表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘くとろけるキスをしたくて  作者: ちぃたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/24

第11話:抱きしめたぬくもり ― 森の影で ―



昼下がりの森は、薄曇りの光に包まれていた。

レイは一人で森の奥へと入っていた。狼の足跡を追っているのだ。

風がざわめき、鳥たちが一斉に飛び立つ。嫌な予感が胸をよぎる。


「……またか」

次の瞬間、茂みの奥から黒い影が飛び出した。牙を剥いた獣――森狼。

レイは反射的に剣を構え、獣の動きを見極める。だが、もう一体、背後にも気配があった。


「チッ……二体かよ」

ひと太刀で一匹を倒すも、肩を浅く噛まれる。血が滲む。

しかしレイは構わず剣を振り抜いた。


一方そのころ、リアは落ち着かずにいた。

「……やっぱり、様子を見に行こう」

心配に駆られ、足が自然に森へ向かっていた。


木々の間を抜け、血の匂いが漂う場所へと辿り着く。

そこにいたのは、肩を押さえながら膝をつくレイの姿。

「レイさんっ!」

リアは駆け寄り、ためらいなく抱きしめた。


「バカ……来るなって言ったろ……」

低く掠れた声。でも、彼の体は熱く、震えていた。

「そんなの、無理です! 放っておけません!」

リアの声が涙で揺れる。


レイは少し目を細め、腕をゆっくりと彼女の背中に回した。

「……お前、ほんとに不器用だな」

「レイさんだって……!」

顔を上げた瞬間、至近距離で目が合う。息が触れる距離。


リアの頬に、彼の血が少しつく。

「……汚れるぞ」

「いいんです。今はそれより、傷を」

「平気だ」

そう言いながらも、レイはふっと笑った。

「……こんなに心配されるの、悪くねぇな」


リアの心臓が痛いほど跳ねた。

「……もう、心配かけないでください」

「……努力する」

短く答える声が、なぜか優しく響く。


その時、森の奥で再び枝が折れる音がした。

ガイが駆けつける。二人の姿を見て、一瞬立ち止まる。

リアの腕の中にいるレイ。

言葉を失いながらも、すぐに駆け寄り、冷静に傷の手当てを始めた。


「兄さん、無茶をしすぎです」

「……お前も心配性だな」

「誰に似たんでしょうね」

静かな皮肉に、レイは少しだけ笑う。リアはそのやりとりを見つめながら、胸の奥が温かくなるのを感じた。


森の光が差し込み、血の跡を静かに照らしていた。

その日、リアの中で何かが変わった。

ただの「心配」ではない。

もっと深く、もっと切ない――恋の痛み。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