7話 《閑話》 スレイムの独白
綺麗な――刹那の輝きが目に飛び込んだ、ほんの一瞬。
彼の魔力の放出は、空気の流れのように、川の奔流のように見えた。
身体から剣へ、剣から身体へ。
何度も、何度も巡り、回転を繰り返す魔力。
やがてそれは全てを呑み込むような黒から、すべての源を思わせる深い青へ変わっていく。
目の前に待ち構えるのは絶望。
私は固まっていた。
だけどその絶望に抗い、逆転の一手を放とうとする少年の魔力は、爆裂魔法の閃光のように、刹那だが世界を支配するほどに輝いていた。
――私はミリアム家の娘として生まれた。
幼い頃から「家を背負え」と期待され、遊ぶ暇もなく鍛えられた。
友も、恋も、欲しいものも全部切り捨てて、ただ前だけを見てきた。
……そして最後は、身内、仲間に裏切られ、放穴に捨てられた。
必死になっても、結局は捨てられる。
努力は虚しく、私の存在は家を背負うという権利より軽かった――そう思った、その時。
悲しみ、絶望に反応したのか魔力が暴走しだした。
血の匂い、鉄の味。なにかを殺した記憶がうっすら残っている。
体が暖かい熱に包まれ、戻るような感覚を覚えたところで――記憶は途切れた。
次に目を覚ました時、目の前には少年が倒れていた。
周囲に広がる大量の血痕、わからない生物の死骸。
私の体には角と……尻尾? 角と尻尾??!
ちょっと待って!? 尻尾?角?? ……え、いやいやいや……これ笑えないわね....私もうお嫁に行けない。
必死に体を触って確認して……固まってしまった。
それから目覚めた彼と進むことになった、名前は――ななし。
記憶喪失だと後々わかったが、その剣の動きは明らかに素人じゃない。
しかも魔獣の肉を食べても死なないどころか、逆に力に変えるって……普通じゃないでしょ?
あ、でも私も食べられちゃったし……あれ意外に美味しい。今度はもっと美味しい魔獣がいるのか探してみようかしら。
……でもやっぱりおかしい。
黒い魔力。闇属性? 妨害というより、空間そのものをねじ曲げるように見える、もっと特性魔法の勉強しとけばよかった。
だけどやっぱり普通じゃない。
……それでも、確かに助けられたと思う瞬間があった。
かつての私は必死になり、努力して、そして捨てられた。
でもこの少年は裏切らず、手を伸ばしてくれた。
もし「あれは助けられた」と思うなら、私は必ず助ける。
たとえ相手がどれほどおかしくても、怪しくても。
それが私の生き方だ。
「助けられた」と思ったなら、必ず返す。
裏切られて得た答えが、結局これだった。
90階層の前、竜の咆哮が響いた。
肌が震え、背筋を這い上がる恐怖。
それでも剣を握る少年の背を見て、思う。
――やっぱりおかしい子だ。
でも私は裏切らない。必ず助ける。
……それが、私の答えだ。
そう回想を巡らせた瞬間、目の前で少年が崩れ落ちた。
「ななし!」
私は迷わず駆け寄った。




