【閑話】マフィアのボスの独白
俺の前世はチンピラだった。それも町で粋がってるだけで稼ぎは上に吸い上げられる最底辺のチンピラだ。裏社会でも最底辺ってのは悲惨なものだ。上の方がやりたがらない仕事しか回ってこなく、それのアガリも吸い上げられる。他人に利用されるだけの人生で、立ち回りの上手い奴を妬んでるだけだった。
俺の最後は、まあ一昔前の極道映画を見て、一番情けない死に方してる奴を見たらそんな感じだと思ってもらっていい。だから、俺は死ぬ時願ったんだ「次こそは他人を利用してうまい汁吸う人生をおくってやる」と。
結果として願いは叶ったのだろう。他人を利用するために素晴らしい能力を神だか何だか知らないが授けてくれた。相手の考えが大雑把ではあるが「視える」。俺の左目は魔法陣になっていて、相手の考えを映し出すらしい。しかも目を瞑ろうが眼帯しようがお構いなしだ。
住んでる場所はスラム街だったが、そこでのし上がるのはとても簡単だった。金持ってる強盗や詐欺師なんてのは簡単に「見つけられる」ので、油断してるところを後ろから棒でぶん殴って金を奪った。盗られた奴が近所の場合は金を返して恩を売り、遠くの場合は俺の金にした。
強姦魔や殺人鬼を見つけたら、わざとぎりぎりまで待って、襲おうとしてるところで殺してやった。こうすると恩が売れるんで、隠れ家や女にも不自由しなくなった。
別にハーレムとかどうでもいいんで、嫁にした女以外は(美人が誘って来たらこっそり味見はしたが)最近出来た仲間に紹介してやった。
仲間が増えて、犯罪者から金奪うだけじゃ食っていけないから賭場を開くことにした。犯罪者から助けた金持ち何人かがスポンサーになってくれた。
上流階級の客も来てもらわないと儲からないから、俺の街から犯罪者を排除する。イカサマなんてしなくても、大抵のギャンブルは合計すると胴元が勝つようにできてるからイカサマ禁止にしたら、良心的な賭場として評判が上がった。街の連中も元気で働いて稼いでくれないとアガリが貰えないからクスリも排除した。
いつの間にやらスラム街が歓楽街として生まれ変わっていて、新興マフィアのボスとして君臨することになった。
他人の考えが「視える」と、他人を利用して甘い汁吸おうとか思えなくなってくる。悪意のある奴を破滅させるのはどうでもいいが、頑張って生きてる奴らを絶望させるのは物凄い心苦しい。逆にそういう奴らが少しでも幸せになって、その幸福感が「視える」とちょっとこっちも幸せになれる。
多分、俺のこの魔法陣は、前世の俺の願いが正しくないものだと教えるために授けてくれたものだろう。生まれは底辺だし犯罪者集団だし、賭博も売春もこの街じゃ違法行為だが、なるべく一生懸命生きてる人間が不幸にならないようにはしていきたいと思ってる。そう思わせてくれたのがこの力だ、全く有難いものを授けてくれたものだ。
最近、隣のシマに変化が起こった、突然変な女の手下になったのだ。奴らはクスリを街に流して金儲けしてやがる。こっちのシマに手を出し始めたので、抗争が始まったんだが、不思議な事に突然裏切り者が出てくる。有難い事に俺の左目からは裏切りを隠す事が出来ないんで、あっという間に捕まえる事が出来るんだが、先日ついに幹部連中からも裏切りが出た。
ふんじばって裸に剥いてやったら(隠し武器とか見つけるためで変な趣味は無い)、モノに変な魔法陣がある。俺の街に女を買いに来た、痘痕面だが有名な医者に無理やり来てもらったら、どうやら人間を操り人形化する魔法陣らしい、あの女中々ふざけた事してくれる。モノを切ってやったら正気に戻った、愚痴は言ってくるが仕方ないだろう、操り人形のままでいるよりはマシだと思ってくれ。
ある日、アルベルトとかいう侯爵様の息子が接触してきた。銃と魔法工学の天才だとこの街でも評判の若僧だ。
どうもあの女は男爵家に入り込んで王太子を魔力で落としたらしい。本人と会ったが、悪いものは視えなかったので共闘することにした。情報や対策を与え合って、こちらは戦力を、あちらは武器を提供しあっている。
昨日落ち延びさせたのだが、もう一つ頼まれごとをされた。その程度の仕込みは簡単だが、さて実行する機会があるのかどうか。
この人の設定が一番苦労しました(ぼそ
次回、いよいよ戦争です…流石に一行で終わらせることまではしないつもりです、多分。




