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星屑の魔法ときみの名前  作者: 星恋 hosiko


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14/24

星屑の魔法ときみの名前14

恋人になったあとって、

 きっと「好き」が落ち着くわけじゃない。


 むしろ逆で。


 隣にいることに慣れてくるほど、

 触れたい気持ちは増えていく。


 甘やかしたい。

 独占したい。

 安心させたい。


 そんな感情が、

 少しずつ自然になっていく。


 今回の14話は、

 “付き合ったあとの距離感”をテーマにしたお話です。


 手を繋ぐことも、

 寄りかかることも、

 もう特別じゃない。


 でも、

 だからこそ生まれるドキドキがある。


 星屑の降る学園で、

 今日もふたりは、

 少しずつ恋人らしくなっていきます。

 最近。


 


 レイナが、私を甘やかしすぎる。



 


「ユイ、眠そう」


 


 朝。


 


 教室へ入った瞬間、

 レイナがそう言った。


 


「……ちょっと寝不足」


「なんで」


「昨日レポート終わんなくて」


 


 席に座った途端。


 


 こつん。


 


 額に、何かが当たる。


 


「……え?」


 


 見ると、

 小さな星屑が淡く光っていた。


 


「集中力を少し安定させる魔法」


 


 レイナは平然と言う。


 


「便利でしょ」


「いや便利だけど」


 


 なんでそんな自然に使うの。


 


 しかも。


 


「寝る?」


「へ?」


「授業始まるまで」


 


 ぽんぽん、と。


 


 自分の肩を軽く叩く。


 


「……え」


「貸してあげる」


 


 さらっと言った。


 


 教室で。


 


 普通に人いるのに。


 


「レイナ!」


「なに」


「ここ教室!」


「知ってる」


「見られる!」


「もう今さらでしょ」


 


 ……否定できない。


 


 最近、

 私たちのことを知らない人のほうが少ない。


 


「ほら」


 


 レイナが少しだけ肩を寄せる。


 


「倒れそうな顔してる」


「そんな顔してないし」


「してる」


 


 じっと見つめられる。


 


 その視線が優しくて。


 


 結局。


 


 私は観念した。


 


「……ちょっとだけ」


「うん」



 


 そっと頭を預ける。


 


 制服越しに伝わる体温。


 


 近い。


 


 でも、

 安心する。


 


「……ほんとに寝そう」


「寝ていいわよ」


 


 レイナの声が近い。


 


 そのまま。


 


 さら、と。


 


 髪を撫でられる。


 


「っ……!」


「静かに」


「いやびっくりするでしょ」


「触りたかった」


 


 最近ストレートすぎる。


 


 でも。


 


 その撫で方が優しくて、

 文句を言う気が少し削られる。


 


「レイナって、付き合ってから変わったよね」


「そう?」


「前より甘い」


 


 一瞬。


 


 レイナが少しだけ黙る。


 


「……だって、恋人だもの」


 


 どくん。


 


「好きな人なら甘やかしたい」


 


 そう言って、

 また髪を撫でる。


 


 だめだ。


 


 心臓に悪い。



 


 そのとき。


 


「……失礼しまーす」


 


 教室の扉が開く。


 


 クラスメイトたちが入ってきた。


 


 そして。


 


 一瞬で止まる。


 


「……え」


「なにこれ」


「朝から供給強すぎない?」


 


 全部聞こえてる。


 


「ち、違っ……!」


 


 慌てて離れようとすると。


 


 ぐい。


 


 レイナの腕が、

 腰を軽く引き寄せた。


 


「っ!?」


 


「まだ時間あるでしょ」


 


 逃がさない気満々。


 


「レイナ!!」


 


 周りから悲鳴みたいな声が上がる。


 


「えっ待って何今の」

「距離近すぎ」

「無理尊い」


 


 やめて。


 本当にやめて。


 


 顔から火が出そう。



 


 昼休み。


 


「……死ぬかと思った」


 


 机に突っ伏す。


 


 すると。


 


 隣でレイナが小さく笑った。


 


「そんなに?」


「そんなに!」


 


 じとっと睨む。


 


「レイナ絶対楽しんでた」


「少しは」


「少しかなあ!?」


 


 でも。


 


 レイナはふいに真面目な顔になる。


 


「……嫌だった?」


 


 静かな声。


 


 一瞬で、

 胸がきゅっとなる。


 


「……嫌じゃない」


 


 本音だった。


 


