星屑の魔法ときみの名前
恋ってたぶん、
隠そうとするほど溢れてしまう。
視線とか。
触れ方とか。
名前を呼ぶ声とか。
本人たちは普通にしているつもりでも、
好きって感情は、
魔法みたいに周りへ漏れていく。
第21話は、
そんな“感情の共鳴”をテーマにした回です。
キスを重ねるたび、
距離が近づくたび、
星屑まで反応してしまうふたり。
恋と魔法が混ざり始めた夜を、
楽しんでもらえたら嬉しいです。
それから数日。
学園では、
妙な噂が流れていた。
「最近、夜の星屑が不安定らしい」
「感情魔力の影響じゃない?」
「誰かが強く共鳴してるとか……」
私は、
その話を聞いた瞬間。
ものすごく嫌な予感がした。
「……レイナ」
「なに」
「心当たりある?」
昼休み。
中庭のベンチで聞くと、
レイナは紅茶を飲みながら普通に答えた。
「ある」
「あるんだ」
即答だった。
「たぶん私たち」
「やっぱり!?」
「最近、ユイ見るたび魔力揺れるし」
「知らないよそんなの!」
「私は知ってる」
平然としてる。
この人、
絶対楽しんでる。
そのとき。
ふわっ、と。
私たちの周りで、
星屑が淡く浮かび上がった。
「ほら」
「ほらじゃない!」
周囲の生徒たちがざわつき始める。
「また光ってる……」
「ほんとにあの二人何者?」
無理。
恥ずかしすぎる。
すると。
レイナが、
そっと私の手を握った。
「っ……!」
「落ち着いて」
「これで!?」
「かわいい」
「うるさい……!」
でも。
絡んだ指から伝わる熱で、
少しだけ呼吸が落ち着く。
悔しい。
その日の夜。
私はレイナに呼び出され、
学園の屋上へ来ていた。
夜風。
静かな空。
降り続ける星屑。
そして。
やっぱり、
レイナは綺麗だった。
「……何見てるの」
「えっ」
「さっきからずっと」
ばれてた。
「……別に」
「嘘」
レイナが近づく。
一歩。
また一歩。
「最近ユイ、すぐ顔に出る」
「レイナのせいなんだけど」
「嬉しい」
即答。
ずるい。
屋上のフェンスへ背中が触れる。
逃げ場がない。
でも。
前みたいな“怖さ”は、
もうほとんどなかった。
「ねえ、ユイ」
「……なに」
「この前の続き、してもいい?」
どくん。
低い声。
熱っぽい瞳。
わかってる。
“続き”が何かなんて。
「……うん」
頷いた瞬間。
レイナが、
少しだけ息を呑んだ。
その反応だけで、
胸が苦しくなる。
指が頬に触れる。
優しい。
大事なものを触るみたいに。
そのまま、
ゆっくり顔が近づく。
唇が重なる。
柔らかい熱。
触れるだけじゃない。
前より深く。
甘く。
「……っ」
呼吸が揺れる。
指先まで熱い。
頭がぼんやりする。
離れたと思った瞬間。
また触れられた。
「れい、な……」
「まだ足りない」
かすれた声。
いつもの余裕が、
少しだけ崩れている。
その瞬間。
どくん、と。
胸の奥で、
魔力が跳ねた。
ふわあっ――
大量の星屑が、
一気に空へ舞い上がる。
「……わっ!?」
銀色の光が、
夜空いっぱいに広がった。
まるで、
星そのものが爆発したみたいに。
「……すご」
呆然と呟く。
すると。
隣で、
レイナが小さく笑った。
「だから言ったでしょ」
「え?」
「ユイといると、魔力おかしくなる」
その言い方が、
あまりにも自然で。
胸が熱くなる。
「……私も」
「ん?」
「レイナといると、変になる」
一瞬。
レイナが黙った。
それから。
困ったみたいに笑う。
「……それ、かなり危険な告白」
「今さらじゃない?」
「確かに」
くすっと笑う声。
でも。
次の瞬間。
ぎゅっと、
強く抱きしめられた。
「……ほんと無理」
「また理性?」
「もう半分くらいない」
「大丈夫なのそれ」
「ユイがかわいすぎるから無理」
顔が熱い。
でも。
離れたくない。
だから。
そっと、
レイナの背中へ腕を回した。
一瞬。
レイナの身体が止まる。
「……ユイ」
「なに」
「それ、反則」
「レイナにだけは言われたくない」
言い返すと、
レイナが小さく笑った。
夜空に、
星屑が降る。
静かに。
やわらかく。
でも。
私たちの魔法は、
もう静かじゃいられない。
触れるたび。
好きと言うたび。
世界ごと、
光ってしまうくらいに。
第21話を読んでくださってありがとうございました。
今回はかなり、
“感情と魔法の繋がり”を強く描いた回でした。
この作品の星屑魔法って、
実はかなり感情依存なんです。
嬉しい。
不安。
独占欲。
愛しさ。
そういう気持ちが強くなるほど、
魔力も反応する。
だから最近のふたり、
ほぼ歩く天体異常です。
学園中で噂になるのも当然。
特に今回の屋上シーンは、
かなり“感情の暴走”を意識して書きました。
前までは、
キスすること自体がゴールだった。
でも今は違う。
キスしたあと、
もっと触れたくなる。
もっと近づきたくなる。
その変化が、
レイナの「まだ足りない」に出ています。
そしてユイも、
かなり変わりました。
前なら、
抱きしめられるだけで固まっていた。
でも今回は、
自分からレイナへ腕を回した。
これはかなり大きな変化です。
ちゃんと、
“触れたい”と思っている。
受け取るだけじゃなく、
返したいと思っている。
恋人として、
少しずつ対等になってきているんです。
あと今回、
レイナの余裕がまた少し崩れました。
ユイが予想外に積極的になると、
この人かなり弱い。
天才なのに、
恋だけ不器用なの、
本当にかわいい。
そして最後の
「世界ごと、光ってしまうくらいに」
という一文。
これは今のふたりそのものです。
恋をすると、
世界の色が変わる。
夜空も。
星屑も。
触れた体温さえ。
全部が特別になる。
今のふたりは、
まさにその真ん中にいます。
でももちろん、
甘いだけでは終わりません。
強く共鳴する魔力は、
この先きっと、
学園そのものにも影響を与え始めます。
ふたりの恋は、
もう周囲を巻き込むくらい大きくなっているから。
次の夜には、
また新しい感情が降ってくる。
もっと甘く。
もっと危うく。
そして、
もっと“離れられなく”なっていく。
また星屑の下で、
続きを見届けてもらえたら嬉しいです!




