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星屑の魔法ときみの名前  作者: 星恋 hosiko


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15/24

星屑の魔法ときみの名前15

恋って、

 「好き」と言い合った瞬間に完成するわけじゃない。


 むしろそこから、

 少しずつ変わっていく。


 触れ方も。


 視線も。


 距離の詰め方も。


 前は緊張していたことが、

 気づけば自然になっていて。


 でも、

 自然になったはずなのに、

 前よりずっとドキドキしてしまう。


 今回の15話は、

 そんな“恋人になったあとの甘さ”をたっぷり詰めた回です。


 甘やかして。


 焦らして。


 でもちゃんと大事にしている。


 そんなレイナと、

 少しずつ“触れられること”に慣れていくユイ。


 星屑の降る図書塔で、

 ふたりの距離はまた静かに近づいていきます。

 最近。


 


 レイナが、やたら触れてくる。



 


「ユイ」


「なに」


 


 返事をした瞬間。


 


 さら、と。


 


 髪を耳にかけられた。


 


「……なんで触ったの」


「髪、跳ねてた」


 


 平然。


 


 しかも、

 触ったあとも指が離れない。


 


「レイナ」


「なに」


「近い」


「今日だけで五回目」


 


 数えてるの?


 


 怖いんだけど。



 


 放課後。


 


 図書塔。


 


 窓から差し込む夕暮れと、

 静かに漂う星屑。


 


 最近、

 ここがふたりの定位置になっていた。


 


「……疲れた」


 


 本を閉じて机に突っ伏す。


 


 すると。


 


 こつん。


 


 頭に軽く何かが当たった。


 


「?」


 


 顔を上げると、

 レイナが小さな瓶を揺らしている。


 


「星糖」


「なにそれ」


「星屑を加工したお菓子」


 


 ころん、と。


 


 透明な飴みたいな粒が掌に落ちる。


 


「甘いわよ」


「へえ」


 


 口に入れる。


 


 しゃり、と溶けて。


 


 ふわっと、

 花みたいな甘さが広がった。


 


「……おいしい」


「でしょ」


 


 少し得意げ。


 


 なんか悔しい。



 


「それ、レイナが作ったの?」


「そう」


「器用……」


「ユイにも作れるわよ」


「無理」


「できる」


 


 即答。


 


 最近、

 本当に迷いなく肯定してくる。


 


「レイナってさ」


「なに」


「私に甘くない?」


 


 一瞬。


 


 レイナが本を閉じた。


 


「今さら気づいたの?」


「自覚あったんだ」


「好きな人には甘いわよ」


 


 ど直球。


 


「っ……」


 


 無理。


 


 心臓に悪い。



 


 レイナが、

 机に頬杖をついたままこちらを見る。


 


 静かな視線。


 


 逃げられない。


 


「ユイ」


「……なに」


「顔赤い」


「レイナのせい」


「知ってる」


 


 絶対楽しんでる。


 


 でも。


 


 その目が優しくて、

 嫌になれない。



 


「……ねえ」


「なに」


「こっち来て」


 


 レイナが、

 軽く指を動かす。


 


「なんで」


「いいから」


 


 怪しい。


 


 でも。


 


 断れる空気じゃない。


 


 椅子を少し寄せる。


 


 すると。


 


 ぐい。


 


「っ!?」


 


 一気に腕を引かれた。


 


 気づけば。


 


 レイナの膝の上。


 


「なっ……!?」


「静かに」


 


 腰を支えられる。


 


 逃げられない。


 


「レイナ!?」


「暴れると落ちる」


「そういう問題じゃなくて!」


 


 耳元で、

 小さく笑う気配。


 


「前からやってみたかった」


「何その理由!?」



 


 でも。


 


 抱き込まれるみたいな体勢なのに。


 


 不思議と、

 怖くはなかった。


 


 むしろ。


 


 心臓はうるさいのに、

 安心してしまう。


 


「……ユイ」


「なに」


 


 後ろから、

 ぎゅっと抱きしめられる。


 


「好き」


 


 どくん。


 


 あまりにも自然に言われて、

 一瞬理解が遅れた。


 


「……急に言うのずるい」


「言いたかったから」


 


 頬に、

 さらりと銀髪が触れる。


 


 くすぐったい。


 


 でも。


 


 離れたくない。



 


「レイナ」


「なに」


「重い」


「嘘」


「嘘じゃない」


「じゃあ降りる?」


 


 一瞬。


 


 迷う。


 


 その沈黙だけで、

 全部伝わったらしい。


 


「……かわいい」


「うるさい」



 


