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硝子玉の宇宙、箱庭の娘たち【旧版】  作者: 硝子玉の宇宙
箱庭の娘たち

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110/135

第110話-むちむち増量レト

惑星監理局、食堂。


昼休みの混雑が少し落ち着き、職員たちがそれぞれの席で食後の飲み物を飲んでいる時間。


レトは、食堂の隅で幸せの絶頂にいた。


淡緑の長い髪を左側のワンサイドテールにまとめ、青いキューブの髪飾りを揺らしながら、両手でお菓子の包みを大事そうに持っている。


最近、レトが猛烈にはまっているお菓子だった。


丸い。

白い。

もちもち。

ふわふわ。

表面にはきらきらした砂糖。

中には甘いクリーム。

噛むと、ほんのり温かいシロップがとろっと出る。


最初に食堂班が試作品として出した時、レトは一口食べた瞬間、目を輝かせて言った。


「これ、すごい」


そして二口目で言った。


「任務にしたい」


何を任務にするのか、食堂班には分からなかった。


ただ、その日からレトは毎日のようにそのお菓子を食べていた。


今日も食べている。


レトは包み紙をそっと開き、両手でお菓子を持ち上げた。


まるで、壊れやすい硝子細工でも扱うみたいに慎重だった。


「いただきます」


小さく言って、一口。


もちっ。


ふわっ。


中から甘いクリームがとろりと出る。


その瞬間、レトの足が椅子の下でぱたぱた動いた。


「んふふ……」


ほっぺがゆるむ。


目が細くなる。


もう一口。


ぱたぱた。


「んふふふ……」


さらにもう一口。


ぱたぱたぱた。


「おいしい……」


レトはお菓子を食べるたびに、足を小さく跳ねさせた。


本人はまったく意識していない。


ただ、おいしい。


ただ、うれしい。


ただ、このお菓子が今日もここにあることが幸せで、口に入るたびに身体が勝手に喜んでしまう。


食堂班の職員が、それを遠くから見ていた。


一口食べる。


足がぱたぱた。


「んふふ……」


また一口。


足がぱたぱた。


「んふふふ……」


職員は、皿を拭く手を止めた。


かわいい。


あまりにもかわいい。


だが、職員としては食堂の業務を続けなければならない。


心を強く持って、皿を拭く。


レトは二個目に手を伸ばした。


包みを開ける。


一口。


ぱたぱた。


「んふぅ……」


三個目。


一口。


ぱたぱた。


「えへへ……」


幸せの波が、食堂の隅で小さく発生していた。


向かいに座っていたロジーは、頭上デバイスで記録を取りながら、それを見ていた。


本日のレトおやつ記録

対象:もちふわクリーム球

摂取数:現在三個

表情:幸福度高

足部反応:ぱたぱた

発声:んふふ系


ロジーは、じーっとレトを見た。


レトは気づかない。


四個目の包みを開けている。


一口。


ぱたぱた。


「んふふ……」


ロジーは首を傾げた。


「レト」


「なに?」


「なんか太った?」


食堂の空気が、変な方向に跳ねた。


近くにいた職員が、飲んでいたスープを気管に入れかけた。


食堂班の職員が、皿を拭く手を止めた。


生活班の職員が、遠くの席から無言でこちらを見た。


レトは四個目のお菓子を持ったまま、ぴたりと止まった。


「……ふと」


「うん」


ロジーはまったく悪びれず、観察者の顔で続ける。


「ほっぺがね、前よりもちっとしてる。あと腕のとこ。服の袖がちょっと、むちって」


「むち」


レトの声が小さくなった。


「むちってした?」


ロジーは真剣に頷いた。


「した」


「むち……」


レトは自分の袖を見た。


たしかに、なんとなく、いつもより腕が袖にぴったりしている気がした。


いや、気がしただけかもしれない。


でも一度そう思うと、もうそう見える。


レトは四個目のお菓子を見た。


