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病弱疑惑に加え美化委員に入ったという噂。いよいよクラスで話しかけられることはなくなったがあからさまに避けられているという訳でもない。何より煩わしかった小さい苛めが無くなった事の方が嬉しい。だから特に気にしていなかったのだが、本日やって来た筧によって俺はついにあからさまに避けられる様になってしまった。当の筧といえば、俺の後ろの生徒に席を替われと無表情で要求している。
「多分見た目いかついのが駄目なんだよな。中等部の時からクラスでこんな感じなの?」
無事に席を交換してもらえた筧の耳にキラリと光るピアスを見ながら聞いてみた。周りがずっと腫れ物に触る様なこんな態度だったのならそりゃ面倒くさくなって不登校になってしまったのもちょっとは分からなくないかもしれない。いや、筧が見た目を改善すればいいだけなのだけども。
「知らねえ」
「知らないことないだろ」
「授業出てねえ」
なんと、筧は年季の入った不登校児だったのか。
「よく進学できてるね?」
「成績さえ良ければどうとでもなんだよ」
「え、筧成績良いの」
「……」
「なぜそこで黙る」
加点要素がなさそうな生活態度をカバーできるほどの成績。それつまり、特待生である俺のライバルでは?それが分かっているからか何を聞いてもその後筧は黙秘を貫き、教師が教室に入ってくるまで粘ったが結局口を開かせることはできなかった。
それからは淡々と授業を受け、教室で筧弁当を共に食べた。慣れてしまっていたせいですっかり忘れていたが友達と過ごせる学校生活が楽しすぎて気がつけばもう放課後。俺が楽しみとか言ったからか分からないがほぼずっと筧が側に居てくれた。俺はこの後委員会に行くのだが筧はどうするのか
「筧、放課後って」
「三葉!ちょっと」
「…」
「呼ばれてんぞ」
聞こうと思ったのにたった今ホームルームを終えた担任に手招き付きで呼ばれてしまい、教室の前にある教卓に近づけばいつもやる気のなさそうな顔に珍しく笑顔を浮かべていた。
「なんですか?」
「筧、不登校だろ?」
「…そう、ですね」
ちらっと自分の斜め右後ろを見れば、当然のように着いて来てる筧が直ぐ側に居る。担任としては本人が目の前に居ても特に気にしてない様でそのまま話し続けはじめた。
「で、今日ついに登校した」
「はい」
「俺は学年主任にネチネチネチネチと言われてたわけよ、登校するように説得しろってね」
「説得されたの?」
「全く」
もはや俺の横に来ている筧に聞いてみたが特にそういう訳ではないらしい。担任が一つ咳払いをして話を再開する。
「そんな筧の心をお前が開かせたわけだ」
「開かれたの?」
「…」
「おかげで俺は学年主任の鼻を明かせたわけよ」
「はあ」
「だから礼ってことでプレゼントだ」
そう言って渡された1枚のプリントとチョコパイ2つ。
「礼、安」
「うるさいぞ外野」
外野じゃなくて筧は思いっきり内野では?いやこの場合の対義語としては合ってない気がする。
「この紙なんですか?」
「委員会に入るための入部届みたいなもんだ。普通、委員会には要らないんだがお前んとこはちょっと特殊だからな」
内1つのチョコパイを筧に手渡しつつ納得した。確かにあの権限と活動を考えればちゃんとした手続きがあってもおかしくはない。内容を読んで日付と名前を書くだけの簡単な用紙なので担任にペンを借りて記入し、そのままプリントを返してあっさりと手続きは終わった。
「んじゃこれ後で提出しとくから。しかしよく美化になんて入ったな」
「先生達の中でも美化ってなにかあるんです?」
「いや別に?ただ他の委員会に比べて仕事が面倒だろ」
この人よく教師なんてできてるな。その考えは俺と同じだったようで筧も隣で微妙な表情をしていた。




