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星屑の魔法ときみの名前  作者: 星恋


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星屑の魔法ときみの名前9

誰かを好きになる瞬間は、案外ゆっくりやってくる。


 気づけば隣にいて。


 気づけば触れることが当たり前になっていて。


 そしてある日、

 もう戻れないところまで来ていたことを知る。


 曖昧だった距離は、少しずつ熱を持ち始める。


 これは、“特別”という言葉では隠しきれなくなったふたりが、

 ついに本当の気持ちへ触れてしまう夜の話。

 嫉妬される、というのは。


 思っていたよりずっと――心臓に悪い。


 


 あの日から。


 レイナの距離は、さらに遠慮がなくなった。


「ユイ」


 呼ばれる。


 振り向く前に、手を取られる。


 もう自然すぎて、周囲もあまり驚かなくなっていた。


 


「……最近、隠す気なくない?」


「何を」


「その距離感」


「今さら隠す必要ある?」


 さらっと言う。


 でも。


 絡んだ指は、前より少しだけ強い。


 


「……レイナ」


「なに」


「今日なんか機嫌いい?」


「いいわよ」


 即答。


「あなたがちゃんと私のとこ戻ってくるから」


 


 どくん。


 


 またそういうこと言う。


 


「……戻るって何」


「言葉通り」


 少しだけ笑う。


 でも、その目は本気だった。


 



 その日の夜。


 中庭には、いつもより濃い星屑が降っていた。


 空が近い。


 触れられそうなくらい。


 


「今日は魔力が安定してる」


 レイナが空を見上げながら言う。


「こういう日は、感情も星屑に影響しやすい」


「感情?」


「ええ」


 


 ちら、と視線が向く。


 


「だから今、すごく光ってる」


「……どれが?」


「あなた」


 


 心臓が止まりそうになる。


 


「な、なにそれ」


「そのままの意味」


 


 レイナが近づく。


 一歩。


 また一歩。


 


「ユイ」


「……なに」


「今、すごく可愛い顔してる」


「やめて」


「やめない」


 


 逃げたい。


 でも逃げたくない。


 


 そのまま、背中が柱に触れる。


 追い込まれた。


 


「……レイナ、近い」


「知ってる」


「絶対わざとでしょ」


「もちろん」


 


 否定しない。


 むしろ開き直ってる。


 



 ふわり、と。


 星屑が、私たちの周りを漂う。


 淡い光。


 揺れる空気。


 


 その中で。


 


 レイナの指が、そっと頬に触れた。


 


「……ねえ」


「なに」


「まだ、逃げる?」


 


 低い声。


 優しいのに、熱がある。


 


「……逃げない」


 答えると、


 レイナが少しだけ息を呑んだ。


 


「……ほんと、ずるい」


「レイナに言われたくない」


「それもそう」


 


 小さく笑う。


 でも、距離は変わらない。


 


 むしろ。


 


 さらに近づく。


 


「ユイ」


「……なに」


「今からすること、嫌なら止めて」


 


 一瞬で、空気が変わる。


 


 冗談じゃない。


 本気だ。


 


 喉が、熱い。


 


「……止めない」


 


 言った瞬間。


 


 レイナの瞳が揺れた。


 


 綺麗だった。


 夜空みたいに。


 



 ゆっくり。


 本当にゆっくり。


 


 顔が近づく。


 


 呼吸が混ざる。


 


 あと少し。


 本当に、あと少しで――


 


「……っ」


 


 耐えきれなくなって、目を閉じる。


 


 すると。


 


 ふ、と。


 


 唇のすぐ横に、柔らかい感触。


 


「……え」


 


 目を開ける。


 


 レイナが、すぐ近くで笑っていた。


 


「っ……今!」


「キスじゃない」


「いや近かったでしょ!?」


「近づけた」


 


 絶対楽しんでる。


 


 でも。


 レイナの耳も少し赤かった。


 


「……レイナ」


「なに」


「ずるい」


「知ってる」


 


 またそれ。


 


 悔しくて。


 でも。


 


 嬉しい。


 



 そのとき。


 


 突然、星屑が強く輝いた。


 


「……っ!?」


 


 光が、ふたりの間に集まっていく。


 


 まるで感情に反応するみたいに。


 


「これ……」


「共鳴してる」


 レイナが小さく呟く。


 


「共鳴?」


「強い感情同士が触れたときに起こる現象」


 


 淡い光が、指先を包む。


 熱い。


 でも怖くない。


 


「……初めて見た」


「私も」


 


 レイナが、ゆっくり私を見る。


 


 その目が、あまりにも真っ直ぐで。


 


「ユイ」


「なに」


 


「たぶん、もう隠せない」


 


 どくん。


 


「……何を」


 


 一瞬、沈黙。


 


 それから。


 


「好き」


 


 世界が止まる。


 


 星屑が、揺れる。


 


 呼吸も。


 心臓も。


 


 全部、止まりそうだった。


 


「……え」


 


 間抜けな声しか出ない。


 


 でも。


 レイナは逸らさない。


 


「あなたが好き」


 


 もう一度。


 今度は、はっきり。


 


 胸が熱い。


 


 苦しいくらい。


 


 なのに。


 どうしようもなく嬉しい。


 


「……ユイは?」


 


 逃げ道のない問い。


 


 でも。


 


 逃げたくない。


 


「……私も」


 


 声が震える。


 


「レイナのこと、好き」


 


 一瞬。


 


 レイナの表情が崩れた。


 


 初めて見る顔。


 


 安心したみたいに。


 嬉しそうに。


 少しだけ泣きそうな顔。


 


「……ほんとに?」


「何回言わせるの」


 


 言った瞬間。


 


 ぎゅっと抱きしめられる。


 


「っ……!」


 


 今までで、一番強く。


 


「……無理」


「なにが」


「嬉しすぎる」


 


 そんなこと言うレイナ、反則だ。


 


 星屑が舞う。


 


 祝福みたいに。


 


 そして。


 


 抱きしめられたまま。


 


 レイナが、そっと囁く。


 


「……次は、ちゃんとする」


 


 耳元で落ちたその言葉に。


 


 また、心臓が壊れそうになる。


 



 夜空から、星が落ちてくる。


 


 でも今は。


 


 その光よりも。


 


 隣にいる人のほうが、ずっと眩しかった。

ここまで読んでくれてありがとう。


 第9話では、ついにユイとレイナがお互いの気持ちを言葉にしました。


 ここまで長かったようで、

 ふたりにとっては一瞬だったのかもしれません。


 手を繋ぐことから始まって、

 距離が近づいて、

 触れる理由が増えて、

 嫉妬が生まれて。


 そしてようやく、「好き」という言葉に辿り着いた。


 でも、この関係はまだ完成していません。


 むしろここからが始まりです。


 想いが通じ合ったあと、

 人はもっと欲張りになる。


 もっと触れたい。

 もっと知りたい。

 もっと独り占めしたい。


 そういう感情が、

 これからふたりをさらに変えていきます。


 今回登場した“共鳴”は、

 星屑の魔法が感情そのものに反応している証でもあります。


 つまりこの世界では、

 恋心は隠そうとしても光になって溢れてしまう。


 だからこそ、

 ふたりはもう誤魔化せない。


 次に訪れるのは、

 「好き」のその先。


 触れるだけじゃ足りなくなった距離で、

 ふたりが何を選ぶのか。


 もう少しだけ、

 星屑の夜に付き合ってもらえたら嬉しいです

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