お菓子もレトを見ているような気がした。


レトは震えた。


「これは……敵?」


その瞬間、食堂の入口からエルが歩いてきた。


白髪のボブの毛先を淡くピンクに揺らし、いつものようにふわふわした足取りで、レトたちの席に近づいてくる。


「なにしてるの」


ロジーが即答した。


「レトが太ったかどうかの観察」


「ロジー!!」


レトが叫んだ。


しかし、エルはもうレトの横に立っていた。


エルはレトをじっと見る。


顔。

ほっぺ。

腕。

お腹。


そして、何の迷いもなくレトのお腹をつまんだ。


ぷに。


「レト、成長してる」


レトは目を見開いた。


「成長!?」


エルは、もう一度つまんだ。


ぷに。


「ここ」


さらに、少し位置を変えて。


ぷに。


「ここも」


レトは固まった。


「エル……わたし、どう成長してるの?」


エルは淡々と答えた。


「横」


食堂班の職員が、奥で崩れ落ちそうになった。


ロジーは机を叩いた。


「横方向成長!」


「やだあああああ!」


レトはお腹を両手で押さえた。


「わたし、縦に成長したかった!」


ロジーがデバイスに高速入力する。


レト、横方向成長を拒否。縦方向成長を希望。


エルは首を傾げた。


「縦がいいの?」


「縦がいい!」


「どうして」


「かっこいいから!」


「横は?」


レトはしばらく考えた。


「……つよそう?」


「つよそう」


エルは頷いた。


ロジーが叫んだ。


「むちむち戦闘班!」


「やめてぇ!!」


レトは椅子から飛び降りた。


その瞬間。


服の裾が、ほんの少しだけ持ち上がった。


お腹が、ぽよっとした。


見た。


ロジーは見た。


エルも見た。


職員たちも、見ていないふりをしながら見た。


レト自身も見た。


「……ぽよ」


ロジーが小さく言った。


「ぽよじゃない!」


レトは即座に否定した。


「いまのは、戦闘班の……えっと……予備魔力!」


ロジーが目を輝かせる。


「予備魔力がお腹に!?」


「たぶん!」


エルが、納得した顔で頷いた。


「レト、お腹に任務を貯めてる」


「貯めてない!」


ロジーのデバイスが、勝手にかわいい警告音を鳴らした。


新規分類候補:お腹任務


「消して!」


「待って、かわいい!」


「消して!」


ロジーは笑いながら消した。


そこへ、副長が現れた。


本当に、こういう時だけ異様に現れるのが早い。


金髪の細身の長身。

いつもの薄い笑み。

食堂の入口で、状況を一目見て、すべてを理解した顔をしている。


「なるほど」


レトは振り返った。


「副長!」


「はい」


「わたし、むちむちになった?」


副長は一秒だけ沈黙した。


その一秒の間に、食堂の職員たちは全員、息を止めた。


副長は穏やかに言った。


「監理局としては、まず事実確認が必要ですね」


レトは真剣な顔になった。


「事実確認」


「はい。感情的な判断ではなく、客観的な調査を行いましょう」


ロジーが飛び上がった。


「調査!? レトむちむち調査委員会!?」


「名前が最悪です」


副長はにこやかに言った。


「正式名称は、レト体型変化原因調査会です」


「それもけっこうやだ!」


レトが叫ぶ。


だが、もう遅かった。


ロジーのデバイスには、でかでかと表示されていた。


緊急議題:レト体型変化原因調査会


食堂の端で、食堂班の職員が小さく拍手した。


生活班の職員が、なぜか記録用紙を持ってきた。


医療班の職員まで呼ばれた。


レトは椅子に座らされ、真正面にお菓子の包みを並べられた。


一個。

二個。

三個。

四個。

五個。

予備が二個。


副長がそれを見た。


「これは今日の分ですか」


レトは目を逸らした。


「今日の……可能性」


「可能性」


「まだ食べてない子もいるから」


「食べていないものを子と呼ばないでください」


「はい」


ロジーが成分表を表示した。


