ep17. 弱小冒険者、ゴブリンを討伐しました。
「大丈夫でしたかレイさん?!」
ゴブリンの攻撃に身を貫かれて死んでしまった俺は、どうやら戦う前まで戻ってきたようだ。
「あぁ、大丈夫だ。問題ない。」
たまたま放った矢が顔面に刺さり、スタンしていたので調子に乗って大量にスキルを使用していたのだが、そのせいで不意の攻撃に気がつけなかった。
——この世界で俺は何を喰らってもワンパンなのだ。油断してはいけない。
「よし、案外勝てない相手じゃなさそうだし、ちょっくらシバいて報酬貰うか!」
クロスボウを構えてゴブリンの頭を狙う。
「そんなに自信満々ですが、本当に大丈夫なんですか…?」
む…。さてはティナ、俺の事を信用していないな?先程のあの一方的な攻撃を見ていなかったのだろうか。油断さえしなければ勝てると思うんだよな。
…油断さえしなければ。
「“風綴じ”ッ!!」
狙いを定めてスキルを放つ。顔面ヒット+拘束スキルで動きを縛れれば、さっきみたいな連続攻撃が…。
「…当たってないですけど。」
あれ…。おかしいな。クールタイムがあるのでスキルを使用せずもう一度狙って…。
「気づかれてますよ?」
なに?!バレてしまったか。だがここでスタンさせてしまえば距離を置く余裕が…。
「“ゲイルショット”ッ!!」
…またミスった。無念にも矢は頰を軽く切り裂く程度に終わった。
「またさっきの攻撃が来ますよレイさん!?」
ゴブリンはモーニングスターを片手にこちらへ攻撃の構えを取っている。
…だが残念だったな。お前の攻撃など避けるのは容易い。
「“追い風”ッ!!」
移動速度を上昇させるスキルを使用する。ひとまず距離を取って落ち着こう。
「ゴブ?!」
ゴブリンは急な俺の加速に驚いているようだ。…さて、この速さについて来れるかな?
「“風綴じ”ッ!“ゲイルショット”ッ!!」
モーニングスターのリーチ外から矢を放つ。…今回は胴体を狙ったからな。流石に外したりはしない。
「いいですよ〜レイさん。このまま油断せずいきましょ〜。」
俺はいつでも油断なんてせず攻撃に備えているのに、心外だ。…さて、安全に攻められる内に仕掛けるか。
「“ゼファーショット”ッ!“ゲイルショット”ッ!!“ゼファーショット”ッ!!」
攻撃スキルを連発する。風を纏った矢はゴブリンの胴体や腕を切り裂く。
「ゴブゥ!!」
矢に切り裂かれた傷は出血している。…だがその傷は浅く、致命傷には到底至らない。
どうにか急所に当てたり大量出血で倒せないか?
「ゴブゥ!!」
ゴブリンは武器を斧に持ち替えこちらに接近してくる。
「チッ…、簡単には勝てないってか?!」
攻撃を避けるのはそこまで難しくない。…だが長期戦に持ち込まれるとなると話は変わってくる。
転生する前もそこまで運動するタイプじゃなかったしな…。持久力にはあまり自信がない。
「…徐々に雲行きが怪しくなってきてませんか?」
う〜む…。どうにかまた状況をひっくり返さなければ…。
「ゴブゥ!!」
ゴブリンは斧を振りかざし近接戦を仕掛けてくる。見た目通りタフな奴だ。先程のダメージなど気にしていないようだ。
「“追い風”ッ!!」
再びスキルを使用して逃げる。どうやら遠距離からの攻撃手段を奴は持っていないようだ。
「“ゼファーショット”ッ!!」
牽制するためにスキルを放つ。…一方的に攻撃できたとしても、おそらくこのままでは倒せないだろう。ふとゴブリンに目をやる。
傷は徐々に修復し出血が収まっている。
「粘り勝ちも諦めた方がいいか…。」
長期戦に持ち込めばなんとかなるかと思ったが、それも無理そうだ。…それに近距離はもし攻撃を喰らえばあの物騒な武器でお陀仏だ。
「あのゴブリン、あんなに大きな武器を一体いくつ持っているんですかね〜?」
それもそうだよな…。魔物ってどこで武器を入手してるんだろうか。倒した冒険者とかから奪っているのか?
ん…?待てよ…?冒険者から…奪う…?
「そうか…!それがあったか!」
閃いた。指をパチンと弾く。
これなら貧弱な俺でも倒せるかもしれない。
「何か思いついたんですかレイさん?!」
食い気味にティナが聞いてくる。
「あぁ。」
おそらくスライム戦の時ほどは危険じゃないはずだ。どうせこのままだと長期戦になるだけだ。やってみるしかない。
「“風綴じ”ッ!!」
まずは拘束スキルでゴブリンの動きを封じる。そして…ここでこのスキルの出番だ。
「“追い風”ッ!!」
高速でゴブリンに接近する。そして、俺が考えた作戦は…こうだ!!
「おりゃぁ!!」
速度を維持したままゴブリンから武器を勢いよくひったくる。…そう、俺の矢でダメージを与えられないなら、敵から奪えば良い。
「ゴブ?!」
一瞬の出来事に驚いているようだが、無理もない。自分よりも非力そうな奴に力で武器を奪われるなんて思わないだろうしな。お互いが何のバフもないなら力の差で俺が圧倒的に不利だ。だが相手が身動きを取れない状態で、目にも止まらぬ速さで無理やり取ろうとすれば簡単に奪えてしまう。
…にしてもこの斧重すぎじゃないか?2m近くもある斧は金属でできているかのようにずっしりとしている。
「どりゃあぁあぁああぁあぁぁ!!!!」
そしてそのままゴブリンの方へ向き直り、両手で斧を全力でぶん投げる。
…いくら矢を外した俺でもこんなにでかい斧は外さないぞ。
「ゴブゴブゥ!!」
すると斧はクルクルと回転し、ゴブリンの身体を深く切り裂いた。ゴブリンの体から血飛沫が上がり、地面にぶっ倒れた。
「やっ…やりましたねレイさん!…かなりの荒技でびっくりしましたけど」
俺が非力なら、力技でどうにかするしかない。このゴブリンとの戦いとスライム戦で学んだ。
…それにしても全身が痛い。あの斧重すぎんだよ…。
「よし、それじゃあギルドに報告しに行くか!」
「はい!」
それにしても、スライム戦ほどは時間がかからなかったとはいえ今回も疲れたな…。報酬金が楽しみだ。確かかなりの額が貰えるはず。それならしばらくは宿に引きこもっててもいいんじゃないか?
そんなことを考えながら、俺は帰路に着いた。




