第12話 報酬はレアカード!?
たった一つの裸電球が照らす社務所内は相変わらず混沌としていた。
段ボールは壁が見えないほどに積み上げられており、元々広くは無さそうな社務所内を更に狭くしている。
ソファーとローテーブルは前回発掘したはずだというのに、既に半分埋まっている体たらく。
少し変わったところがあるとすれば、有名な格安メーカー製のノートパソコンがローテーブルに置かれていることであろうか。
手慣れた様子でソファとローテーブルを引っ張り出したアゲハは、更に段ボールを掘り進めてもう一つのソファを発掘。対面になるように置き、腰掛けた。
「まあ、座ってくれたまえよ。ヴィジネスの時間だよっ!」
「おぉ~! すごい! 秘密基地みたいだぞ!」
ソファを勧められてピョンとお尻からダイブしたカエデは、混沌とした社務所内を見回して喜んでいた。ものは言いようである。いや、彼女の場合は前に来たマイヤとは違い、本気でそう思っているのかもしれないが……。
「まずは……いくらまで出せる?」
「いくら?」
お互いに席に着いた途端に本題に入るアゲハ、金銭が絡むと気の早い巫女である。
「私は頼み事をタダでは受けないことにしているんだよ。お願いを際限なく聞いていたら身が持たないからね」
「なるほど~! でも今月のお小遣いは使い切っちゃったぞ!」
「お帰りはあちら」
カエデが無一文であることを知った途端に興味を無くしたアゲハは、前回の反省からか退路までは塞いでいない出口を指し示す。あまりにわかりやすい態度である。
「ちょちょちょ、ちょっと待って! 良いものなら持ってるよ!」
「良いものぉ?」
流石に慌てたカエデは、スカートのポケットから一枚のカードを取り出した。
バシッとローテーブルに置かれたカードには虹色に輝く石が描かれている。
「これは……」
「この前、たくさん符化術を使ったでしょ? 一枚だけキラキラのカードがあったから、没収されないように隠しておいたんだ!」
「これは霊晶石だよっ! でかした!」
「れーしょうせき?」
「簡単に言えば霊力の結晶だね。宝石みたいに高く売れるんだ」
「宝石!?」
巫女が指先でカードを撫でると真っ白に輝いて消え去り、代わりに虹色の石が表れた。それを持ち上げて光にかざした巫女はにんまり笑った。
「これなら対価には十分。特別指導をしてあげるよっ!」
「おお! よろしくたのもー!」
「ところで……」
「ん~?」
カエデの元気な返事を受けて、ニタァと笑顔の質を変えた巫女が問いかける。
「はやく強くなれるスペシャルなコースと、ゆっくり強くなれるノーマルなコースの二つがあるんだけど、どっちがいい?」
「もちろん! スペシャルなカエデちゃんはスペシャルなコースにするよ!」
「よろしい! スペシャルコース一丁!」
次の瞬間、カエデとアゲハは雲より高い上空にいた。
ただし、カエデの方は巫女にブレザーの襟首をつかまれて、親猫に運ばれる子猫のようになっているが。
もはや点のようにしか見えない社務所からは、もうもうと煙が上がっており、どうやら天井を突き抜けてきたらしい。
「ぴゃああああ!?」
「このまま狩り場まで直行する……よっ!」
歩くような気軽さでアゲハが空気をけると、空中にカエデの涙を点々と残して紅に染まる群雲を突き抜けていった。




