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星屑の魔法ときみの名前  作者: 星恋


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12/13

星屑の魔法ときみの名前12

恋をすると。


 たった一言で嬉しくなったり、

 たった一瞬で不安になったりする。


 隣にいるだけで幸せなのに、

 もっと近づきたくなる。


 もっと触れてほしくなる。


 もっと、“自分だけ”を見てほしくなる。


 今回の話は、

 そんな独占欲と嫉妬が、

 少しずつ形になっていく夜の物語です。


 完璧に見えるレイナも、

 恋の前ではちゃんと余裕をなくす。


 そしてユイも、

 そんな彼女を見て、

 少しずつ“恋人”としての気持ちを覚えていく。


 星屑が降る夜。


 絡んだ指は、

 前よりもっと、ほどけなくなっていきます。

 付き合い始めてから、

 一番変わったこと。


 


 それはたぶん。


 


 レイナが、全然隠さなくなったことだ。



 


「ユイ」


「……なに」


「手」


 


 もう最近は、

 その一言だけで意味がわかってしまう。


 


 差し出されたレイナの手。


 私は小さくため息をついてから、

 観念したみたいに自分の手を重ねた。


 


 その瞬間。


 


 当然みたいに指が絡む。


 


「……はい、満足?」


「まだ」


「まだ!?」


 


 教室だよここ。


 


 朝のホームルーム前。

 普通にクラスメイトいるし、

 普通にみんなこっち見てるんだけど。


 


「レイナ」


「なに」


「見られてる」


「ええ」


「“ええ”じゃなくて!」


 


 なのにレイナは気にした様子もなく、

 繋いだ手を机の下へ隠すどころか、

 むしろ見せつけるみたいにそのままにしている。


 


「……レイナさん」


 後ろの席の女子が苦笑する。


「最近オープンすぎません?」


「好きな人と付き合ってるんだから普通でしょ」


 


 さらっ、と爆弾。


 


「ちょ、ちょっと!」


「なに」


「普通に言わないで!」


「事実よ」


 


 くすっと笑う。


 


 だめだ。


 最近ずっと余裕負けしてる。


 


 悔しくて睨むと。


 


「……かわいい」


 


 小さく呟かれた。


 


「っ……!」


 


 反則。


 


 本当に反則。



 


 昼休み。


 


 逃げるみたいに購買へ向かう途中。


 


「あ、七瀬さん!」


 


 声をかけられて振り返る。


 


 二年の女子生徒だった。


 前に訓練を少し教えてもらった先輩。


 


「この前の実技、すごかったよね」

「え、いや全然……」


「また今度、一緒に訓練しない?」


 


 そんな会話をしていると。


 


 背後から、

 ひやりとした空気。


 


「……レイナ?」


 


 いつの間にか立っていた。


 


 しかも。


 


 機嫌が悪い。


 


 すごくわかりやすく。


 


「ユイ、行くわよ」


「え、でも今話してて」


「あとでいいでしょ」


 


 ぴしゃり。


 


 先輩が苦笑する。


 


「あはは、独占欲強いね」


 


 その瞬間。


 


 レイナの眉がぴくっと動いた。


 


「悪いですか?」


「え」


 


 空気が凍る。


 


「レイナ!」


 


 慌てて腕を引く。


 


 するとレイナは、

 少しだけ不満そうに私を見る。


 


「だって、その人ずっと近い」


「普通だったよ!?」


「普通じゃない」


 


 即答。


 


 しかも。


 


 そのまま私の手首を掴む。


 


「行く」


「ちょ、待っ……!」



 


 そのまま連れて来られたのは、

 人の少ない旧校舎裏だった。


 


「……レイナ」


「なに」


「嫉妬しすぎじゃない?」


 


 一瞬。


 


 レイナが黙る。


 


 それから、

 ふいっと目を逸らした。


 


「……してない」


「いや絶対してる」


「……少しだけ」


 


 認めた。


 


 しかも耳が赤い。


 


 その顔を見た瞬間、

 なんだか急に胸がくすぐったくなる。


 


「……かわいい」


「ユイ」


「ごめん」


 


 低い声。


 


 でも怒ってはいない。


 


 むしろ。


 


 どこか困ったみたいな顔。


 


「だって」


 


 レイナが、小さく息を吐く。


 


「最近、自覚してきたの」


「なにを?」


「あなたのこと、思ったより好き」


 


 どくん。


 


 真正面から来た。


 


「レイナって時々そういうの急に言うよね」


「本当のことだから」


「心臓に悪い……」


 


 すると。


 


 レイナが少しだけ近づいてくる。


 


