学校へ行こう4
9月15日、発売!
「転生幼女はあきらめない6巻」
記念ssです。
王都襲撃の後のお話です。
すみませんがなかなか終わりません。
もう少しお付き合い下さい。
先生はマークが話しかけていてこちらに来れずにいるが、さすがに教室の生徒たちも正気に戻ったようだ。
「き、君たち、いったい何をしているの?」
と声をかける勇気ある生徒が現れた。私は大きな丸を書いているので手が離せないが、ニコが律義に椅子の上で振り向くと返事をした。
「うむ。しさつだ」
「いや、落書きしてるよね」
意外と冷静な子がいるものだと思いながら、私は丸の中にサインをした。
「りあ、と」
ニコがそれを見てやれやれという顔をした。
「だからリア、しょうこがのこってしまう」
「証拠も何も、その金色の瞳、王子殿下じゃないの?」
「しまった。なにかかぶってくればよかったか」
慌てて目を手で覆うニコだが、もう遅い。私もやれやれと腕を組んだ。
「にこのめ、めじゅらちいから」
「いや、君もオールバンスだろ。ルーク先輩と同じ目じゃないか」
「むう」
なかなかやる。クリスがお花の絵を描き終わってくるりと振り返った。
「ねえ、じゃあわたしはわかる?」
「君は……、まさかレミントン?」
「せいかーい!」
私たちは椅子の上で揃ってパチパチと手を叩いた。その音に入口の教師がこちらを振り向いてしまった。
「あ、せんせいがこっちにきそうだ。にげろ!」
「あい!」
「ええ!」
とはいえ、椅子を降りるのも慎重にせねばならない。ぴょんと降りたニコとクリスと違い、私はうつぶせになって足から慎重に降りる。ぐふっというくぐもった声が教室に響いた。
「おしりが……、フリフリ……」
「れでぃにおちりとか、しちゅれいでしゅ」
無事椅子から降りた私はピシッと言ってやった。
「そこのきみ。うしろのドアをあけるのだ」
「なんで僕が」
「あけるのだ」
ニコに言われて後ろの席の生徒がしぶしぶとドアを開けてくれたので、すかさず廊下に走り出た。この騒ぎで他の教室のドアも開いている。
「よし! つぎはとなりだ!」
「「おー!」」
そうして傍若無人に3階を走り回った私たちは、教師に追いかけられそうになって階段を二階に走り下りた。
「よい、よいっと」
「しんちょうに、しんちょうに」
ニコが心配そうに見守るが、無理をしてはいけないので当然慎重である。二階に下りてみると、三階の騒ぎが伝わっていないのかドアは閉じてみな静かに勉強しているようだ。
「ドアがあいていないな」
「じゃあ、さくせんその2ね」
「あい。いよいよにいしゃまのところでしゅ」
私たちは重々しく頷くと、スタスタとドアの前に歩み寄った。階段の一番近くの教室だと聞いている。
トントンと、ニコは普通の顔でドアを叩いた。しばらくすると、ドアが内側から開いた。教師は正面を見ていぶかしげな顔をした後、下の私たちを見て後ろに飛びのいた。
「おどろきすぎでしょ」
クリスの指摘がちょっとせつない。私も一言言っておこう。
「ちっかくでしゅ」
「え、な、なんだね。君たちは」
「うむ。しつれいする」
慌てる教師に一言告げると、ニコはそのまま教室にするりと入り込んだ。当然私たちも後ろをついていく。黒板の前で立ち止まって教室を見渡すと、こちらも20人ほどの生徒がびっくりした顔でこちらを見ている。
「ルーク?」
という声と共に何人かが兄さまのほうを見てるが、よい観察力である。ニヤニヤしそうで我慢している兄さまとちょっとだけ目を合わせると、私は素早く余っている椅子を探した。1、2年生の教室ではおあつらえ向きに教室の端に寄せられていたのだ。この教室でもきっと兄さまが取りやすい位置に動かしてくれているに違いなかった。
「あしょこだ!」
「いくわよ!」
「よし!」
私たちは椅子を取りに走り出すと、ギーギーと音を立てて椅子を引きずり、何やら授業の内容が書いてある黒板にいたずら書きを始めた。
「にいしゃま、だいしゅき、っと」
「だからリア、しょうこがのこってしまうぞ」
「じゃあわたしも。姉さま、だいすき」
「わたしはそうだな。キングダムよえいえんなれ、っと」
私はニコが書いているのをじっと眺めた。
「しゅごく、おうじっぽい」
「これもしょうこになるか」
「あい」
ようやっと気を取り直した教師がつかつかと歩み寄ってきたが、その割には腰が引けていて迫力がない。
「君たちはいったいどうしたのだ」
「うむ。しさつだ」
「視察って。そんな話聞いてないし。君たちは子どもだろう。あっ」
先生もニコの目に気づいたようで、また後ろに飛びすさった。
「お、王子殿下? なぜここに」
「うむ。しさつだ」
ニコが眉を上げた。二度も言わせるなと言う迫力がすごい。慌てて目を移動させた教師は私を見てはっとすると、生徒のほうに向き直った。
「る、ルーク。君とそっくりな子がいるがこれはいったい」
「え、やっぱりそっくりですか。私もそう思うんですが、先生に言われると嬉しいものですね」
兄さまが照れていてかわいい。
「いや、そういうことではなく」
「ええ、妹です。どうしてここにいるんだろうなあ」
兄さまはとてもしらじらしくそう答えている。
「君の妹なら、なんとかしたまえ」
「でも、学校に入って来た不審者は先生の担当ですし。生徒は何もせずにおとなしくしていればいいと言われたばかりなので」
兄さまは落ち着いて肩をすくめた。つまり、最近生徒は勝手なことをするなと厳しく言われているということなのだろう。
「自分勝手なことはしたくないんです」
「それとこれとは」
「にいしゃま!」
私は先生の話の間にそっと椅子を降りて、先生の話をさえぎるように兄さまの席まで走って抱っこしてもらった。
「リア! いけませんよ」
いけませんよと言う割に顔がニコニコしているけれど、いいのかな?
「今日はどうしたのですか」
「まーくときたの」
「マーク? マーカス・モールゼイですか」
「あい。がくいんをみにきまちた」
わかっていることなのに、わざと皆に聞かせているこの会話で、四侯のマークが来ているとわかった教室の生徒はざわざわし始めた。
「やあやあ、子どもたちが急に走りだしてしまって申し訳ないね。みんなちゃんと勉強はしているかい?」
よいタイミングでマークがにこやかに顔を出した。
「ええ、さっきまでは」
勇気ある生徒がマークに答えている。なかなかよい。
「にいしゃま、おりりゅ」
「いいですけど。はい」
「あい。うちろ。どああけて」
「ドアですか、いいですよ」
兄さまがさっさとドアを開けてくれた。
「よち、にげろ!」
「「おー!」」
私たちは風のように教室を走り去った。
「ああー、リアー、待ってくださいー。一人では大変だなあー」
今一つ演技力のない兄さまが追いかけてくる中、階段を一階まで駆け下りた。兄さまにつられて、数人の生徒が教室を出てくるのが見えた。
「つぎはギル兄さまのところよ!」
張り切るクリスの後に続く私たちなのだった。
「転生幼女6巻」について、書影、特典情報等、活動報告に上げてあります。
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また、「異世界でのんびり癒し手はじめます」コミックス2巻が9月17日に発売です!




