魔法陣の説明を聞くと途端に上機嫌になる。
「まさに、これこそ私たちの結婚指輪にふさわしいね」
まあ、俺もそう思うけどね。
王都まではわりとのんびり進軍している、他領の領主達がやたらと協力を申し出てくるので、糧食の提供だけお願いしておいた。本当は参戦して美味しい所をとりたいとか銃の技術をパクりたいとか考えてるのは分かるけど、させてあげない。
領兵の半分はリスホルン領に残しておいて、残りの五千人だけで行軍してるから心配されてるだけかもしれない。
「いくらなんでも王都に行くのに五千人って少なすぎじゃない?」
操縦手席からミレーユが話しかけてくる。
「そうは言うけど、ある程度残しておかないと脱走兵が野盗になってるからねぇ」
砲手席から俺が答える。
お手製戦車モドキまで作ってしまいました。ただし、動力の魔法陣を動かせるのがミレーユだけなんで一台だけです。四人乗りで車長がイザベル、操縦手がミレーユ(変身済み)、砲手が俺で装填手がモブさん。ただし、魔力の消耗具合で砲手と装填手は交代する事になっている。
外観は前世の小倉に居た頃見た国産戦車で、魔法陣で直接転輪を動かしているためエンジンと燃料のスペースが必要なく、その分装甲を厚くしている。ただし、冶金技術が落ちるので防御力はトントンくらいだと思う。まあ、マスケットの弾と直轄兵が使ってる野砲の12ポンド砲が防げれば問題ないから。
王都まで近づいてきたら、まあ、居るだろうとは思ったが歩兵と銃士隊が待ち構えていた。歩兵八千の銃士隊が二千って所だろうか。それと野砲が十門に…精鋭の魔道騎兵まで用意してる。本気出してきたなぁ、遅いけど。
そもそも、何故この世界が銃と魔法の世界になったのかというと、この世界の魔法は射程距離が短い事が理由の一つで、あとの一つは魔法使いの数が少ない事だ。
もちろん、簡単な魔法ならだれでも使える。この小銃の発射に使うような小さい爆発ならだれでも休まずに30発程度は撃てる。ただ、攻撃魔法として十分な射程距離を持ってるものとなると大変だ。魔力は人体の中で生成されるが、空気中にも魔力が散らばっていて、魔法を打ち出すと魔力同士が衝突して消滅してしまう。このせいでミレーユみたいな例外中の例外を除いて、大抵の魔法使いは五十メートル先を攻撃するのが精いっぱいだ。
そして、一般兵が魔法使いに対抗するために弓や銃が開発されていった。特に銃は威力が高いので魔力で障壁を展開しても大抵打ち負ける。千人に一人の魔法使いより百人の戦列歩兵の方が強いとなれば、戦列歩兵が中心になるのも仕方がない。
もちろん、魔法使いが戦争で役に立たないかといえばそんなわけがないのだが、主に市街戦や屋内戦で有効とされて、戦場での主役ではなくなってしまっている。
ただし、その例外が魔道騎兵だ。竜騎兵の魔法使い版だが、銃一丁と魔法使い一人のどちらが戦力になるかといえば、やっぱり魔法使なので竜騎兵と共同で運用するとその打撃力が段違いになる。
話がそれたが、今回向うのやりたい事は簡単にわかる。こちらが接近するまで野砲で数を減らして、接近したら戦列歩兵が撃ちあう。こちらの戦列が乱れたらそこに銃士隊と魔道騎兵が突っ込んで攪乱する、最後に銃剣突撃だろう。
定番中の定番で、これやられるとこちらの数が相当多くないと勝てない。普通ならね。
こちらは正面から戦車、戦車の後ろに隠れるように50人程ついてきてもらう。左右は竜騎兵を250人づつ回り込むように突撃して野砲を潰しに行ってもらう。
射程距離が長く、戦列歩兵には絶大な威力を誇る野砲だが、照準を合わせるのに時間がかかるという欠点がある。つまり、左右の早い動きには対応できない。そこで騎兵に潰してもらう、もちろん持ってる小銃はアリサカライフル(仮称)の騎銃型で、命中率こそ多少落ちるものの取り扱いがしやすく、勿論マスケットと比べて射程は圧倒的だ。
このまま砲兵がやられるままにできないので後方から銃士隊と魔道騎兵が出てくる、実はこちらはそれが狙いだ。
すかさず歩兵を前進させる。今の技術の野砲では直射しかできない、つまり斜め上に撃てないから騎兵が前に出てきたら彼らは野砲を発射できない。
騎兵が倒れるころには砲兵もこちらのライフルの射程距離(何と千二百メートル)に入っているため余裕で打ち倒されている。最後に、戦列歩兵に一方的に被害が出るにあたって敵将(洗脳済みの攻略対象だった元学園銃士隊)が殺されておしまい。
ここまで偉そうに語ってみたが、実は全部モブさんが考えてくれた作戦だ。昔、モブさんが語ってたフランス外人部隊云々の話って本当だったのか?
降伏した兵士から聞いた話では、陛下はご崩御なされたと発表があったが、実際には幽閉されていて人質になってるらしい。どうりで洗脳されてないはずの人間まで向かってくる訳だ。
城門まで来たら、何故か勝手に開いてくれた。何故だろう(棒
「おう、本当に帰ってくるとは思わなかったよ」
マフィアのボスと陛下が迎えに来てくれる…あれ?
なんでも、マチアスとヒロインがウチを攻めに行ってる間に救出したらしい。何人のチ○コちょん切ったか判んねぇよと笑ってらっしゃいますが、そういう話は聞いてるだけで股間が縮こまるのでやめて下さいお願いします。
陛下が城下に現れたことで、王都の民衆はマチアスとマリーに対して反抗し、彼らは城内に閉じこもっている。30人位しか居ないらしいが、陛下を救出した時に使った抜け道はもう塞がれているし、城門は閉じられていて中に入れないらしい。
やっぱり最後は俺達で決めるしかないか。
戦車は「∩( ・ω・)∩ ばんじゃーい」のアレがモデルです。弱い弱いと言われてますが、開発当時は平均的な能力でしたし、ナポレオン戦争より前の技術というこの世界の設定では無双出来るでしょう。
小銃は、冶金技術の違いにより射程距離が短めになってます。なお、この場合の射程距離は一斉射撃で有効な打撃を与えられる距離の事で、現在の銃の射程距離とは概念が違います。




