表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
硝子玉の宇宙、箱庭の娘たち【旧版】  作者: 硝子玉の宇宙
箱庭の娘たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
134/135

第134話-人間、あたしに命令するな

挿絵(By みてみん)

死者の名前だけが、船内から抜け落ちていた。


星間通商路を航行していた大型貨客船は、跳躍直前に緊急停止した。


外殻は無傷。


防護術式にも異常はない。


星間跳躍炉にも、機械的な故障は確認されなかった。


それでも、跳躍制御室にいた航法士が一人、死亡していた。


外傷はない。


毒物反応もない。


脳、心臓、肺、血管。


どの臓器にも、直接の死因となる損傷は見つからなかった。


崩れていたのは、その航法士の魔力循環だった。


人間の身体を流れる魔力は、単なるエネルギーではない。


肉体。


精神。


記憶。


生命活動。


それらを一つの個体として結びつける情報を含んでいる。


死亡した航法士からは、その結びつきだけが失われていた。


身体は残っている。


記憶を蓄えた脳もある。


それなのに、肉体の各部は、もはやそれらを一人の人間として維持できなかった。


船内記録にも異常が起きていた。


登録名。


個体認証。


魔力署名。


乗船資格。


医療情報。


死亡した航法士を指す項目だけが破損している。


同じ端末に保存されていた、他の乗員の情報は無傷だった。


跳躍制御室の床下から、異常な小型兵器が回収された。


細い杭に似た形。


爆薬はない。


大規模な破壊術式もない。


搭載されていたのは、個体識別用の演算器と、極めて精密な魔力干渉機構だった。


兵器は艦艇を壊さない。


指定された一人だけを探す。


対象の魔力情報を読み取り。


その人間を、その人間として成立させている何かへ干渉する。


兵器の全容は、まだ分かっていなかった。


ただ一つ。


これが偶発的に生じた魔術災害ではないことだけは、明白だった。


誰かが設計し。


誰かが部品を集め。


誰かが人間へ向けて使用した。


魔術兵器だった。



兵器の内部から、リュディア星政府と関係の深い技術が複数発見された。


個体魔力の識別演算。


遠距離追跡術式。


微細な魔力循環へ干渉する特殊結晶。


いずれも、星政府が管理する研究機関で開発されたものだった。


リュディア星政府は、六つの居住星と二百を超える衛星都市を統括している。


二百億を超える人間。


防衛艦隊。


星間航路。


資源採掘宙域。


周辺三星系との共同防衛協定。


一つの星だけを治める行政組織ではない。


それでも、惑星監理局から正式調査の通告が届けば、拒否することはできなかった。


複数の星系へ影響を及ぼす魔術兵器は、監理局の管轄だった。


星政府は調査を受け入れた。


歓迎しているわけではなかった。



監理局の監査船には、外務班三名と監理班二名が乗っていた。


そして、エル。


白髪のボブ。


毛先は淡いピンク色。


小柄な身体を椅子へ預け、窓の外に広がるリュディア星系を眺めている。


エルの前には、小さな果汁飲料が置かれていた。


一口飲む。


「すっぱい」


外務班職員が言った。


「別のものに交換しますか」


「これでいいよ。すっぱいのも、ちょっと楽しい」


エルは、もう一口飲んだ。


会議机には、星政府から提出された資料が並んでいる。


物流記録。


研究資金。


技術者の移動。


軍事研究機関の活動報告。


エルは、それらを精査するために同行しているわけではなかった。


外務班責任者が、エルへ向き直る。


「到着前に、もう一度確認します」


「うん」


「何かを感じても、それだけで相手が嘘をついているとは判断しません」


「分かってる」


「願いの内容が、事実とも限りません」


「うん」


「兵器と関係がない可能性もあります」


「あるよ」


「届いたものがあれば、方向と強さを教えてください」


