学校へ行こう3
9月15日、本日発売!
「転生幼女はあきらめない6巻」
記念ssです。
王都襲撃の後のお話です。
明日、もしかしたら明後日まで更新
よかったらお楽しみください。
週末のお休みが明けた日は、私たち子ども組が何をするか決める番だ。
「なにをするかきめるとはどういうことだ。われらはけんがくにいくのだぞ」
「ちがいましゅ」
相変わらず真面目なニコに、私は首を横に振ってみせた。
「こないだ、がくいんもおしょわれまちた」
「ルークとギルがうまくにげたという、あれだな」
「そうでしゅ」
私は一生懸命説明した。クリスには週末に説明済みなので、隣で当然よという顔で頷いている。
「がくいんが、どうかわったかを、みにいきましゅ。ちゅまり」
「つまり?」
「みりゅだけじゃ、だめ。じけんを、おこしゅ」
「そんなことをしたらめいわくだろう」
ニコがあきれているが、そこが大事なのである。
「ひじょうじに、どうしゅるか、だいじ」
「ううむ。つまり、われらがおもいがけないことをして、がくいんを、ためす。そういうことか」
やっとやる気を見せたニコに、私は重々しく頷いた。
「あい。しょれががくいんのためになりゅ」
「ブッフォ」
はいそこ、好き勝手したいだけの言い訳だろうという目で見てはいけない。あくまで抜き打ちの視察なのだから。
「まーくをおとりに、にこ、くりしゅ、りあではちりまわる。しょちて」
私はニヤリとし、皆を集めた。こそこそと相談する幼児三人を、ハンスとナタリーが温かい目で見てくれていたが、ニコの護衛は不安そうだったのはちょっと情けない。決行は明日。準備にぬかりがあってはならない。そういえば当初は学院に行って兄さまを見ることが目的だったような気がするが、いつの間にか目的が違っているような気がしないでもない。だが走り出したら止められないのである。
そして次の日。私たちはいつものように城に集合した。いつもと違うのは、朝からマークがいることである。しかも髪を後ろになでつけて、正装に近い格好をしている。とはいえ私たちも、いつもよりおしゃれをして、いかにも貴族の子供という格好である。
「くりしゅ、ずぼんは?」
「スカートのなかよ。ほら」
クリスがふわりとしたスカートを持ち上げてみせた。
「クリス! レディがそのようなことをするものではない」
ニコが苦言を呈したが、私はうむと頷いた。
「ごうかくでしゅ!」
「リアもじゅんびはできているわね」
「あい!」
私の場合はスカートを上げるも何も、短めのスカートにフリフリのカボチャパンツをはかせられている。
「こういう時のためにご用意しておりました」
と屋敷の衣装係が言っていたが、どういう時を想定していたのか小一時間問いただしたいのを我慢した私、えらい。
「ニコ殿下のお父上がイースターに行っていて助かったよ。許可を取る必要がなくてさ」
「まーく……」
よく考えたら、ランバート殿下はイースターで一生懸命働いているのだった。
「さあ、じゃあ、抜き打ちで学院見学だ。皆、竜車に乗り込め!」
「「「おー!」」」
気合とは別に、足置き台を用意してもらったり抱っこされたりして竜車に乗り込む間抜けな私たちである。小さいから仕方がない。
竜車には家族としか乗ったことがないから、友だちと乗る竜車はとても楽しい。窓から町を眺めておしゃべりをしていると、城の近くの学院にはあっという間にたどり着いてしまった。いつも勉強している図書室から城の門までのほうが遠かったくらいだ。
「さあ、着いたよ」
マークの声に窓の外を見ると、学院はさすがにオールバンスの屋敷より大きかった。三階建ての建物には、大きめの窓が整然と並んでいる。町の中心部にあるせいか、建物の大きさの割に敷地が狭いような気がするが、建物は広い中庭を囲うように作られており、生徒たちはそこで運動したりするらしいと兄さまに聞いた。