「こちら、もちふわクリーム球の詳細データ! 糖分! 脂質! クリーム! シロップ! 謎の幸福感!」


医療班の職員が画面を見た。


「……高いですね」


レトがびくっとする。


「何が?」


「カロリーです」


「カロリー」


レトはその言葉を知らないわけではない。


でも、今この場で聞くと、なにかものすごく強い敵の名前に聞こえた。


「カロリーって、敵性存在?」


ロジーが即答した。


「ある意味、食生活に潜む敵!」


レトは立ち上がった。


「じゃあ戦う!」


医療班の職員が止めた。


「戦う相手ではありません」


「じゃあ斬る?」


「斬りません」


「硝子短剣で」


「斬りません」


「高熱で焼く?」


「焼いても食べた分は消えません」


レトは絶望した。


「強い……!」


エルはお菓子をじっと見た。


「カロリー、見えない」


ロジーが得意げに言う。


「見えないけどいるんだよ」


エルは少し考えた。


「あたしが見える形にする?」


食堂の空気が、一瞬で凍った。


副長が即座に言った。


「しなくて結構です」


エルは頷いた。


「そっか」


ロジーが少し残念そうに言う。


「カロリーが見える世界、ちょっと見たかった」


医療班の職員が真顔で言った。


「見えない方が平和です」


調査は続いた。


まず、体重計が用意された。


レトは体重計を見た瞬間、身構えた。


「これは……敵?」


生活班の職員が言う。


「測定器です」


「でも、わたしの秘密を暴こうとしてる」


ロジーが手を叩いた。


「体重計、剝擗系!」


「ロジーさん」


副長の声が少し低くなった。


「はい黙ります!」


レトは体重計の前に立った。


一歩、乗る。


数字が出る。


ロジーが覗き込もうとする。


レトが硝子短剣を一本出す。


「見ないで!」


「見ない見ない!」


ロジーは両手で目を塞いだ。


ただしデバイスが見ていた。


副長がデバイスの前に手をかざした。


「デバイスも」


「はい!」


ロジーのデバイスが、しゅんと表示を消す。


医療班の職員だけが数値を確認した。


「大きな異常はありません。多少の増加はありますが、健康上ただちに問題になる範囲ではありません」


レトの顔がぱっと明るくなった。


「じゃあ、むちむちじゃない?」


医療班の職員は慎重に答えた。


「むちむちかどうかは医療用語ではありません」


ロジーが手を挙げた。


「じゃあ情報班用語にする?」


「しません」


副長が即答した。


次に、戦闘班の簡易運動確認が始まった。


食堂の端に、なぜか小さな測定スペースが作られた。


レトは短距離ダッシュをした。


速い。


普通に速い。


次に跳躍。


高い。


普通に高い。


次に硝子短剣の遠隔操作。


精密。


普通に精密。


職員たちは頷いた。


「戦闘性能に問題なし」


レトは胸を張った。


「つまり、わたしは大丈夫!」


ロジーが手を叩く。


「むちむちでも強い!」


「むちむちじゃない!」


エルが淡々と言う。


「強いぽよ」


「混ぜないで!」


レトは顔を赤くして叫んだ。


その騒ぎの最中、ジェレミーが食堂に入ってきた。


いつものように静かで、無駄がない。


食堂が、また別の意味で静かになった。


ジェレミーは状況を見た。


レト。

体重計。

成分表。

お菓子。

ロジーのデバイス。

エルのつまむ手。

副長の薄い笑み。

職員たちの見ていないふり。


だいたい分かった。


「何をしている」


副長が穏やかに答えた。


「レトの体型変化原因調査会です」


「解散しろ」


即答だった。


レトがぱっと駆け寄った。


「お兄さん!」


「何だ」


「わたし、太った?」


ジェレミーはレトを見る。


少し沈黙。


レトはお腹を押さえた。


ロジーは目を輝かせた。


エルはじっと見ていた。


副長は薄く笑っていた。


職員たちは全員、聞いていないふりをしながら全力で聞いていた。