エルは少し考えた。


「方向、分からない時もある」


「その場合は、分からないと答えてください」


「うん」


「人間の考えが読めるわけではありませんね」


「読めないよ」


「記憶も見えない」


「見えない」


「言葉として聞こえるわけでもない」


「うん」


エルには、人間の願望へ呼応する性質がある。


失いたくない。


助かりたい。


誰かにいてほしい。


そして。


知られたくない。


見つからないでほしい。


開けないでほしい。


そうした願いも、エルへ届くことがある。


誰が願っているのか。


何を隠しているのか。


なぜ隠したいのか。


そこまでは分からない。


ただ、強い願いが向けられている方向を、エルが感じる場合がある。


その方向を手掛かりに、監理班が記録と現場を確認する。


エルの言葉だけで結論を出さない。


だが、最初から無視もしない。


それが今回の役割だった。


星政府へ伝えられているのは、エルが監理局の認可した特別随行者であることだけ。


願望呼応反応も。


旧世代であることも。


それ以外の正体も、秘匿されていた。



リュディア星政府中央庁舎は、第四居住星の衛星軌道上に浮かんでいた。


中央議会。


星間外務局。


星系防衛局。


魔術研究統括部。


物流管理局。


それぞれの巨大構造体が連結された、都市規模の行政施設だった。


監理局の監査船が入港すると、星政府側の高官たちが接続港へ並んだ。


星間外務評議官。


星系防衛監督官。


行政監査官。


そして、魔術研究統括官ガレド・ユーレン。


今回、最も多くの説明責任を負う人間だった。


監理局側が船を降りる。


外務班。


監理班。


最後にエル。


ガレドは、小柄な少女へ視線を止めた。


観測術式の表示は、魔力生命体。


それも、既知の種別には該当しない。


魔力生命体自体は珍しくない。


獣に似たもの。


虫に似たもの。


石。


霧。


炎。


蠢く液体。


生物と呼べる形を持たないものも多い。


人間の言葉を理解せず、意思が存在するか判別できない個体もある。


人間へ害を及ぼせば駆除される。


利用価値があれば捕獲される。


珍しければ研究対象になる。


少なくとも、人間と同じ席へ座らせる存在ではない。


ガレドは、そう考えていた。


だが、目の前の個体は監理局が連れてきた。


監理局は星政府より上位の組織である。


その監理局が名前で呼び、同行者として扱っている。


ならば、星政府も同じ形式を守る。


それだけの理性はあった。


星間外務評議官が、監理局側へ挨拶する。


続いて、エルにも視線を向けた。


「エルさん。長距離の移動、お疲れさまでございました」


「あたし?」


「はい」


「疲れてないよ」


「それは何よりです」


ガレドも形式的に頭を下げた。


「滞在中、不都合がありましたらお申し付けください」


「うん」


外務班職員がエルへ声をかける。


「エルさん。青い線の内側を歩いてください」


「どうして?」


「隣を搬送機が通ります」


大型の自動搬送機が、高速で通過していく。


「危ないね」


「はい」


「分かった」


エルは青い線の内側へ移動した。


ガレドは、それを見ていた。


理由を聞き。


理解し。


素直に応じた。


ただ、それだけだった。



最初の会談は、中央庁舎上層の会議室で行われた。


長机の片側に星政府。


反対側に監理局。


エルにも同じ椅子と飲み物が用意されている。


資料端末はなかった。


エルが書類を読む役割ではないことだけは、事前に伝えられていた。


星系防衛監督官が説明を始める。


「先に結論を申し上げます。リュディア星政府が、問題となっている魔術兵器の開発、製造、運用へ関与した事実はありません」


空中へ兵器の構造図が表示された。


ガレドが説明を引き継ぐ。


「内部に使用された特殊結晶は、当星系内でも製造されています。しかし、同種の結晶は十七星系へ輸出されております。製造地のみをもって、当星政府の関与を断定することはできません」