 一歩。


 


 また一歩。


 


「ユイ」


「……なに」


「今も、あの人と話してたの思い出すと嫌」


 


 静かな声。


 


 でも、

 その瞳は真剣だった。


 


「私の知らない顔で笑わないで」


 


 ぎゅ、と。


 


 繋いだ指に力がこもる。


 


「……そんな顔しないで」


「どんな顔」


「捨てられそうみたいな顔」


 


 一瞬。


 


 レイナの目が揺れた。


 


「……しないよ」


 


 気づけば、

 私はレイナの制服を軽く掴んでいた。


 


「レイナを置いてどっか行ったりしない」


「……」


「だって私」


 


 ちゃんと言う。


 


 逃げずに。


 


「レイナのこと、大好きだもん」



 


 空気が止まった。


 


「……ユイ」


 


 レイナの声が、少し掠れる。


 


 次の瞬間。


 


 ぐいっと腕を引かれた。


 


「っ……!」


 


 抱きしめられる。


 


 強く。


 


 でも、

 壊れ物を扱うみたいに優しく。


 


「……今のずるい」


「レイナが先に言わせたんでしょ」


「そうだけど」


 


 肩に顔を埋めたまま、

 小さく笑う気配。


 


「もっと聞きたい」


「え」


「もう一回」


「無理!」


「なんで」


「恥ずかしい!」


 


 すると。


 


 レイナは少しだけ体を離して、

 すぐ近くから私を見つめた。


 


「私は何回でも言えるのに」


「レイナがおかしいの!」


「好き」


「わっ!」


「好き」


「ちょ、連続はだめ!」


「好き」


「うるさい!!」


 


 完全に遊ばれてる。


 


 でも。


 


 笑ってるレイナを見ると、

 嫌だと思えない。



 


 そのとき。


 


 ふわり、と。


 


 星屑が降り始めた。


 


 夕暮れの空から、

 静かに零れてくる光。


 


「……綺麗」


 


 呟くと。


 


 レイナが、そっと私の頬へ触れた。


 


「うん」


 


 その視線は、

 星空じゃなくて。


 


 まっすぐ私を見ている。


 


「でも今は、こっちのほうが綺麗」


 


 どくん。


 


 また心臓が跳ねる。


 


「……ほんと、ずるい」


「知ってる」


 


 くすっと笑う。


 


 そして。


 


 レイナは、

 額へそっと自分の額を重ねた。


 


 近い。


 


 でも、

 もう逃げない。


 


「ユイ」


「なに」


 


「もっと好きになって」


 


 囁くみたいな声。


 


 星屑が、

 ふたりを囲むように舞っている。


 


 その光の中で。


 


 絡んだ指は、

 もうほどける気がしなかった。

第12話を読んでくれてありがとうございました。


 今回はかなり、

 “嫉妬”と“独占欲”を前面に出した回でした。


 これまでのレイナは、

 どちらかというと余裕があって、

 ユイを翻弄する側でした。


 でも付き合い始めたことで、

 逆に「失いたくない」という感情が強くなっています。


 だから今回のレイナは、

 わかりやすく嫉妬するし、

 わかりやすく不機嫌になる。


 しかも隠しきれていない。


 完璧そうな人が、

 好きな相手の前だけ不器用になる感じを書きたくて、

 かなり感情を崩しました。


 一方でユイも、

 ただ振り回されるだけじゃなくなっています。


 以前なら照れて終わっていた言葉を、

 今回はちゃんと返せるようになった。


 「大好きだもん」


 というセリフは、

 ユイの成長でもあります。


 星屑の魔法は、

 感情に強く反応する設定なので、

 ふたりの関係が深くなるほど、

 光も変化していきます。


 最初は不安定だった魔法が、

 今では“想い”そのものみたいに揺れている。


 だからこの作品では、

 魔法=恋心の象徴でもあります。


 そして今回、

 レイナの独占欲がかなり強めに描かれましたが、

 それは束縛したいというより、

 “好きすぎて余裕がなくなる”感情です。


 天才で、

 何でもできて、

 誰より綺麗な彼女が。


 恋だけは、

 ちゃんと初心者だった。


 そんな部分を、

 少しでも好きになってもらえていたら嬉しいです。


 ここから先、

 ふたりの距離はさらに変わっていきます。


 触れることにも、

 想いを伝えることにも、

 どんどん慣れていく。


 でも慣れた頃にこそ、

 新しい感情も生まれる。


 恋は、

 “両想いになって終わり”じゃない。


 むしろそこから、

 もっと深くなっていくものだから。


 また次の星屑の夜で、

 会えますように!

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