第3話. 家族
マルタンは現在の状況を大いに気に入っていた。
邪魔者だった叔父とその家族は正当な過程を経て消え去り、屋敷には一滴の血もついていない。
『待て……家族はまだいるのか?』
残念ながら、叔父はもう息をしていなかった。
死人が答えることはできないのだから、生きている者を探すほかなかった。
叔父の胸に突き刺さっていた剣を引き抜き、屋敷へ向かった。
ぎぃ――
ロベールに剣を持ってきた者が中にいるはずなのに、屋敷は静寂に包まれていた。
『どこだ……』
中央の広間は、その真ん中にある炉の火のおかげで明るく見渡せた。
残る場所は二つ。
片側の端にある領主の部屋と、反対側の端にある倉庫だけだった。
ぎぃ――ガチャッ――
片方を調べている間に相手が逃げるかもしれないため、扉を閉めて閂をかけた。
相手がどれほど素早くとも、閂を外すのにかかるわずかな時間があれば十分だった。
コツ――
まず中央の炉へ行き、火のついた棒を一本拾い上げた。
最低限の視界は確保できたので、捜索を始める番だった。
中を一目で見渡せる領主の部屋から確認することにした。
ぼうっ――
即席の松明を掲げて部屋を照らしたが、人の姿は見えなかった。
これといって隠れられる場所はなかったが、必ず確かめるべき場所が一つあった。
ドンッ――
「うわああっ!」
寝台を蹴り飛ばすと、案の定、その下から反応があった。
続いて、昼間に見た使用人が埃まみれになって寝台の下から這い出してきた。
彼はマルタンを一度見上げると、そのまま平伏した。
「た……助けてください。私は何も見ておりません。」
ただ質問しようとしているだけなのに、なぜこれほど震えているのだろう。
「領主の家族構成を話せ。」
「領主様……領主様とご子息がお二人で全員です。お一人いる娘君は、すでに嫁いでおります。」
生きている男はいないということだった。
幸い、これ以上誰かを殺すべきか悩む必要はなかった。
「屋敷で寝起きしている者は? 私を殺しに来た兵士と、お前だけか?」
「はい。屋敷で働くほかの者たちは、それぞれ別に家を持っております。」
この男の言葉どおりなら、朝までは面倒なことも起きないということだった。
残るのは、領主が自分を殺そうとしたことを証明することだけ。
証人たちも生きており、状況証拠も明白なので、問題になることはなかった。
「朝になったらまた来る。死体はなるべくそのままにしておけ。」
いまだ床に平伏している使用人を残し、屋敷を出た。
ガタッ、ぎぃ――
中庭では、冷たくなりつつある叔父が彼を出迎えた。
もしかすれば、良い関係を築けたかもしれない親族の姿。
おかげで事が簡単になったので、悪感情はなかった。
***
ポワイヤック唯一の司祭、トマ。
彼は早朝から祈祷室で膝をついていた。
コケコッコー――
日の出を告げる鶏の鳴き声。
それを聞いて朝の祈りを終え、立ち上がった。
祈祷室の扉を開けて出ると、礼拝堂の長椅子に見知らぬ者が座っていた。
かなりの長身に、服越しにも分かる引き締まった体格。
髪を短く切っているせいか、ありふれた黒髪であるにもかかわらず、ひどく見慣れない印象を受けた。
「……どなたですか?」
トマはそう尋ねながらも、この男が村人たちの噂していた例の人物だと確信していた。
先代領主の三男。
マルタン。
昨日ここへ到着するや否や、領主と揉め事を起こしたという噂で持ちきりだった。
「司祭が変わったのか?」
マルタンは立ち上がりながら口を開いた。
「ついて来い。君に確認してもらうものがある。」
『……君?』
その無礼な物言いを咎める間もなく、相手は背を向けた。
戦場で傭兵として生きてきたというのだから仕方がないと思い、彼の後についていった。
村外れにある森の入口。
そこへたどり着いたトマは、驚愕した。
「な……何です、これは?」
死体が二つ。
一つは首を斬り落とされ、もう一つは喉に深い傷を負っていた。
彼をここまで連れてきたマルタンが、平然と説明を始めた。
「真夜中に奇襲を受けた。私とピエールがあそこで寝ていたところへ、こいつらが武器を持って近づいてきた。」
奇襲を受けたというマルタンの主張。
トマはひとまず膝をつき、死体を調べ始めた。
「え……?」
この地へ来てまだ数年しか経っていないとはいえ、領主の息子たちを見間違えるはずがなかった。
「領主様のご子息ではありませんか!」
「そうだ。もう違うがな。」
何を言っているのか分からず、相手を見つめた。
「おおよその状況は理解したか?」
突然こんなことを見せられて、理解できるはずがなかった。
「領主様に……領主様にお会いしなければなりません。」
トマは慌てて立ち上がった。
領主の屋敷へ向かおうとした彼を、マルタンが遮った。
「叔父ならすでに死んだ。」
トマは自分の耳を疑った。
「……はい?」
「すでに死んだと言った。死体でも構わないなら、屋敷へ行こう。」
突然領主様が死んだなど。
あり得ない話だと思いながら、急いで歩を進めた。
屋敷を囲む塀の門を開けた後になってようやく、その言葉が事実だと分かった。
「そんな……」
中庭に倒れているのは、紛れもなくこの地の領主、ロベールの死体だった。