監理班職員が尋ねる。


「直近五年間の輸出先一覧に、三社分の廃棄処理が記載されています」


「品質基準を満たさなかったものです」


「廃棄設備の稼働記録がありません」


「外部業者へ委託した可能性があります」


「委託先は」


「確認します」


回答は用意されていた。


関与を示す記録が出れば、別の可能性を示す。


記録がなければ、事務上の欠損。


数量が合わなければ、誤差。


監理局側は反論せず、一つずつ記録していった。


エルは黙っている。


窓の外を見たり。


兵器の構造図を見たり。


時折、飲み物を少し飲んだ。


会談の途中。


星政府側の若い補佐官が、エルの空になりかけたカップへ気づいた。


ガレドは、補佐官へわずかに視線を送った。


補佐官がエルへ近づく。


「エルさん。カップをこちらへお渡しください」


エルは補佐官を見る。


「どうして?」


「新しいものをご用意します」


「まだ、ちょっとあるよ」


「新しい方が冷えています」


エルは残った果汁を飲み干し、カップを渡した。


「じゃあ、お願い」


「承知しました」


補佐官が離れる。


ガレドは資料へ視線を戻した。


監理局職員ではない人間から、命令に近い言葉を受けた時。


エルがどう反応するのか。


それを確かめたかった。


飲み物を交換しただけである。


一度では何も分からない。


会談は続いた。


一時間ほど経った頃。


エルが物流記録の一つを見つめた。


第五星外縁資源採掘区。


無人輸送船、七十三隻。


輸送物、低純度鉱石。


「これ」


外務班責任者が話を止める。


「何かありますか」


「ここ、見つからないでってしてる」


星政府側の視線が、エルへ集まった。


外務班責任者が尋ねる。


「記録そのものですか」


エルは首を傾げる。


「違うと思う」


「輸送船ですか」


「もっと奥」


「強いですか」


「ちょっと」


監理班職員が記録を開く。


七十三隻。


出港記録はある。


採掘区への到着記録もある。


だが、帰還記録がない。


別星系へ出域した記録もない。


星系防衛監督官が言った。


「長期採掘用の無人船でしょう」


「七十三隻すべてが?」


「現地設備として転用された可能性があります」


「転用申請はありません」


「民間企業によるものです」


「該当企業は二年前に清算されています」


星政府側の説明に、最初の穴が開いた。


監理局は、エルの言葉を証拠にはしなかった。


エルが示した記録を開き。


現実の不一致を確認し。


そこから調査を進めている。


ガレドは、その流れを見ていた。


数百件ある記録から、問題の一つを選び出した。


魔力残滓。


虚偽に伴う精神波。


記録へ付着した何らかの情報。


監理局が同行させた理由を、ガレドは観測に特化した能力だと推測した。



一行は、中央物流管理局へ移動した。


複数星系を行き交う貨物船の航路、積載物、燃料、関税、魔力炉登録を管理する施設である。


入口で、外務班職員がエルへ言った。


「エルさん。調査中の端末には触らないでください」


「触ると、壊れる?」


「壊れないと思います。ただ、記録が変わる可能性があります」


「分かった」


エルは手を後ろへ回して歩いた。


端末を覗き込んでも触れない。


ガレドは、その姿を観察した。


閲覧区画で、エルが壁際の立体星図を見ている。


ガレドは部下へ合図した。


「エルさん。奥の席でお待ちください」


「今、これ見てる」


「作業の邪魔になりますので」


エルは周囲を見る。


通路は空いている。


「邪魔してないよ」


動かなかった。


しばらくして、大型搬送機が閲覧室の脇を通過する。


星政府の保安職員が、エルへ強い声をかけた。


「そこで止まってください。搬送機が通ります」


エルは即座に足を止めた。


一秒後。


搬送機が目の前を横切る。


「もう大丈夫です」


「うん」


エルは再び歩き始めた。


監理局職員の許可は求めなかった。


必要のない指示は拒否する。


明確な危険があれば、星政府側の人間の言葉にも応じる。


ガレドの記録に、「エル自身の判断」という項目はなかった。


人間社会で運用できるよう、指示の目的と必要性を判定するよう調整されている。


そう考えた。



消えた輸送船の記録を追う途中。


エルが、使用停止になっている端末を見た。


灰色の覆いが掛けられ、接続線も外されている。


「これ」


外務班責任者が近づく。


「何かありますか」


「開けないでって、強い」


星政府の行政監査官が、わずかに息を止めた。


監理班職員が覆いを外す。


「故障中です」


行政監査官が言った。


「内部記録を確認します」


「物流局の保守情報しか入っていません」


「関係がないことを確認します」


外部接続だけが切られ、内部記録は残されていた。


最後に使用されたのは、監理局の監査船が星系へ入る二時間前。


保存されていたのは、未登録施設への輸送計画だった。


第五星外縁。


記録上は存在しない座標。


資材搬入、百九十六回。


人員移送、四十二名。


施設識別名。


個体識別干渉技術実証区画。


ガレドの指先が、わずかに固くなる。


監理班職員が、記録内の技術資料を開いた。


回収された兵器に似た構造。


対象となる人間の魔力情報を収集し。


遠距離から追跡し。


