表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶喪失者 異世界へ  作者: Lariru
放穴編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/16

7話 《閑話》 スレイムの独白

綺麗な――刹那の輝きが目に飛び込んだ、ほんの一瞬。

彼の魔力の放出は、空気の流れのように、川の奔流のように見えた。


身体から剣へ、剣から身体へ。

何度も、何度も巡り、回転を繰り返す魔力。

やがてそれは全てを呑み込むような黒から、すべての源を思わせる深い青へ変わっていく。


目の前に待ち構えるのは絶望。

私は固まっていた。

だけどその絶望に抗い、逆転の一手を放とうとする少年の魔力は、爆裂魔法の閃光のように、刹那だが世界を支配するほどに輝いていた。




――私はミリアム家の娘として生まれた。

幼い頃から「家を背負え」と期待され、遊ぶ暇もなく鍛えられた。

友も、恋も、欲しいものも全部切り捨てて、ただ前だけを見てきた。

……そして最後は、身内、仲間に裏切られ、放穴に捨てられた。


必死になっても、結局は捨てられる。

努力は虚しく、私の存在は家を背負うという権利より軽かった――そう思った、その時。


悲しみ、絶望に反応したのか魔力が暴走しだした。

血の匂い、鉄の味。なにかを殺した記憶がうっすら残っている。

体が暖かい熱に包まれ、戻るような感覚を覚えたところで――記憶は途切れた。


次に目を覚ました時、目の前には少年が倒れていた。

周囲に広がる大量の血痕、わからない生物の死骸。

私の体には角と……尻尾? 角と尻尾??!

ちょっと待って!? 尻尾?角?? ……え、いやいやいや……これ笑えないわね....私もうお嫁に行けない。

必死に体を触って確認して……固まってしまった。


それから目覚めた彼と進むことになった、名前は――ななし。

記憶喪失だと後々わかったが、その剣の動きは明らかに素人じゃない。

しかも魔獣の肉を食べても死なないどころか、逆に力に変えるって……普通じゃないでしょ?

あ、でも私も食べられちゃったし……あれ意外に美味しい。今度はもっと美味しい魔獣がいるのか探してみようかしら。

……でもやっぱりおかしい。


黒い魔力。闇属性? 妨害というより、空間そのものをねじ曲げるように見える、もっと特性魔法の勉強しとけばよかった。

だけどやっぱり普通じゃない。


……それでも、確かに助けられたと思う瞬間があった。


かつての私は必死になり、努力して、そして捨てられた。

でもこの少年は裏切らず、手を伸ばしてくれた。

もし「あれは助けられた」と思うなら、私は必ず助ける。

たとえ相手がどれほどおかしくても、怪しくても。


それが私の生き方だ。

「助けられた」と思ったなら、必ず返す。

裏切られて得た答えが、結局これだった。


90階層の前、竜の咆哮が響いた。

肌が震え、背筋を這い上がる恐怖。

それでも剣を握る少年の背を見て、思う。


――やっぱりおかしい子だ。

でも私は裏切らない。必ず助ける。


……それが、私の答えだ。


そう回想を巡らせた瞬間、目の前で少年が崩れ落ちた。

「ななし!」

私は迷わず駆け寄った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