呆然と死体を眺めるトマの隣に、マルタンが並んで立った。
「奇襲を仕掛けたのだから、代償を払うべきだろう。私もこうするつもりはなかった。」
何の感情もこもっていない口調。
それにトマは、怒りと恐怖を同時に覚えた。
「こ……これは一体、何をなさったのですか?」
マルタンは不思議そうな表情を浮かべた。
「問題になることはないだろう? そう考えていたのだが。」
「これがどうして問題にならないのですか!」
トマの叫びに、マルタンは理解できないというように眉をひそめた。
「奇襲を実行した者と、それを主導した者を殺してはいけないのか? 細かく言えば、ここでも先に私を攻撃したのは叔父だ。」
相手の攻撃に対する報復なのだから、大義名分がマルタンにあるのは確かだった。
「奇襲に対する正当防衛であれば……」
トマは答えながらも、どこかおかしいと感じた。
奇襲を受けたと主張するマルタン。
彼には何の傷もなく、服にわずかな血がついているだけだった。
「……奇襲が来ると分かっていたのですか?」
マルタンは首を横に振った。
「音を聞いて目を覚ました。ひどい腕前だった。」
その無傷の外見と態度からして、一方的な戦いだったことは明白だった。
「……本当に、この者たちを殺す必要があったのですか?」
「わざわざ生かす必要があったのか? 私の領地を奪って居座った者たちが、私を殺そうとしたのに。なぜだ?」
間違ったことは言っていない。
それでも、これは違うという気がした。
「ほかにもっと良い方法があったのではありませんか?」
「聞かせてもらおう。突然の奇襲に対処する、もっと良い方法とは何だ?」
トマは何も言えなかった。
奇襲を仕掛けた者たちと首謀者を制圧し、おとなしく裁判を待てなどというのは、あまりにも理想論だった。
『なぜ、こんなふうに思うのだろう?』
過ちを犯したのは領主であることに間違いなく、この男の行動を強く責められるものでもなかった。
それでもなぜか、この男の対処はあまりにひどいと思えてならなかった。
トマが考え込んでいる間に、誰かが塀の門を開けて中庭へ入ってきた。
「あら? 朝からこちらで何をなさっているんですか、神父様?」
屋敷の家事を担当する侍女。
彼女は首をかしげながら、トマに尋ねた。
「何でもありません。少し外へ出ていただけませんか?」
「ですが、今日はやることがたくさん……」
侍女は言葉を失った。
中庭を見つめる彼女の視線は、明らかに領主の遺体へ釘付けになっていた。
「りょ……領主様?」
侍女はゆっくりと膝をつき、そのまま地面へ崩れ落ちた。
口を両手で覆い、全身を震わせた。
「こ……これは一体?」
混乱する彼女の後ろから、別の男が現れた。
「何だ、お前どうしてそんなところに……」
新たに現れた男が中庭の死体を発見するまで、さほど時間はかからなかった。
そして噂が広まるのは一瞬だった。
「りょ……領主様がお亡くなりになった!」
農地へ働きに向かっていた者たちまで村へ引き返させるほど、衝撃的な知らせ。
ほどなくして、村中が騒然となった。
そんな混乱の中、マルタンがトマの肩に手を置いた。
「それで、私の行動は問題になるのか、ならないのか?」
原因と結果だけを見て判断すれば、大きな問題はなかった。
トマは正体の分からない拒絶感をできる限り排し、理性的に答えた。
「問題にはならないでしょう。」
それを聞いたマルタンは、親指で背後を指した。
「問題がないのなら、行って落ち着かせろ。皆が混乱しているではないか。」
混乱を引き起こした当人がそんなことを言う。
その皮肉さに、乾いた笑いが漏れた。
そしてトマは、自分がこの男の行動にこれほど拒絶感を抱いた理由に気づいた。
「あなたは……ただ、状況の流れに任せて殺したのですね。」
トマはマルタンと正面から目を合わせた。
「最初から、慈悲をかけるという選択肢がなかったのです。」
マルタンは、奇妙な者を見るような目で彼を見つめた。
「……先ほどは問題ないと言ったではないか。今さら慈悲をかけろと?」
相手は彼の言葉をまるで理解していなかった。
「慈悲をかけろと言っているのではありません。せめて悩むべきだったのです。それが道理というものです。」
これまで、この男の言葉と行動には一切のためらいがなかった。
人の死体を見せながらも、ただ当然の原因と結果を説明しているかのような口調。
何の感情の揺らぎもなく相手を殺したのだろうと、はっきり分かった。
「悩む、か……」
マルタンが低く呟いた。
「人を斬る時に悩むのは悪い癖だ。そんなことをしていたら、私はここにはいなかった。」
「それでも、悩まなければなりません。」
「人を斬るべき時には斬る。それがそんなに難しいことか?」
「主は常に慈悲を施すよう仰せになりました。」
トマの訴えに、マルタンの口元が一瞬歪んだ。
明らかな嘲笑。
すぐに消えはしたが、トマはそれをはっきりと見た。
「一体、何があなたをそこまで――」
トマが言い終えるより先に、マルタンは彼を村人たちの方へ押しやった。
「戯言はいい。行って、君たちの好きな主の子羊たちの面倒でも見ていろ。」
マルタンは淡々とした表情のまま、一度も振り返らず屋敷へ向かった。