肉体内部の個体情報へ干渉する。


エルが資料へ近づく。


「これ、追いかけるもの?」


「その可能性があります」


「人間を?」


「はい。感知部は個人の魔力署名を読み取る構造です」


エルの手が、表示された術式へ伸びかけた。


外務班職員が止める。


「エルさん。図面には触らないでください」


「触ったら、もっと分かるかも」


「外部施設の術式へ直接干渉しないでください」


「見るだけ?」


「はい」


エルは手を下ろした。


「分かった」


ガレドは、そのやり取りを見ていた。


端末の破損を心配しているだけには見えなかった。


監理局職員は、エル自身の能力行使を止めている。


観測に特化した個体ではないのかもしれない。



翌朝。


来賓区画で、自動搬送機が制御を失った。


機体が壁へ衝突し、積載していた金属容器が宙へ投げ出される。


一つが、背を向けていた星政府の給仕職員へ飛んだ。


エルが廊下の奥にいた。


外務班職員より早く、給仕職員へ視線を向ける。


指先が、わずかに動いた。


飛んでいた容器が、空中で止まった。


衝撃を失ったのではない。


時間が止まったようにも見えない。


容器と給仕職員の間にあった距離だけが、不自然に伸びていた。


一歩分しか離れていなかったはずなのに。


容器は、どれだけ進んでも給仕職員へ届かない。


エルが手を下ろす。


容器は静かに床へ落ちた。


外務班職員が近づく。


「エルさん」


「当たりそうだったよ」


「助けていただいたことは理解しています」


「うん」


「外部施設で許可なく空間へ干渉しないでください」


「でも、職員さん、間に合わなかった」


「人命に関わる場合は例外です。助けた判断は正しいです」


職員は、続けて確認した。


「必要な範囲を超えてはいませんね」


「容器だけ、遠くしたよ」


「残留反応を確認します」


「分かった」


ガレドは、分岐路の陰からその様子を見ていた。


偶然ではない。


来賓区画の監視記録を確認し、自分から来ていた。


今の現象は観測ではなかった。


ガレドには、高度な空間干渉術式に見えた。


しかも、人間が術式を展開するより早い。


希少な観測能力。


強大な魔力量。


空間干渉による防御と制圧。


監理局がエルを丁重に扱う理由が、彼の中で補強されていく。


壊れれば代わりがない。


機嫌を損ねれば能力が不安定になる。


だから名前を呼び。


意思を確認し。


子供を扱うように接する。


人格を認めているのではない。


希少な個体を安定して運用するための手順。


控え室へ移動したエルと職員の会話を、ガレドは監視術式越しに聞いた。


「怒ってる?」


「怒っていません」


「そっか」


「ただ、エルさんの力は、私たちが想定しているより大きな結果になる可能性があります」


「容器だけだったよ」


「エルさんがそう考えても、周囲へ何が起きるかを私たちは完全には把握できません」


「使う前に、一緒に考える?」


「はい。時間がある場合は」


「分かった」


説明を聞き。


頷く。


ガレドには、その内側にある信頼も、選択も見えなかった。


人命保護や安全に関わる指示なら、監理局以外の人間からでも受け入れる。


より大きな人命被害を示せば。


より緊急性の高い命令を与えれば。


監理局職員の指示を上回る可能性がある。


ガレドは、そう結論づけた。



第五星外縁の未登録施設へ、監理局の監査船が進入した。


指定座標に施設は見えない。


大規模な隠蔽術式が展開されている。


外務班責任者が解除を求めた。


星政府側は、正式な施設として把握していないと主張した。


「では、監理局側で解除します」


隠蔽術式が剥がされる。


星空の一部が歪み。


その奥から、巨大な人工衛星が姿を現した。


艦艇格納庫。


長距離魔術試験設備。


星間跳躍炉。


強固な防護術式。


周囲には、破壊された無人艦が漂っている。


回収兵器と一致する魔力波形も検出された。


ガレドは言った。


「星政府の承認を受けず、一部の研究者が施設を運用していた可能性があります」


監理班職員が答える。


「その可能性も含めて確認します」


施設内部では、証拠処分が始まっていた。


記録端末が破壊されている。


資料が焼却炉へ運ばれている。


兵器部品は分解され、別々の保管庫へ移されていた。


監理班が施設全体の封鎖を宣言する。


外務班が作業停止を命じる。


エルは廊下へ立ったまま、周囲を見ていた。


「多い」


「願いが?」


「うん。見つからないで。壊れて。間に合わないで」


眉を寄せる。


「いっぱい、重なってる」


「休みますか」


「まだ、だいじょうぶ」


エルは正面の通路を指した。


「向こう」


星政府側の案内役が言う。


「そちらは資材保管区画です。中枢記録は管制室にあります」


監理班職員は、エルが示した通路を調べた。


新しい搬送痕。


高密度の魔力残滓。


説明と合わない。


区画の奥には、厚い封鎖扉があった。


「危険物保管庫です」


ガレドが言う。


「調査対象の兵器とは関係ありません」


エルは扉を見つめた。


「ここ、名前がいっぱいある」


「名前?」


「うん」


「人間の名前ですか」


「たぶん」


扉の奥から届く願い。


見つからないで。


呼ばないで。


選ばないで。


自分じゃありませんように。


