第12話:眠りの傍で ― 触れたい理由 ―
夜。
小屋の中には、火のはぜる音だけが響いていた。
レイはベッドに横たわり、包帯を巻かれた肩をわずかに動かす。
「……痛まないですか?」
リアは椅子に座り、静かに問いかけた。
レイは目を閉じたまま、短く答える。
「大したことねぇ」
その声が少しかすれている。
無理しているのが、すぐにわかる。
リアは濡れ布を取り替えながら、そっと彼の額に手を伸ばした。
「熱い……やっぱり、無理してる」
「俺は平気だって言ってるだろ」
「嘘です。顔が赤いです」
「それは……」
一瞬、レイの声が途切れた。
彼は目を開け、じっとリアを見上げた。
金色の瞳に、焔の光が映り込む。
「……お前、近い」
「だって、おでこを冷やさないと……」
「……そういうことじゃねぇ」
リアの手を掴むレイ。
その力は強くもなく、でも確かに引き寄せるような熱を帯びていた。
リアの心臓が跳ね、息が詰まる。
「……リア」
名前を呼ばれただけで、体の奥が熱くなる。
「な、なんですか……?」
「お前、危なっかしいんだよ」
「え……?」
「俺が守ってやらなきゃって、そう思わせる。……だから、困る」
その言葉が胸の奥にじんわりと広がる。
リアは答えられず、ただ小さくうなずいた。
「……ごめんなさい。私、いつも……」
「謝んな」
レイは短く言い、力を緩める。
その手がリアの指先を離れていく瞬間、少しだけ名残惜しさが残った。
「……寝ろ」
「はい。でも、レイさんが眠るまでは……」
「……そんなことしてたら、お前が倒れるぞ」
「それでも、今はそばにいたいんです」
一瞬、沈黙。
レイは小さく息を吐いて、目を閉じた。
「……勝手にしろ」
リアは微笑み、静かに頷く。
彼の寝息が次第に落ち着いていくのを聞きながら、
その横顔をそっと見つめる。
強くて、不器用で、誰よりも優しい人。
その人に触れたくて、心が疼く。
触れたら壊れそうで、でも触れずにはいられない。
リアは火の光の中で、そっと小さく囁いた。
「……私、レイさんのことが好きなのかもしれない」
その声は、炎の音にかき消され、誰にも届かなかった。




