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カプセラ  作者: t
5月のはなし
12/13

6

「そういえばさっき、美化の入会手続き?の紙書いてきましたよ」

「えっ!まだだったの!?」


筒見先輩による本日の放課後美化メニューはさきいかだ。ソフトタイプに燻製、細めから太めまで色々な種類のイカが並んでる。先程もらったチョコパイが甘いからちょうどいいかもしれない。


「どうしよう、まだ正式に入ってもらってなかったのに仕事させちゃってた…」

「いや俺は気にしてないですけど」

「三葉が気にしてなくても俺が気にするよ。というかちゃんと担任経由で提出できるようにって伝えたはずなのにな…」


あの担任のせいかよ。こんな事で筒見先輩を悩ませてしまうなんて申し訳ないので早々に本日の集合理由を聞くことにした。


「あ、うん。今日は来月に控えてる体育祭での美化の仕事について軽く説明しようと思ってね」


構内散歩は他のメンバーに任せているとのことで、本日は美化委員室での説明会らしい。少し前に出会った会計さんがアンケート?を持って来ていたし、生徒会と美化委員と体育委員によって今も着実に準備が進められているのだろう。


「ただその前に三葉に一つ報告があって。で、更にその前に一つ聞きたいんだけど、俺の事をずっと睨んでるその隣の子は?」

「…あまり気にしないでください」

「ええ…?」


てっきり放課後は部屋に戻るのだと思っていた筧だけども、特に離れる素振りも見せずに美化委員室前まで着いてきて今は俺の隣りに座っている。途中この後は委員会活動だと伝えたのだけども相槌を返されただけだった。一応美化委員室に入る時に部外者を入室させても平気か先輩確認した上で招き入れた訳だが、ソファに座った後は出されたさきいかを噛みながら筒見先輩を睨むだけである。何故そんなに敵意むき出しなのか。


「睨んでますけど大人しいですし騒がないので。多分」

「や、ま、それは良いんだけど、うーん…」

「良いんですか」

「仕事柄美化って口うるさくなっちゃうからね。こういうのは慣れてるんだけど…伝えたかったのはこの間の机関係の話なんだよね。だから後で改めて話すよ」


机といえば俺の机が最新型に取り替えられた件だろう。それで話し辛い話題といえば一つしか心当たりがない。隣を見れば察しの良い筧と目があった。


「今話して大丈夫ですよ」

「…分かった、三葉がそう言うなら平気だね。今、三葉の周り落ち着いてるでしょ?だからそれを逆撫でする様なことはしたくなくて、処罰対象の親衛隊員には今のところ何もしないしする予定もない」


立ち上がろうと足に力を入れた筧を止めて筒見先輩に続きを促した。これについては俺が先輩に希望を伝えた通りの対応だ。まだ殆どが可愛いいたずらだったのだから無駄に大事にはしたくないと。


「ただし、俺としてはそれだけで終わりにしたくないからその親衛隊の一番上、生徒会長に今回の事を伝えてきた」

「えっ」

「事後報告でごめんね。でもこれは今回だけのことじゃなくて今後三葉以外にも起きるかもしれないことだから。もっと下にも目光らせとけって文句言ってやったよ」


できればこれ以上カミ様に認識されなくなかったのだけど、そんな理由を言われてしまったら文句も言えやしない。


「よし!じゃあ後は楽しい体育祭についてだ」


そこから先の話には興味がないのかあからさまに姿勢を崩しはじめた筧を横目に淡々と説明を受けた。体育祭としての大きい仕事は体育委員が、美化としての大きい仕事は筒見先輩が担当するらしく、細かい手伝いはありそうだが俺の仕事としてはほとんどが当日のみらしい。


「さ、大体はこんな感じだけど何か質問あるかな」

「じゃあ…一つ質問いいですか?」

「お、なにかな」

「親衛隊って何ですか?」

「あー…」


さっき出てきた単語だが話の流れ的になんとなくの意味が分かるから一旦スルーしたのだけど、たった今受けた説明にも出てきたのだ。伝達係:親衛隊、と。


「さっきはそのままファンクラブ的なものだと思ってたんですけど」

「うん、それは間違ってないよ。人気がある生徒毎にちゃんと申請して組織されてる。ただ、またちょっと不甲斐ない話でね…」


悲しそうな先輩が菓子器の中が空になっていることに気づき更に悲しそうになってしまった。すみません先輩、俺が筧を連れてきたばかりに。今度筧の金でお詫びのさきいかを差し入れしなければ。


「基本的に親衛隊はファンクラブ的な活動をしてるわけなんだけど、生徒会とかの役職持ち生徒に対する親衛隊はたまにその役職の雑用とかお手伝いをお願いすることもあるんだ」

「なるほど、そのお手伝いがこの伝達係なんですね」

「そうなんだ。緊急で連絡事項があった時に体育祭運営に素早く伝達してもらうって役割なんだけど、この伝達係って本当は美化の仕事でね…でもほら、美化って俺達以外………隠密だから」

「ちょっと、かっこいいですね」


役員同士は普通にスマホで連絡を取り合うらしいが、それ以外の生徒達との連絡手段が無いらしく緊急時対策として伝達係なるものが一応決められているらしい。一般生徒とも連絡先を交換すれば良いのではと、軽い気持ちで提案してみたのだが、親衛隊が何するか分からないからそんな事絶対にできないと言い切られた。味方じゃないのか親衛隊は。

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