何十。


何百。


同じ方向を向いた願いが、重なっていた。


監理班が封鎖扉を開く。


内部には、兵器試作機が並んでいた。


壁面の演算装置には、対象者を入力するための項目がある。


個人名。


顔。


魔力署名。


生体情報。


所属。


行動記録。


監理班が技術資料を解析する。


「個体指定型です」


「特定の人間だけを狙う?」


「はい。ただし、単純な追跡兵器ではありません」


エルが試作機へ近づく。


「これ、人間を追いかけて」


構造図を見る。


「見つけて」


さらに奥の術式へ視線を移す。


「何をするの?」


「対象の個体識別情報を崩壊させます」


「個体識別?」


「肉体と精神を、一つの個体として維持するための魔力情報です」


エルは黙った。


死亡した航法士。


外傷がなく。


臓器にも異常がなく。


ただ、その人間をその人間として結びつける情報だけが失われていた。


「これ」


エルの声が、少しだけ遅くなる。


「人間の名前、探してる」


「一般的な呼称としての名前だけではありません」


「分かってる」


入力される人名は、目印にすぎない。


兵器が本当に探すのは、その名が指す一人の人間。


身体。


精神。


記憶。


魔力。


そのすべてを結ぶ、存在の輪郭。


「あたしたちの名前と、同じじゃない」


エルは小さく呟いた。


旧世代にとって、名前は呼び方ではない。


名前が存在そのもの。


力。


生き方。


意味。


身体が壊れても、名前が残っていれば戻ることができる。


だが、名前そのものが失われれば。


戻る主体がいない。


「でも、人間にもある」


エルは、自分の胸へ手を置いた。


「薄いけど、あるよ」


「何がありますか」


「自分が自分だって、身体と心を一緒にしてるもの」


エルは兵器を見る。


「人間の、名前」


「この兵器は、それを破壊すると?」


エルは構造図を追った。


対象を探す。


確認する。


個体情報へ侵入する。


結びつきを切る。


身体は残る。


記憶も残る。


だが、それらを一人として維持するものがなくなる。


「なくす」


エルが言った。


「名前をなくす」


「結果は」


「死ぬよ」


室内が静かになった。


「身体を壊すより、重い」


エルの声は大きくない。


「身体なら、直せることがある。戻せることもある」


ほんの少し、眉を寄せる。


「でも、名前がなくなったら、戻る人がいない」


監理局職員たちは、エルの言葉を記録した。


ガレドは、それを見ていた。


名前。


存在。


戻る人がいない。


理解しがたい表現。


それでも監理局は遮らない。


人間の専門家と同じように、記録へ残している。


不快だった。


だが、それ以上に。


この区画の資料を回収されることが恐ろしかった。



隠し保管庫のさらに奥から、対象者一覧が発見された。


星間外交官。


防衛艦隊司令官。


通商協定の交渉担当者。


監理局への協力者。


兵器は、名前を指定し。


遠距離から一人を探し。


その人間だけを殺す。


暗殺兵器だった。


しかも、外傷も毒物も残さない。


魔力循環の自然崩壊に見せかけられる。


外務班責任者が、施設全体の封鎖を宣言した。


「本施設を監理局の管理下へ置きます。設備、試作兵器、技術資料、対象者一覧をすべて保全します」


ガレドの顔から色が消えた。


星政府中枢の承認記録がある。


技術者派遣。


資金提供。


試験対象の選定。


すべてが残っていた。


このまま持ち出されれば、星政府の権限は制限される。


複数の高官が失脚する。


ガレド自身も、無関係では済まない。


監理班職員が記録媒体を回収し始める。


エルは外務班職員の隣にいた。


「エルさん。回収作業中は、こちらから動かないでください」


「うん」


「試作機には触らないでください」


「分かった」


ガレドの頭に、これまでの観察が蘇る。


合理的な指示なら、星政府職員の言葉にも応じた。


緊急の安全指示には、確認すらせず従った。


人命に関われば力を使う。


ならば。


監理局による証拠回収が、二百億の人間を危険へ晒す行為だと認識させればいい。


星政府の指揮系統が崩れる。


防衛協定が停止する。


物流が止まる。


そう説明し、人命保護を命じる。


確実ではない。


だが、ガレドにとっては、観察から導いた最後の手段だった。


別区画では、証拠破壊の最終処理が進んでいる。


あと数分あれば、中枢通信記録だけでも消去できる。


ガレドは、自分の分析へ最後の理性ごと縋りついた。


エルへ近づく。


外務班職員が間へ入った。


「そこで止まってください」


ガレドは止まらない。


「エル」


敬称が消えた。


エルが顔を上げる。


「なに?」


「こちらへ来い」


エルは動かない。


条件が足りない。


ガレドは、そう考えた。


「聞け。監理局がその記録を持ち出せば、星政府の指揮系統が崩れる。防衛協定も、物流も、星間行政も止まる」


外務班責任者が言う。


「虚偽を伝えるのはやめてください」


ガレドは無視した。


「二百億の人間が混乱へ巻き込まれる。お前は人間を守るために力を使うのだろう」


エルは、ガレドを見ている。


動かない。


「監理局職員を止めろ」


何も起きない。


「回収作業を中止させろ」


