第13話 ダイナミックエントリー
夕闇に沈む街の中、異常事態が起きていた。
何事かと見上げる人々の目の前で、骨の巨人が踊っているのだ。
ビルの屋上を足場にしているので大した動きは出来ないようだが、制限されているステップの代わりに上半身を大きく動かして踊り狂うので、貯水塔や避雷針を破壊しまくっている。
人の迷惑かえりみずオンステージとは、迷惑千万なガイコツである。
ただ、悪が世に栄えた試しはない。
我が世の春よとカラカラ笑っていた彼は、突然木っ端みじんに吹き飛んだ。
主役の消えたステージは骨粉のスモークに包まれる。
もうもうと立ちこめるスモークは、何事もなかったかのようにビルに侵入した下手人とズルズル引きずられる少女を大騒ぎする民衆から隠しきった。
「さてっ! 張り切っていきますか!」
「ぴゃああああ! へあ!? ここはどこ!?」
非常灯の照らす小部屋に入ってきた下手人、アゲハがドアを閉めながら気合いを入れると、ハッと正気に戻ったカエデが赤いツインテールを振り乱してあたりを見回した。
「どこって、スペシャルなコースだよっ! 鍛えたいなら霊的存在を狩るのが一番だよね!」
「ええ!? フツーはこーゆーのって、しゅぎょーとか特訓をするんじゃないの!?」
スペシャルなコースとやらの正体に驚愕するカエデ。
この巫女に頼んだ時点でフツーとやらを期待するのは間違っているが、案の定何も考えていなかったのであろう。
「それはノーマルなコースだよっ! 何事も練習よりも実戦ってね!」
「そうなの!? じゃあ、とりあえず霊装展開!」
宣言と共に白い輝きを放ちながら白色の着物を身にまとったカエデは、ドヤ顔で剣をかかげた。
とんでもない順応の速さである。
それだけ何も考えていないともいえるが。
「そうなの! あっと、その霊装だけじゃ死んじゃいそうだから、これを授けて進ぜようっ!」
「死んじゃうの!?」
そういってアゲハが大きな袖から引っ張り出したのは、手のひらに収まる程度の大きさの存在であった。
その存在は山奥の秘湯のごときエメラルドグリーンの体を持っており、ピジョンブラッドのぶち模様がエレガントなイモムシである。
というか、少々大きいが我である。
「一回本体が降りた分霊だからね。それなりの加護を期待できるよっ!」
「この前のイモムシなのかぁ。加護って?」
「神様パワーで守ってくれるって事!」
「神様パワー! なんかスゴそう!」
物珍しそうな小娘の手にポンと置かれた我が行うのは、許されざる行いに対する当然の抗議だ。
「我は我だけのものである。貴様の指図で授けられるいわれはない!」
「あーっ! いけないんだ~! 進化や成長を司る神トコヨノカミの分霊が、成長を求める子を拒否しちゃうの~?」
「むぐっ! 何故だ!? 全く身に覚えがないというのに拒否してはいけない気がする!? 何故、何故だ!?」
「お~。苦しんでるぞ」
巫女に謎の指摘をされた完璧なるイモムシは、何故か頭を抱えて苦しんでいる。




