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記憶喪失者 異世界へ  作者: Lariru
放穴編

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11/16

11話 -三日後- 幕は上がる

反逆者が姿を消してからの三日間、僕はずっと001に付き合い、

“反逆者”を想定した戦い方を叩き込まれていた。


 あの身体を覆っていた兵装。

 そして魔術――それが彼の戦いの根幹だと仮定し、

 相手の動きを観察して合わせる、“カウンター”のような戦い方を磨いた。


(お前の持っている手札は、先の“咎竜”との戦いで発動した――仮に“魔力半暴走”と呼ぼう。

 あれを制御し、自在に扱えるようにしろ。もしくは新しい技を身につけろ。

 ……だがこの世界の魔力は、私にもまだ理解できない部分がある。何を選ぶ?)


「僕は……やってみる」


 身体の修復が進む中で、001の突貫訓練に必死でついていった。

 気づけば三日が経ち、反逆者が送り込んだ改造魔獣の“案内”によって、

 戦いの場所と時刻が告げられた。


 出発しようとしたそのとき、

 この三日間、一度も姿を見せなかった彼女が、扉の前に立っていた。


「ななし、本当に戦うのか……?」


「うん。そうしないと、僕の“これから”がなくなるからね」


「なにがしたいんだ? 聞いてもいいか?」


 そういえば――僕は彼女に“自分のしたいこと”を話したことがなかった。


「僕は……普通のことがしたいんだ。

 記憶のない僕は、底が抜けた容器みたいなものなんだ。

 記憶が戻るかどうかも分からない。

 だから、いろんなもので心を満たしてみたい。

 簡単に言えば、ただ“生きたい”ってこと。

 誰かと話したり、笑ったり――そんな普通を手に入れたい。

 でも、それを彼は壊そうとしている。

 だったら――誰かに任せて終わるより、僕が止めたい」


「……そうか。そういう気持ちがあるなら止めない。

 けど、命を懸けるのは明らかにやりすぎだ。

 少しは考えて発言をしなさい。……そんな君に、一つ渡すよ」


 そう言うと、彼女の胸の奥からぎこちなく魔力が流れ、

 手のひらに集まっていく。

 そして、彼女は僕の手を握った。


 掌から熱が流れ込む。

 それは――魔法だった。


「この三日間、君に何ができるか考えた。

 戦いも援護も、私は君に敵わない。

 だから、これが私の答えだ」


 彼女の魔力の流れはところどころ詰まり、咳をするように途切れていた。

 無理をしてまで練習したのだと、すぐに分かった。

 魔力神経はもうぼろぼろで、流れは歪に滞っている。


 それでも――

 その想いが、確かに伝わってくる。


 胸の奥が、暖かいもので包まれた。

 理由は分からない。

 けれど、その暖かさだけは確かだった。




 こうして、“曲げられぬ者たち”の戦いが始まる。

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― 新着の感想 ―
拝読いたしました! 暗闇から始まる導入が印象的で、血と静寂の中に“生”への執着が浮かび上がる世界観づくりが秀逸でした。 記憶喪失の少年・ななしが未知の空間をさまよう描写には、恐怖と好奇心のバランスがあ…
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