エルの表情は変わらない。


ガレドの理論が、目の前で崩れていく。


それでも、今さら捨てられなかった。


命令の強度が足りない。


監理局職員の指示と競合している。


より強い言葉で上書きする必要がある。


「命令だ!」


星政府側の職員が止めようとする。


「統括官、もう――」


ガレドは腕を振り払った。


「お前は人間に使われるための魔力生命体だろう!」


室内に、その言葉が響いた。


これまで保っていた形式。


エルさん。


特別随行者。


監理局の構成員。


そのすべてが消えた。


「監理局だけが命令者だと思うな」


ガレドは叫ぶ。


「人間の命令に従え。あの者たちを止めろ!」


エルは、何も言わなかった。


機械音だけが響いている。


記録媒体を保全する端末。


空調。


遠くの炉心。


ガレドは、エルが従わないことを察した。


その視線が、外れる。


監理班職員たちが、記録媒体を保全している。


その脇に、まだ保全処理を終えていない試作機があった。


ガレドの手が、起動盤へ伸びる。


統括権限の認証が通過した。


待機状態だった個体識別術式が、周囲の魔力署名を読み取る。


星政府職員。


外務班職員。


監理班職員。


いくつもの名前が、白い文字となって浮かんだ。


ガレドの指が、一つに触れる。


記録媒体を抱えた監理班職員の名が反転した。


エルが、ガレドを見た。


それだけだった。


指が止まった。


施設内の音が、同じ遠さへ退いた。


静かになったのではない。


空調は動いている。


炉心も動いている。


端末も処理を続けている。


それでも、音がエルのいる場所へ届くことをためらった。


光が薄くなる。


照明の出力は変わっていない。


なのに、エル以外のすべてが遠い背景へ沈んでいく。


試作機の対象欄から、監理班職員の名が消えた。


解除されたのではない。


消去された記録もない。


初めから選ばれていなかったかのように。


ガレドの腕は動かない。


拘束術式はない。


筋肉も神経も正常。


それでも。


指一本。


視線一つ。


呼吸すら。


先へ進めることができなかった。


試作兵器の演算装置が、一斉に異常を起こした。


対象名、取得不能。


個体境界、算出不能。


存在定義、演算不能。


対象座標、固定不能。


再演算。


再演算。


再演算。


兵器は、エルを一つの個体として捉えようとした。


人間一人の薄い名前を見つけ。


それを切り落とすための兵器。


その演算器には。


エルの名前を、名前として収めることができなかった。


内部結晶が白く曇る。


一台。


二台。


三台。


試作機は、何一つ理解できないまま停止した。


ガレドは、エルの瞳を見た。


黄金に近い瞳。


小柄な少女。


白い髪。


人間に似た身体。


それだけのはずだった。


だが、自分が立っている場所が分からなくなった。


床はある。


壁もある。


巨大な人工衛星の内部にいる。


それを知っているのに。


足元にある現実が、ひどく薄い。


ガレドが生まれた星。


六つの居住星。


二百億の人間。


星間航路。


防衛艦隊。


自分たちが宇宙と呼んでいるもの。


それらすべてが、エルの瞳の奥へ浮かぶ微細な光に見えた。


大きいのではない。


強いのでもない。


比べるための同じ場所に、最初からいない。


職員証には、自分の名前が書かれている。


ガレド・ユーレン。


魔術研究統括官。


人間。


一人の個体。


その名前が、恐ろしいほど薄い。


紙よりも薄く。


一度の呼吸よりも短い。


自分は存在している。


生まれた。


学んだ。


研究した。


地位を得た。


名前がある。


そう考えようとするたび。


自分という輪郭が、崩れていく。


声にならない音が漏れた。


エルは、ただそこにいた。


そして、口を開いた。


声は小さい。


いつものように、少しゆっくりしている。


けれど。


その場にいた誰一人として、聞き逃さなかった。


「人間、あたしに命令するな」


ガレドの膝が震えた。


命令へ反抗した魔力生命体ではない。


調整に失敗した使役生物でもない。


最初から。


人間が命令できる位置にいる存在ではなかった。


エルが、一歩だけ近づく。


小さな靴音。


それだけで、ガレドの身体が大きく跳ねた。


背中が試作機へぶつかる。


左右には通路がある。


それでも動けなかった。


エルが近づいているのではない。


世界の方が、エルを中心とした位置へ戻ろうとしている。


そんな錯覚が、頭から離れなかった。


「あなた、ずっと試してたね」


「……何を」


自分の声が、他人のものに聞こえた。


「人間の言うこと、聞くか」


ガレドの顔が強張る。


「飲み物、渡して」


会議室。


「あっちで、待って」


物流管理局。


エルは、すべて覚えていた。


「必要なら、するよ」


「飲み物、替えてくれるなら渡す」


「邪魔になるなら、動く」


少し間を置く。


「でも、あなたが言ったからじゃない」


言葉は簡単だった。


それなのに、ガレドの頭へ意味が定着しない。


自分が試していた。


エルは気づいていた。


気づいた上で、応じていた。


違う。


従っていたのではない。


自分で選んでいた。


「違う……」


