13話 限界へ
土煙が立ち込め、反逆者の魔力の塊を斬り切れず、名無し《ななし》はその一部を受けた。
しかし痛みは感じなかった。
(痛覚が……麻痺しているのか?)
そんなことを考えるな。
今、目の前にあるのは――あの狼よりも、竜よりもさらに上の“絶望”。
001に教えてもらったことを反復する。
感情の高ぶりで溢れる魔力を、全神経を使い刀身へ集めろ。
相手に悟らせるな。心は冷たく、無に。
刀身は黒く変わり、すべてを飲み込むような色になっていった。
(よくこの展開まで持ってきた。そこは褒めよう)
(やっと目覚めたのか?)
(目覚めてはいたが、少し集中していた)
(……勝てるのか、これで?)
彼の答えは沈黙のあと――
(お前の行動と経験が勝敗を分ける。今のそれを放て)
張り裂けそうな剣を反逆者へ突きつける。
剣は悲鳴を上げるようにヒビが入り、「パリンッ」と音を立てた。
真っ白な刀身がむき出しになったと同時に、ため込んだ魔力が解放され、魔力で包まれた剣先が伸び、反逆者を貫く。
「ふふふははははは!! やる! 本当にやるね、|名無し!
超越者クラスの攻撃を想定して設計したこの子に、防御態勢まで取らせたってのに……!
あと少し角度が違えば殺せたね。そこはマイナスだ。だが――その攻撃には敬意を表して最大限の攻撃を行う!」
彼の魔力が増幅する。
拳に重なる複数の多重魔法。
それらが彼自身の魔法と重なり、倍速されたような衝撃が走る。
一撃。
|名無しの身体が砕け折れるのを感じながら、ゆっくりと吹き飛んだ。
(あとは何とかする。私の席で見てろ)
そんな心地のいい声を聴きながら、意識は沈んだ。
<スレイム>
決着はいつも一瞬だ。
ななしの伸びる刺突が反逆者の胸に刺さったと思うと、
反逆者の大火力の一撃が彼に当たり、彼が倒れるのが見えた。
どうして彼の事を無理やりにでも止めなかったのであろう
<反逆者>
終わりは悲しいものだ。
だがここから、彼を蘇生し、世界を作り変える新たな一歩を踏み出すのだ――そう思った矢先。
彼から、黒い靄が溢れ出し、砕けた身体はみるみる元の戻り始めた。
だが、先ほどとは濃度が違う。
私は急ぎ魔力を練り上げ、魔砲を放った。
だが靄はすべてを屈折させ、飲み込んだ。
やがてその靄の中心で、誰かが立ち上がる。
空中に浮かびながら、ゆっくりとこちらを見た。
魔力は黒く、そこに鮮血のような赤が混ざっている。
片目が黒く、奥には赤が輝いていた。
「さあ、リベンジマッチだよ」
静かに呟いたその声は――名無しの声であるが名無しのものではない、とても冷めた一言であった。




