ep16. 調子に乗ってたら、結局やられちゃいました。
「よし!それじゃあティナ、クエストの時間だ!行くぞ!!」
ギルドで初めてクエストを受注した俺は、早速その目的地へと向かった。
少し気が早いかもしれないが、クエストをクリアするとただ討伐するよりもさらに報酬金が受け取れるらしい。楽しみだ。
「…そういえば新スキルの試し打ちがまだだったな。」
先日のスライム討伐の後にレベルアップし、スキルが解放された。現在使用している物の上位互換のようだったが、どれだけ効果が変わるのだろうか。
「レイさん、あそこじゃないですか〜?」
そんな事を考えているとティナが奥を指差す。どうやら目的地に到着したみたいだ。
今回のクエストの討伐対象であるゴブリンは、一人でじっと佇んでいた。
「結構でかいな…。」
ゴブリンは2m近くもある巨体で、その大きさには少し怖気付く。あの時はすぐに背後からの不意打ちで気づけなかったが、こんなにでかかったのか…。
そして大きな棍棒のような物を担いでおり、その他にもモーニングスターや物騒な武器を何個か所持しているようだ。…以前は棍棒でぶん殴られたんだっけか。
「さぁレイさん!クエストの時間ですよ〜!」
ティナが上機嫌で俺に話しかける。思ったよりも大きく、見た目に気圧されそうになったが、そうも言ってられないな。
「そうだな…!いくぞ!!」
クロスボウを構え、ゴブリンへ向ける。挨拶替わりにこれをお見舞いしてやろう。
「“風縫い”ッ!!」
相手を拘束する効果を持つ矢を放つ。まずはこれで行動を封じて、そこから様子を伺って…。
「ゴブ?」
放たれた矢が命中する…が、ゴブリンは痛くも痒くもないかのような様子でこちらを振り向く。
「…レイさん、これスキルの効果ありますか?」
確かに、スライムにこのスキルを使用した時はしばらく動けなかったはず。ということは…。
「スキルが、効いていない…?」
「ゴブゴブゥ!!」
敵意を露わにしてゴブリンがこちらに向かってくる。…が、足はそこまで早くないようだ。小走りで逃げられる。
「“風綴じ”ッ!!」
今度はさっきよりも拘束の効果時間が長いスキルを放つ。これでどうだ?
「ゴブ?!」
どうやら効果があったみたいで硬直している。これなら安全に攻撃できそうだ。
「“ゼファーショット”ッ!“ゲイルショット”ッ!!」
スキルを続けざまに放つ。ゼファーショットは…擦り傷程度しか与えられていないようだ。だが、ゲイルショットは効果があるようだ。肩から少し出血している。
「ゴブゥ!」
拘束する効果も切れたのか、怒った様子でゴブリンがこちらに襲いかかってくる。
「あらよっと!」
棍棒を振りかぶってくるので飛んで避ける。
…躱すこと自体は簡単だが、当たったらこれは即死だな。油断できない。
相手の攻撃でワンパンということは、最も優先すべきことは身の安全だ。ひとまずスキルで牽制して…
「“ゲイルショット”ッ!!」
お返しにスキルを放つ。すると矢はゴブリンの顔に命中した。
いくらゴブリンと言えどもこれは苦しいんじゃないのか?
「おぉすごいですレイさん!さっきよりも効いてそうです!」
やはり顔への命中は流石にこたえたのかゴブリンは顔を押さえて呻く。
「ゴブゥ…」
…狙って顔を打った訳じゃないんだけどな。こんなに効くとはラッキーだ。
「“ゲイルショット”ッ…!“ゼファーショット”ッ!“ゲイル…ショット”ッ!!」
ここぞとばかりにそのまま胴体へ連続攻撃をする。本来は一定時間のクールタイムがあるところだが、他のスキルを使用するとその時間がなくなる。そのお陰でどんどん打ち込める。
「いいですよ〜レイさん!このままじゃんじゃんやっちゃいましょ〜!!」
調子に乗ってさらにスキルを放つ。
…最初はスライム戦並みの長期戦を覚悟したが、案外楽勝なんじゃないか?
「ほらほらどうしたゴブリン!お前の実力はこんなも」
…そう言いかけたところで言葉が出なくなる。
「ガハッ?!」
——何が起こった?一体どういうことだ?!
先ほどまで苦しんでいたはずのゴブリンに目をやると、モーニングスターを片手に腕を突き出していた。
本来その先にある鉄球は…
「レイさん!!」
俺の体を貫き、遠くへ飛んでいた。