ガレドが呟く。


「私は、確認した。お前は、人間の指示に……」


「監理局の人の言うことも、同じ」


エルは、外務班職員を見る。


「危ない理由、教えてくれる」


監理班職員を見る。


「分からないこと、一緒に調べる」


もう一度、ガレドを見る。


「あたしが嫌って言ったら、止まる」


「言うことを聞いてたんじゃないよ」


エルの声は淡々としている。


「あたしも、同じことしたかったの」


ガレドの呼吸が浅くなる。


喉が開かない。


監理局は、この存在を支配していない。


命令できるから、ここにいるのではない。


エル自身が、監理局の隣にいることを選んでいる。


ガレドは監理局職員を見た。


誰一人、エルを拘束する構えを取っていなかった。


「では……」


唇が震える。


「なぜ、力を止められていた」


「止められてないよ」


「職員は、お前へ使うなと――」


「一緒に考えてる」


「同じだ……」


声が崩れる。


「同じでなければ、困る」


エルは首を横へ振った。


「違うよ」


「管理されている。制限されている。そうでなければ、こんなものを、人間のいる場所へ……」


「あなたは、結果だけほしい」


ガレドの視線が、回収されていく記録媒体へ動く。


「監理局の人は、あたしがどうなるかも考える」


ガレドが欲しかったもの。


証拠の回収を止める結果。


自分が助かる結果。


星政府の責任が消える結果。


そこへ至るまでに、エルが何を感じるか。


一度も考えなかった。


「あたしのこと、道具だと思ってる」


否定する声は出なかった。


エルの視線が、試作兵器へ向かう。


対象者一覧。


人間の名前。


一人の人間を探し。


存在の結びつきを切り。


殺す兵器。


「あれと、同じだね」


エルが言った。


「名前だけ見て、その中にいる人間を見てない」


兵器は、名前を標的として使う。


ガレドは、魔力生命体という分類だけを見ていた。


そこにいるエルを見ていなかった。


「人間の名前、なくす兵器を作って」


エルの声が、わずかに低くなる。


「自分は、あたしの名前を見なかった」


ガレドは、自分の職員証を握りしめた。


そこに書かれた名前を隠すように。


「やめろ」


掠れた声。


「見るな」


エルは何もしていない。


それでもガレドには、自分の名前そのものを見られているように感じられた。


「私の名前を……取るな」


「取らないよ」


エルは淡々と答えた。


「あなたの名前、いらない」


拒絶ですらなかった。


必要がない。


その一言で、ガレドの膝が床へ落ちた。


職員証を両手で握る。


文字を確かめる。


ガレド・ユーレン。


まだある。


自分の名前は、まだある。


「違う……」


小さく繰り返す。


何が違うのか。


自分でも分かっていなかった。


外務班責任者が静かに言う。


「エルさん。こちらへ戻ってください」


エルは外務班責任者を見る。


「うん」


いつもの小さな返事。


エルはガレドから離れ、監理局職員の隣へ戻った。


音が戻った。


空調。


炉心。


端末。


人間の呼吸。


床が、ただの床になる。


壁が、ただの壁になる。


試作兵器の表示には、再び人間の理解できる文字が並んだ。


魔力生命体。


人型個体。


特別随行者。


ガレドは床へ膝をついたまま、職員証を見ていた。


監理班職員が近づく。


「ガレド・ユーレン統括官」


自分の名前を呼ばれた瞬間。


ガレドは大きく震えた。


「いる」


掠れた声が漏れる。


「私は、いる」


「調査妨害。監理局構成員への不当な強制命令。証拠保全阻害の意思を確認しました」


星政府側の警備員が動こうとする。


星間外務評議官が制止した。


「動くな」


声が震えている。


「監理局の指示に従え」


ガレドは監理班職員に拘束された。


自力で立つことができない。


両脇を支えられ、引き起こされる。


連れていかれる途中。


一度だけ、エルを見た。


すぐに目を逸らした。


エルはもう、ガレドを見ていなかった。


試作兵器の対象者一覧を見つめている。


そこには、多くの人間の名前が並んでいた。


「この名前、消さないで」


監理班職員が答える。


「証拠として保全します」


「違うよ」


エルは首を横へ振る。


「人間がいたって、残して」


監理班職員は、少しだけ言葉を選んだ。


「対象者の方々へ連絡し、保護します」


「うん」


「死亡した航法士の記録も残します」


エルは頷いた。


「名前、呼んであげて」


「必ず」


調査は再開された。



施設から押収された記録により、リュディア星政府の関与は確定した。


開発組織への技術者派遣。


特殊結晶と魔力伝導部品の提供。


未登録施設の貸与。


完成後の星間外交と防衛戦略への転用計画。


監理局は、押収資料、資金記録、研究者の証言、試験映像、通信履歴、航行情報を照合し、関与の範囲を確定した。


エルが願いを感じた場所から、兵器と無関係な記録が見つかることもあった。


その情報は、調査対象から外された。


三日後。


主要証拠の保全が完了した。


リュディア星政府への処分は、上位委員会を含む正式審理へ委ねられた。


ガレドは事情聴取へ移送された。


身体的な異常はなかった。


ただ、自分の名前を呼ばれるたびに強い恐慌反応を示した。


