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星屑の魔法ときみの名前  作者: 星恋 hosiko


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星屑の魔法ときみの名前20

『星屑の魔法と、きみの名前』第20話


 次の日。


 私は人生で初めて、

 “キスの次の日”というものを経験していた。


 ……無理。


 無理すぎる。


 顔を合わせられない。


 だって昨日。


 本棚の奥で。


 レイナに抱きしめられて。


 キスされて。


 「理性が無理」とか言われて。


 思い出しただけで、

 頭が爆発しそうになる。


「ユイ、聞いてる?」


「へっ!?!?」


 びくっと肩が跳ねる。


 教室中の視線が集まった。


「……お前今日ずっと変だぞ」


 クラスメイトが呆れた顔をする。


「べ、別に普通だし!」


「普通の人はノート上下逆に書かない」


「……え?」


 見た。


 本当に逆だった。


 終わった。


 人生が。


 そのとき。


 くすっ、と小さな笑い声。


 窓際。


 頬杖をついたレイナが、

 完全に楽しそうな顔でこっちを見ていた。


 目が合う。


 途端に、

 にや、と口元が上がる。


 絶対わざと。


 昨日のこと、

 思い出させにきてる。


 放課後。


 逃げるように教室を出た。


 なのに。


「ユイ」


 捕まった。


「っ……!」


 腕を引かれて、

 人気のない廊下へ連れていかれる。


「なんで逃げるの」


「逃げてない!」


「じゃあなんで私見ないの?」


 図星。


 というか、

 見れるわけない。


「……レイナが悪い」


「私?」


「昨日あんなことするから」


 言った瞬間。


 レイナの目が、

 細くなる。


「“あんなこと”って?」


「っ……!」


 わざとだ。


 絶対わざと。


「言わせないでよ!」


「聞きたい」


「最悪……」


 顔が熱い。


 たぶん今、

 星屑みたいに発光してる。


 レイナが、

 一歩近づく。


 壁際まで追い込まれる。


「ねえ」


「……なに」


「昨日、嫌だった?」


 その声だけ、

 少し真面目だった。


 からかいじゃない。


 ちゃんと、

 答えを待ってる声。


 「……嫌じゃない」


 小さく答える。


 すると。


 レイナが、

 ほんの少しだけ安心したみたいに息を吐いた。


「よかった」


 その顔見たら、

 もう逃げられない。


「でも」


「?」


「今日は、私の番」


「……え?」


 意味を理解する前に。


 ぐいっと、

 制服を掴んだ。


 今度は私から。


 レイナの目が、

 わずかに見開かれる。


「ユイ?」


「……昨日ばっかりずるい」


 言いながら、

 自分でも何してるかわからない。


 でも。


 止まりたくなかった。


「だから」


 背伸びをする。


 近づく距離。


 触れそうな呼吸。


「今日は、私からする」


 一瞬。


 本当に、

 一瞬だけ。


 レイナが固まった。


 珍しい。


 初めて見る顔。


「……それ、本気?」


「今さら聞く?」


 言い返した瞬間。


 レイナが、

 片手で顔を覆った。


「……無理」


「え!?」


「かわいすぎる」


「なっ……!」


 結局こっちが照れる。


 悔しい。


 でも。


 次の瞬間。


 その手が、

 ゆっくり私の頬に触れた。


「じゃあ、お願い」


 低い声。


 熱っぽい瞳。


 完全に反則。


 でも。


 もう逃げない。


 そっと近づく。


 心臓がうるさい。


 息が震える。


 そして。


 今度は私から、

 唇に触れた。


 一瞬だけ。


 本当に軽く。


 離れようとした瞬間。


 腕を引かれる。


「っ……!」


 そのまま、

 もう一度キスされた。


 さっきより深く。


 甘く。


 逃がさないみたいに。


「れ、いな……」


「それは反則」


 額が触れる距離で、

 レイナが囁く。


「自分から来るなんて聞いてない」


「……知らない」


「理性、飛ぶ」


 危ない声だった。


 その瞬間。


 ふわあっ、と。


 星屑が、

 一気に舞い上がる。


 廊下いっぱいに広がる、

 銀色の光。


「……わ」


「ほんと、わかりやすい魔法」


 レイナが笑う。


 でもその手は、

 しっかり私を抱き寄せたまま。


「ねえユイ」


「なに」


「もう、手繋ぐだけじゃ足りない」


 どくん。


 耳元で、

 静かに囁かれる。


「もっと、欲しくなる」


 その言葉に。


 心臓まで、

 星屑みたいに弾けた。

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