学校へ行こう5
9月15日、発売!
「転生幼女はあきらめない6巻」
記念ssです。
王都襲撃の後のお話です。
明日には終わりそう。
もう少しお付き合い下さい。
一階は5、6年生の勉強する階だ。さすが上級生と言うべきか、先生ではなく生徒が廊下に出てきていた。上級生が自由だからかもしれないが。
「おや、なにか騒がしいと思ったら、ちびっ子たちがいる。珍しいな」
そのうちの一人が近寄ってきたが、ギルと同じように身長だけなら大人と同じくらいある。兄さまたちで慣れている私でも、そんな生徒たちに囲まれたら正直ちょっとばかり怖い気もする。
「待てよ。これ、ルークと同じ。っていうか王子殿下? それに、フェリシアさんと同じ……」
基本呼び捨てのこの国でなぜフェリシアだけ「さん」がつくのか気になるところだったが、今はそれを追及している場合ではない。
焦る私とは別に、ニコは堂々としたものだ。
「うむ。こちらはクリス・レミントンである。私はニコラス・キングダム。こっちはリーリア・オールバンス。きょうはしさつにきた」
「そ、そうですか。それはおつかれさまです」
「うむ」
さすがに上級生になると身分というものに敏感である。そのままさりげなく教室に入ろうとしたら、階段を駆け下りてきた生徒から声がかかった。
「ああ先輩! その子たちを捕まえてください!」
「え? なんでだ?」
「その子たち、あっちこっちで落書きして回ってるんです!」
なぜ真実に気が付いたのだ。
「はしれ!」
「「おー!」」
ニコの掛け声とともにギルの教室めがけて走り出した私たちだが、私だけ前に進めない。
「ありぇ?」
「はい。捕獲」
どうやら少しだけ足の遅い私が捕まってしまったらしい。
「リア!」
「しゃきにいって!」
ニコとクリスは一瞬迷うそぶりを見せたが、事前の打ち合わせの通りギルの教室へと入っていった。誰かが捕まっても、残りは使命を果たすと誓い合ったのだ。
「あーあー、この子ルークの妹か。ルークもかわいいけど、この子もかわいいなあ」
「しょのはなち、くわちく。にいしゃま、かわいい?」
私は捕まったままくるりと振り向いた。
「詳しく? 小さいのに難しい言葉を使うなあ。ルークのことが聞きたいのか?」
「あい! にいしゃまだいしゅき!」
周りの生徒たちがああとか、ううとかうめいているが大丈夫だろうか。
「ルークはな、しっかりしているけどなにしろあの見た目だろう。下手な女の子よりかわいいのに、あのつれない感じが上級生に人気でさ。それこそ男子女子問わず。ひそかにファンクラブが」
「先輩」
「げ」
見上げると兄さまが腕を組んで立ち尽くしている。
「私の妹に何を吹き込んでいるのです?」
「いや、ルークのこと聞きたいっていうからさ」
上級生は私からパッと手を離して体の前でまあまあとなだめるようなしぐさをした。このまま兄さまの話を聞きたい気持ちはやまやまだが、このチャンスを逃してはいけない。
「しょれ!」
私は風のように走り出し、ギルの教室に滑り込んだ。入るとすぐにニヤニヤするギルと目が合ったが、落書きをしているはずのニコとクリスの前には、先ほど階段で声をかけた下級生がいて、どうやらいたずらを止められているらしい。
「君たち、王子と四侯の血筋だからといって、授業の邪魔をしてはいけないよ。僕らが勉強する黒板に落書きするなんてもってのほかだよ」
なんていい子なのだ。3階の教室でニコの正体に気が付いた生徒に違いない。
「さ、いい子だから、モールゼイの人と一緒に帰るんだ」
上級生も教師も何も言えないでいるというのに、きちんとやるべきことはやる。私は心の中で拍手を送った。
「あれは今年入ったレミントンの一族ですね。なかなかいい人材です」
兄さまがいつの間にか後ろに来ていて、小さな声でつぶやいた。
「おまえ、なかなかいいことをいうな」
ニコも腕を組んでうむと頷いている。
「おとながとめられなかったなかで、きちんというべきことをいう。すばらしい」
「君、何を言っているの? いたずらはいけないよっていう話をしているんだよ?」
ニコにもひるまないその態度、素晴らしい。
「ごうかくでしゅ!」
大きな声を出した私のほうに、みんな驚いたように振り返った。その隙にニヤニヤしながら座っていたギルが立ちあがり、窓のほうに移動する。
「うむ。ごうかくだが、われらがここにきたのは、らくがきのためではない」
「じゃあいったい」
ニコとクリスが私のほうを見た。私は大きく頷いた。
そして一斉に窓のほうに走り出した。
「ほうらニコ殿下っと」
「おう!」
ギルがニコを抱えて窓の外に放り出したように見えた。
「ああ! ギル! なにをする! やめろ!」
教室の生徒たちがガタガタと椅子を鳴らして立ちあがったが、もう遅い。
「次はクリス!」
「はい!」
「かわいいなあ、クリスは」
それは今言うべきことではない。
「そしてリア」
「あい!」
ぐいっと持ち上げられた私は、窓の外に控えていた護衛に手渡された。私にもかわいいというべきだと思う。それはそれとして、教室の誰も窓の外の護衛にも気が付いていなかった。
「ここも、ちっかく!」
叫んだ私は、皆に続いて生垣に向かって走り出した。ギルによると、そこに学院の一番小さい生徒が抜け出せるくらいの隙間があるのだという。
「リア、クリス、ここだ」
しゃがみこむと確かに小さな隙間がある。
「まずいわ。まどからつぎつぎに人が出てきたわ」
クリスが後ろを確認して慌てた声を出した。
「よし、リア」
「あい!」
足手まといは一番にいなくなるべきだ。私は素直に返事をして動き出した。
「そしてクリス」
「ニコ……」
心配そうなクリスにニコはにっと笑ってみせた。
「うしろはまかせろ」
「ええ!」
四つんばいで生垣をハイハイしていくと、幼児には十分な広さだ。生垣、塀の隙間と順番に通り抜けると、そこは竜車で通って来た道だった。そして護衛が何人か待ち構えていた。
「はんす」
「はい。がんばりましたねえ。蜘蛛の巣だらけだ」
ハンスは手を伸ばすと、私の髪の毛についている蜘蛛の巣や砂ぼこりを払った。後ろからクリスとニコが出てきているがお構いなしである。いや、そうでもない。
「ニコラス殿下、しんがりを務められましたか。さすがです」
「うむ。わたしがふたりをまもらねばならぬからな」
「ご立派でした」
珍しく褒めている。
「今から育てておかねえとリア様が苦労するからな」
「はんす……」
塀の向こうは今ごろ大騒ぎだろう。さて、これからどうなることやら。
「転生幼女6巻」について、書影、特典情報等、活動報告に上げてあります。
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また、「異世界でのんびり癒し手はじめます」コミックス2巻が9月17日に発売です!