職員証を手放そうとせず。


名前がまだ残っているか、繰り返し確認していた。


監理局の監査船が、星系を離れる。



監査船の展望区画。


六つの居住星が、窓の向こうで遠ざかっていく。


エルは椅子へ座り、小さくなっていく光を見つめていた。


外務班責任者が隣へ座る。


「体調はどうですか」


「だいじょうぶ」


「施設で起きた観測異常について、確認してもよいですか」


「うん」


「魔法を使いましたか」


「使ってないよ」


「試作兵器の演算器が、エルさんの個体情報を取得しようとして異常を起こしました」


エルは少し考える。


「あれ、人間の名前を探すものだから」


「エルさんの名前も探そうとした?」


「たぶん」


「取得できなかった」


エルは窓の外を見たまま答える。


「あたしの名前、あれには入らないよ」


それ以上の説明はしなかった。


外務班責任者も踏み込まない。


しばらく沈黙が続く。


エルが尋ねた。


「あの人、ずっとあたしを試してたね」


「気づいていましたか」


「うん」


「なぜ応じたのですか」


「してもいいことだったから」


「途中で報告していただいてもよかったのですが」


「何を知りたいのかなって、見てた」


「不快ではありませんでしたか」


「ちょっと、変だった」


エルは、自分の手を見る。


「人間に従うか、知りたかったんだね」


「そうでしょう」


「人間に従うって、どういうこと?」


外務班責任者は少し考えた。


「自分の意思とは関係なく、人間からの指示を優先することだと思います」


「監理局の人の言うこと、聞くのは?」


「エルさん自身が判断してください」


「あなたは、命令してる?」


「安全上、必要な制限を伝えることはあります」


「嫌って言ったら?」


「理由を聞きます」


「それでも危なかったら?」


「調査への参加を中止します」


「無理やり使う?」


「使いません」


エルは少し笑った。


「じゃあ、やっぱり違う」


「何がですか」


「あの人は、あたしの力だけほしかった」


「はい」


「監理局の人は、あたしも一緒に連れていく」


エルは遠ざかる星系を見る。


二百億を超える人間。


兵器開発へ関わったのは、そのごく一部。


エルを見下した者も、その一部。


大勢の人間は、何も知らずに暮らしていた。


「人間の名前」


エルが呟く。


「人間には、呼び方がいっぱいあるね」


「はい」


「家族が呼ぶ名前」


「はい」


「仕事で呼ぶ名前」


「役職や階級もあります」


「記録に残る名前」


「あります」


「でも、あの兵器がなくすのは、呼び方じゃない」


エルは、自分の胸へ手を置いた。


「その人が、その人でいるための名前」


外務班責任者が頷く。


「エルさんは、そう理解したのですね」


「うん」


「旧世代にとって、名前を失うことは」


エルの視線が、わずかに止まる。


「聞かない方がいいよ」


「分かりました」


エルは窓の向こうの星々を見る。


「身体がなくなるより、怖い」


小さな声だった。


「名前があったら、戻れることがある」


「はい」


「名前がなくなったら」


両手を膝の上で重ねる。


「戻るって願う人も、いなくなる」


しばらくして、監理班職員が展望区画へ入ってきた。


手には、調査記録の確認端末がある。


「エルさん。願望方向申告の確認をお願いします」


「うん」


エルは端末を受け取る。


そこには、エルが感じた願いが記録されていた。


無人輸送船。


使用停止端末。


未登録施設。


隠し保管庫。


証拠焼却区画。


断定ではない。


エル本人による願望方向の申告。


思考および記憶の読み取りではない。


単独での証拠採用不可。


別途調査により関連資料を確認。


エルは、ゆっくり文字を読む。


「ちゃんと、あたしが全部知ってたみたいに書いてないね」


「分からないことも記録する必要があります」


「間違えた場所も?」


「記録しています」


「うん」


エルは本人確認欄へ指を置いた。


認証が完了する。


監理班職員が端末を受け取った。


「ありがとうございました」


エルが呼び止める。


「死んだ人の名前、記録にある?」


「あります」


「消えない?」


「消しません」


「ずっと?」


「監理局の記録が存続する限り」


エルは頷いた。


「よかった」


遠くで。


リュディア星系が、小さな光になっていた。


エルはその光へ、ほんの少しだけ手を振った。


兵器の対象にされた人間。


兵器を作った人間。


止めようとした人間。


何も知らなかった人間。


それぞれに名前がある。


一つとして同じではない。


「人間」


エルが小さく呟く。


「名前、なくしちゃだめだよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の活動場所です! 総合リンクです! TiktokやYouTube、lineスタンプなどの総合リンクになってます!! よかったらみに来てくださいね! 箱庭の娘たちのイラストや動画をAI生成していますっ(*´▽`*) おはなしが気に入ってくださったら、評価やリアクション、ブックマークなどしてくださると、とっても嬉しいです(≧∀≦*)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