手前はずーっと塀で囲まれており、竜車がすれ違えるほどの広さの門は今は閉じられ、守衛と思われる人たちが二人立っている。門のすぐ横には新しい小屋が建っているが、警備の人たちの部屋だろうか。
止まった竜車に守衛の声がかかった。
「名のられよ」
御者が答える前に、一瞬愉快そうな顔をしたマークが竜車から降りていった。
「ああ、すまないね。私はマーカス・モールゼイだ」
「はあ?」
明らかに胡散臭いと思っている声だが、マークの灰色の髪と冬雲の瞳を見て取ったのだろう。急に緊張した気配が伝わって来た。
「は。その。四侯の?」
「他にもモールゼイが?」
マークが眉を上げている様子が目に浮かぶ。
「いえ。では、マーク様。いかがされました」
「学院に用がある。入れてくれ」
「はっ」
ガラガラと門の開く音がし、マークが戻って来た。私は首を振った。
「ちっかくでしゅ」
「そうだな。たとえ四侯といえど、何の用があるのか聞くべきだったし、竜車の中の同乗者を確認すべきだったな」
マークも少し苦い顔だ。確かに重そうな門が閉まっているから、こないだのようにラグ竜の群れに押し切られることはないかもしれない。しかし、誰かが四侯をかたって門を開けさせられたら、ひとたまりもないだろう。竜車に乗ったまま学院の入口に着いてしまった。
「生徒たちはこの入口から学院に入る。客は生徒と同じ入り口か、あるいは向こうの客用の入口から入るのだが、これは……」
「わりゅいやつ、しゅぐたてものにはいれりゅ」
マークからふざけた様子がなくなった。
「五年前、私が通っていた時と変わりない。当たり前と言えば当たり前だが、これは学院の努力だけではどうしようもない問題だな。王都の中のことはモールゼイの管轄でもある。遊びの視察では済まされなくなってきた」
「まーく、とまって」
マークは合図して竜車を止めた。
「このまま教員棟に行こうと思っていたけれど」
「ここからはいりましゅ」
マークがにやりとした。
「そうだな。最初から抜き打ちの予定だものな。わかった」
私たちは生徒用の入口で竜車を降りた。それを見てもう一台の竜車から護衛がわらわらと降りてきた。
「こちらから入る。ではまず三階の1、2年生の教室からだな」
私たちは列になってざっざっと廊下を歩き始め、きゃあきゃあ騒ぎながら階段を三階まで上がった。上がった途端教室のドアが開いた。
「君たち、授業中だぞ。移動は静かに。なんだ、客人か? 客人ならまず向こうの教員棟に行きなさい」
まずマークを見、私たちのところで目を見開き、そして後ろの護衛を見た先生はそう注意した。私は肩を落とした。私たちが悪い人たちだったらどうするのだ。
「ちっかくでしゅ」
「はあ? ちっかく?」
ドアの取っ手を持ったままの教師がぽかんと口を開けた。それを見たニコが片手を上げて、下ろした。
「よし、いくぞ」
「ええ!」
「あい!」
私たちはわーっと声を上げながら教師の足元を駆け抜け教室に侵入した。
「わあ」
20人ほどだろうか。長い机に二人ずつ、兄さまより少し幼い感じの生徒が座って呆気にとられたようにこちらを見ている。
「もくひょう! こくばん!」
ニコの声と共に、余っている椅子を引きずってくると私たちは黒板に落書きを始めた。
「りあ、さんじょう、っと」
手を伸ばしてなるべく大きく書く。
「リア、しょうこをのこしてもいいのか」
「だめでちた!」
「わたしはお花をかくわ」
「わたしはらぐりゅうだな」
こうして抜き打ちの視察は幕を開けた。
「転生幼女6巻」について、書影、特典情報等、活動報告に上げてあります。
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また、「異世界でのんびり癒し手はじめます」コミックス2巻が9月17日に発売です!




