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記憶喪失者 異世界へ  作者: Lariru
放穴編

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14/16

14話 目覚めるのはここではない誰か

<反逆者>


何が起こっている?

私は確かに、彼にとどめを刺した――確実にだ。

骨は砕け、再生能力があったとしても時間を要するはずだった。


……なのに。


あの、溢れ出る全てを飲み込むような“黒”。

そして、無に帰すような“鮮血の赤”。

魔力の色が――違う。


この世界の人間は、生まれた瞬間に魔力特性(色)が定まる。

それが彼には……通じないのか。


常識が、崩れる音がした。

ここまでの彼の異常な成長速度、思わず――期待してしまった。



 

<スレイム>


……終わった、はず。

彼の元へ駆けつけようとした、その瞬間。


「さあ、リベンジマッチだよ」


――その声が、空間を震わせた。


耳に届いたのは彼の声。だが、彼の声ではなかった。

寒気が止まらない。

目の前に立つのは、あの竜や狼に立ち向かっていた“彼”ではない。


心が叫んでいた。

――これは、人ではない。




<001>


名無しが必死に戦ってくれたおかげで、

反逆者の戦闘データと経験がすべて流れ込んできた。


魔力を刀に纏わせる技術。

制御不能寸前の半暴走。

そして、再生の理。


この身体の謎……

ようやく、理解できた。


目の前の敵は、殺しても死なない。

ならば――この身体の“最高点”を見せよう。


反逆者の魔力濃度が一気に跳ね上がる。

先程までの戦いが遊びだったと分かる速度で、

幾重にも重なった魔法が押し寄せた。


私は左手を前に出し、魔力を零す。

瞬間――真っ黒な靄が現れ、光さえ飲み込むように攻撃を屈折させ、喰らい尽くした。


相手は驚愕に目を見開いた。

だが、恐怖ではない。理解不能への恐れだ。


私は歩き出す。

一歩、また一歩。


熱が全身を巡る。

右手に魔力を流し込むと、それに応じるように――

遠くに飛ばされていた剣が、吸い寄せられるように手に収まった。


「さあ、楽しく遊ぼう」


久しぶりだ。全力を出せる相手に出会うのは。

この世界の理はまだ分からないが――

私は笑っていた。……たぶん、嬉しそうに。




<反逆者>


再生と“喰らうもの”。

それが彼の能力のはずだ。


……なのに、何をした?

私の魔砲を屈折させ、飲み込んだ?


馬鹿な。覚者何十人分の火力を、どうやって……!?


――面白い。面白すぎる!


全てをぶつけなければ、

この高揚も、私の野望も、成り立たない!


蓄積してきた魔力貯蔵を解放。

<アスモデウス――最終出力形態>。


世界の戦闘史を塗り潰す、一分間を創り出す。


……だがその瞬間。

彼が間合いに入り込んだ。

まるで、空気ごと滑り込むように。


拳。拳が――私の制御核を正確に殴り抜いた。


衝撃が、世界を裏返した。




<スレイム>


そこからの戦いは、圧倒的だった。

ななし(001)は、反逆者の攻撃を受け流すのではなく――“斬り割いていた”。


黒の魔力が溢れるたび、

周囲の瓦礫が浮き上がり、空間が歪む。

剣が、まるで意思を持つように彼の手に張り付く。


あれは……重力?

いや、もっと違う。何か、根源的な“引き寄せ”の力。


本当に――あの子は何なんだ?


そう思った瞬間、

彼の背中に“悲しさ”が見えた。


圧倒的な力を持つ者ほど、孤独だ。

なのに、不思議と――

寄り添って支えたい、そんな背中に見えた。 

最近x(旧Twitter)開店しました


⇒@Lariru20251008


ここに次回予告とか、作品の裏話とか書いてるから覗きに来てねー!

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