ジェレミーは言った。


「任務に支障はない」


レトは眉を下げた。


「かわいさには?」


ジェレミーは一切迷わず言った。


「支障はない」


食堂がざわっとした。


レトの顔が、一瞬で真っ赤になる。


「えへ」


ロジーがデバイスを爆速で起動した。


局長発言:かわいさに支障なし


ジェレミーが視線を向けた。


ロジーは静かに表示を消した。


「保存してないよ」


「するな」


「はい」


レトは照れながら、でもまだ少し気になるらしく、お腹をつまんだ。


ぷに。


「でも、ぽよってする」


ジェレミーは成分表を見た。


「この菓子は一日一つまでだ」


レトは固まった。


「ひとつ」


「一つだ」


「ふたつを合体させたら?」


「一つは一つだ」


「いっこと半分…」


「一つだ」


「ロジーとエルから少しずつもらったら?」


「合計で一つだ」


レトは本気で驚いた。


「お兄さん、つよい……!」


ロジーが小声で言う。


「カロリー管理の局長、強すぎる」


副長が頷いた。


「監理局の局長ですから」


「そこも監理するんだ」


「必要なら」


エルがレトのお菓子を見た。


「一つを、三人で分けて、三回食べる?」


レトははっとする。


「いっぱいたべてる感じがする!」


ロジーが机を叩いた。


「分割作戦!」


レトはすぐに元気を取り戻した。


「作戦名!」


ロジーが叫ぶ。


「もちふわクリーム球・幸福分散摂取作戦!」


レトも叫ぶ。


「高カロリー包囲網突破作戦!」


エルがぽつりと言う。


「ぽよ回避」


「それは入れない!」


最終的に、作戦名は副長の裁定で決まった。


お菓子適量共有作戦


レトは少し不満そうだった。


「もっとかっこいいのがよかった」


副長は微笑んだ。


「かっこよくすると、あなたは余計に食べます」


「ばれてる」


「分かりやすいので」


食堂班が小さな皿を三つ用意した。


例のもちふわクリーム球を一つだけ、丁寧に三等分する。


レトの皿。

ロジーの皿。

エルの皿。


レトは自分の分を見て、少しだけしょんぼりした。


「ちいさい」


ロジーが言った。


「でも、あと二回たべられる!」


レトは顔を上げた。


「合法」


エルが自分の分を見た。


「かわいい大きさ」


レトは少し考えた。


「かわいい大きさ……」


ロジーが拳を握る。


「しかも三人で食べるから、記録上の楽しさは三倍!」


レトの目が輝いた。


「三倍!」


エルは首を傾げる。


「カロリーも三倍?」


医療班の職員が即答した。


「なりません」


エルは頷いた。


「よかった」


三人は同時に食べた。


もちもち。

ふわふわ。

クリームがとろり。


レトは幸せそうに目を細めた。


そして、ほんの小さな一切れなのに、やっぱり足がぱたぱた動いた。


「んふふ……」


ロジーも頷いた。


「おいしい!」


エルは口の中で少し転がしてから言った。


「小さいのに、おいしい」


レトはぱっと笑った。


「じゃあ、作戦成功!」


ロジーのデバイスに、派手なホログラムが出た。


作戦成功!

高カロリー敵性反応、適量に封じ込め!

レトのかわいさ、維持!


副長が画面を見た。


「最後の項目は誰の承認ですか」


ロジーが胸を張る。


「現場判断です!」


ジェレミーが言った。


「妥当だ」


レトはまた真っ赤になった。


「お兄さん……!」


ロジーが机を叩いた。


「局長が妥当って言った! レトのかわいさ、正式承認!」


「正式承認じゃない」


ジェレミーは即座に否定した。


しかし遅かった。


その日の午後、食堂の小さな掲示板には、なぜか手書きの札が増えていた。


お菓子は一日一つまで。


その下に、ロジーの字で追記。


ただし、三人で分けると楽しい。


その横に、エルの字で追記。


ぽよは慎重に使う。


さらにその下に、レトの字で大きく追記。


ぽよ禁止!


