第二話
「……小林さんって、どうして写真を撮ってるの?」
「どうして、か。背景が見える気がするからかな」
少し真剣な顔つきになって彼女が答えた。
「背景?」
意味がよくわからず、つい聞き返す。
「そう。カメラを通すと、人とか景色の細かい部分が見える気がするの」
「へぇ」
「私、そういうの考えるの好きなんだぁ」
「そう、なんだ」
「あはは!まぁ、一人で突っ走りすぎて怒られちゃうことたくさんあるけどね。」
「ふふっ、そう」
「ねえ、もしよかったら、写真撮りに行かない?」
「……少しなら」
もう一度だけ、カメラを通して世界を見たいと思った。
「やったぁ!じゃあ、屋上行こ!」
「うん」
「あ、もしかしたら先客がいるかもしれないけどね」
「先客?」
「そっ、三年の先輩なんだけど、あの人景色好きだから」
「そうなんだ」
廊下はがらんとしていて、でも、微かに運動部の掛け声や楽器の音が聞こえてきた。なんとなくカメラに手を添える。
「もしかして、写真撮りたい?」
その一瞬の仕草に、彼女が反応した。
「え、いや、なんか、カメラ通してみたいなって思って」
「いいじゃん!見てみなよ」
「うん」
少し躊躇いながらカメラを目の前に構えた。ファインダーの向こうに広がった廊下は、西陽に照らされていた。
「……綺麗」
かしゃっ
思わずシャッターを押した。シャッター音が廊下によく響いた。
「どんなの撮れた?」
カメラを下ろした瞬間、こちらにずいっと距離を縮めてきた彼女に、半歩下がりながらカメラを差し出した。
「えっと、これ」
「おお!いいね!私も撮ったよ」
「何を?」
「これ!」
「……私?」
「そう!いまの表情めっちゃよかったからつい」
「……」
つい目線が下がる。
「あ、嫌だった?」
「今は気づかなかったから、別に。でも、やっぱり、写真撮られるのは、ちょっと」
「そっか。いい表情だったと思うんだけどなぁ」
カメラを持つ手に自然と力が入ってしまう。
「とりあえず、屋上行こっか!」
「……うん」
なんとか笑いながらそう答えた。