 恥ずかしいけど。


 


 でも、

 嫌じゃない。


 


「ただ、慣れないだけ」


 


 答えると。


 


 レイナは、

 少しだけ安心したみたいに笑った。


 


「よかった」


 


 その笑顔が、

 妙に優しくて。


 


 また心臓が跳ねる。



 


 放課後。


 


 中庭。


 


 星屑が、

 静かに降り始めている。


 


「ねえユイ」


「なに」


 


 レイナが、

 私の手を取る。


 


 絡む指。


 


 もう慣れたはずなのに、

 やっぱり少し緊張する。


 


「今日、ずっと思ってた」


「何を?」


 


 星屑の光が、

 レイナの銀髪に溶ける。


 


「あなたが可愛すぎて困る」


「は!?」


 


 反射で変な声が出た。


 


「な、なんで急に」


「朝、肩に寄りかかってきたとき」


 


 レイナが少しだけ目を細める。


 


「安心した顔してた」


 


 どくん。


 


「……反則だった」


 


 低い声。


 


 熱を含んだ声。


 


 そのまま、

 ゆっくり距離が近づく。


 


「レイナ」


「なに」


「近い」


「知ってる」


 


 もう、

 最近そればっかりだ。


 


 でも。


 


 嫌じゃない。


 


 むしろ――


 


 もっと近づいてほしいって、

 少し思ってしまう。



 


 レイナの指が、

 そっと私の頬へ触れる。


 


「……ユイ」


「なに」


 


 呼吸が近い。


 


 星屑が、

 ふたりの周りで淡く揺れる。


 


「今、キスしたら怒る?」


 


 どくん。


 


 心臓が大きく跳ねた。


 


「……それ聞くのずるい」


「じゃあ答えて」


 


 真っ直ぐな瞳。


 


 逃げ道なんて、

 最初からない。


 


「……怒らない」


 


 小さく答えると。


 


 レイナは、

 少しだけ嬉しそうに笑った。


 


「そっか」


 


 その声が甘くて。


 


 次の瞬間。


 


 額へ、

 そっと唇が触れた。


 


「……っ」


 


 一瞬。


 


 でも、

 熱は長く残る。


 


「今日はここまで」


「またそれ……」


 


 くすっと笑うレイナ。


 


 悔しい。


 


 でも。


 


 触れた場所が熱くて、

 何も言い返せない。



 


 星屑が降る。


 


 やわらかく。


 静かに。


 


 恋を知ってから、

 世界は少しずつ変わっていく。


 


 触れる意味も。


 


 見つめ合う時間も。


 


 全部。


 


 前よりずっと、

 甘くなっていた。

第14話を読んでくださってありがとうございました。


 今回はかなり「甘やかし回」でした。


 今までのレイナは、

 どちらかというと余裕のある天才ポジションで、

 ユイをからかったり翻弄したりすることが多かった。


 でも恋人になってからは、

 “好きな人を甘やかしたい”

 という感情がどんどん前に出てきています。


 肩を貸したり、

 髪を撫でたり、

 自然に引き寄せたり。


 本人はかなり無自覚にやっている部分もあります。


 そして、

 それに少しずつ慣れてしまっているユイも大事な変化です。


 最初なら真っ赤になって逃げていた距離感でも、

 今は「恥ずかしいけど離れたくない」と思っている。


 この変化が、

 ふたりの関係をより恋人らしくしている気がします。


 今回特に書きたかったのは、

 “安心して寄りかかれる恋”です。


 激しい展開じゃなくても、

 肩に頭を預けるだけで幸せだったり、

 撫でられるだけで心が落ち着いたりする。


 そういう静かな甘さを、

 星屑の空気と一緒に描きたかった回でした。


 そして最後。


 また額へのキスで終わりました。


 レイナ、

 完全にわかって焦らしています。


 でも、

 ちゃんと理由もある。


 大切だからこそ、

 一歩ずつ進みたい。


 勢いじゃなく、

 ちゃんと“好き”を積み重ねながら近づいていきたい。


 そんな気持ちも、

 あの「今日はここまで」に込めています。


 ただ。


 そろそろ、

 レイナの理性も限界が近いです。


 ユイもかなり無防備になってきています。


 だから次の夜は、

 もっと危ない距離になるかもしれません。


 星屑の光が降るたびに、

 ふたりの恋は少しずつ熱を帯びていく。


 その続きを、

 また一緒に見届けてもらえたら嬉しいです!

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