そして最後に、誰が書いたのか分からない整った字で、小さく一文。


かわいさに支障なし。


レトはそれを見つけた瞬間、顔を真っ赤にして食堂から走って逃げた。


「消してぇ!!」


ロジーが全力で追いかける。


「待って! 記念写真だけ!」


エルも後ろから歩いていく。


「レト、横に成長しても速いね」


「エルも言わないでぇ!!」


食堂班の職員は、掲示板を見た。


消すべきか。


残すべきか。


少し考えた。


そして、そっと札の横に新しい注意書きを貼った。


掲示物を増やす場合は食堂班へ申請してください。


その日の夕方。


レトは結局、掲示物を消せなかった。


なぜなら、ジェレミーの字かもしれない最後の一文だけは、どうしても剥がせなかったからである。


そのかわり、レトはその下にさらに小さく書き足した。


でも、ぽよはだめ。


翌朝。


その横に、ロジーの字で追記されていた。


むちむちは要相談。


さらにその横に、エルの字で追記されていた。


横もかわいい。


レトは掲示板の前で両手を握りしめ、ぷるぷる震えた。


「これは……」


通りかかった副長が尋ねた。


「どうしました」


レトは振り返った。


「副長」


「はい」


「掲示板と戦っていい?」


「駄目です」


「じゃあ、作戦会議していい?」


「それは許可します」


レトはぱっと顔を輝かせた。


「ロジー! エル! 掲示板表現改善作戦、開始!」


ロジーが廊下の向こうから飛び出してくる。


「記録開始!」


エルもふわふわ歩いてくる。


「ぽよ、消す?」


「消す!」


「むちむちは?」


「要相談じゃなくて禁止!」


「横は?」


レトは少し考えた。


「……かわいいなら、ちょっとだけ許す」


ロジーが叫んだ。


「一部許可出ました!」


「記録しないで!」


「もうした!」


「ロジー!!」


監理局の廊下に、今日もレトの元気な声が響いた。


そして食堂では、例のもちふわクリーム球が、今日から正式に小さめサイズで提供されることになった。


名前は、食堂班命名。


適量もちふわ。


レトはそれを見て、真剣な顔で言った。


「小さくなった……」


ロジーが言った。


「でも二個食べても一個分!」


レトの目が輝いた。


医療班の職員が、背後から言った。


「二個までです」


レトはびくっとした。


「見てたの!?」


副長が少し離れた席でコーヒーを飲みながら言った。


「監理局ですから」


エルは適量もちふわをひとつ持ち、じっと見つめた。


「カロリー、封じられてる?」


ロジーが胸を張る。


「封印指定お菓子!」


レトは両手でお菓子を持ち上げた。


「じゃあ、いただきます!」


そして一口。


もちもち。


ふわふわ。


やっぱりおいしい。


レトの足が、椅子の下でぱたぱた動いた。


「んふふ……」


もう一口。


ぱたぱた。


「んふふふ……」


レトはにこにこ笑った。


そのほっぺは、たしかに少しもちっとしていた。


ロジーはそれを見た。


エルも見た。


副長も見た。


ジェレミーも、少し離れた席から見た。


誰も何も言わなかった。


レトは幸せそうに二口目を食べた。


数秒後、ロジーが小声で言った。


「やっぱり、ほっぺは増量してる」


レトは振り返った。


「ロジー!!」


ロジーは逃げた。


エルはぽつりと言った。


「かわいい増量」


レトは固まった。


「……それなら、いい?」


副長がコーヒーを置いた。


「その判断は保留してください」


ジェレミーは短く言った。


「食べ終わってから考えろ」


レトは元気よく頷いた。


「はい!」


そして、もちふわを最後まで大事に食べた。


一口ごとに、足をぱたぱたさせながら。


「んふふ……」


「んふふふ……」


その日も、監理局は平和だった。


少なくとも、カロリー以外は。



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