 そのとき。


 


 窓の外で、

 星屑が強く光った。


 


 ふわり、と。


 


 淡い粒子が、

 図書塔の中まで流れ込んでくる。


 


「……綺麗」


 


 思わず呟く。


 


 すると。


 


 後ろから、

 レイナの声。


 


「ねえユイ」


「なに」


「今、キスしたら」


 


 心臓が止まりそうになる。


 


「……怒る?」


 


 低い声。


 


 近すぎる熱。


 


 耳が熱い。


 


「……最近そればっかり聞く」


「ちゃんと嫌がってないか確認してるの」


 


 少し真面目な声。


 


 だから。


 


 余計に、

 心臓が苦しくなる。



 


「……嫌じゃない」


 


 小さく答える。


 


 一瞬。


 


 抱きしめる腕に、

 少し力が入った。


 


「……そっか」


 


 安堵したみたいな声。


 


 そのまま。


 


 レイナの指が、

 そっと私の顎に触れる。


 


 ゆっくり。


 


 逃げられるくらい、

 優しく。


 


 でも――


 


 逃げたくない。



 


 距離が縮まる。


 


 呼吸が重なる。


 


 星屑が、

 ふたりの周りで静かに揺れる。


 


「……ユイ」


「なに」


 


 囁き声。


 


 近い。


 


 近すぎる。



 


 そして。



 


 柔らかい感触が、

 頬にそっと触れた。



 


「……え」


 


 一瞬、

 思考が止まる。


 


 触れた場所が熱い。


 


 レイナが、

 ほんの少しだけ離れる。


 


「……今日はここ」


 


 また。


 


 また焦らされた。


 


「レイナ……!」


 


 振り返ると、

 レイナは楽しそうに笑っている。


 


 でも。


 


 その耳は少し赤い。



 


「続き、期待した?」


「っ〜〜〜!!」


「顔真っ赤」


「誰のせい!」


 


 笑い声が重なる。


 


 でも。


 


 そのあと。


 


 レイナは、

 そっと私の肩へ額を預けた。


 


「……もう少しだけ、このまま」


 


 珍しく、

 少し甘えるみたいな声。


 


 だから私は。


 


 小さく笑って、

 その手を握り返した。


 


「……うん」



 


 星屑が降る。


 


 静かに。


 やわらかく。


 


 恋はきっと、

 少しずつ体温を覚えていく。


 


 触れたいとか。


 


 離れたくないとか。


 


 言葉にできない感情ごと。


 


 全部抱えながら。


 


 ふたりの距離は、

 今日もまた少しだけ近づいていた。

第15話を読んでくださってありがとうございました。


 今回はかなり“体温”を意識して書いた回でした。


 膝の上。


 後ろから抱きしめる腕。


 耳元の声。


 頬へのキス。


 今までよりも、

 明確に“恋人の触れ方”になってきています。


 でも、

 このふたりはまだ、

 完全には踏み込みきっていない。


 だからこそ、

 その寸前の空気がいちばん甘い。


 今回のレイナは、

 かなり余裕があるように見えて、

 実はちゃんと緊張しています。


 特に、

 「嫌じゃない?」を毎回確認しているところ。


 あれはただのからかいじゃなくて、

 ユイを大切にしている証拠です。


 自分の気持ちだけで突き進まない。


 ちゃんと、

 ユイの気持ちも確かめながら近づいている。


 だから、

 レイナの触れ方は強引に見えて、

 どこか優しい。


 一方でユイも、

 かなり変わってきました。


 前なら真っ赤になって逃げていた距離でも、

 今は“離れたくない”と思っている。


 膝の上からすぐ降りなかったのも、

 その変化のひとつです。


 もう、

 触れられることが怖いんじゃない。


 むしろ、

 安心してしまっている。


 その状態が、

 レイナにとってはかなり危険です。


 今回の最後、

 レイナが額じゃなく頬にキスしたのも、

 ちゃんと意味があります。


 少しずつ。


 でも確実に。


 ふたりの距離は“次”へ向かっている。


 そしてたぶん、

 もうお互い、

 その続きを望み始めている。


 星屑は、

 感情に反応して光ります。


 つまり最近の中庭や図書塔は、

 かなり危険な状態です。


 甘さも。


 熱も。


 全部、

 前より強くなっている。


 次の夜には、

 きっとまた新しい感情が降ってくる。


 独占欲かもしれない。


 嫉妬かもしれない。


 あるいは――

 もう止まれなくなる瞬間かもしれません。


 また続きを、

 一緒に見届けてもらえたら嬉しいです!

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