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おっさんの俺が、処刑寸前の王女を嫁に貰ったがどうすればいい!?  作者: 渓夏 酔月
第一章 処刑される王女

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6.わたしの旦那様

 完全に嵌められた。


 俺はそう思った。


 聖剣とやらを抜いて、教会の鐘が大仰な音を立てて鳴り響いているのを俺は茫然と聴いていた。今にして思えば、あの時逃げ出していればよかったのかもしれない。いずれにしても、前夜の飲み過ぎがいけなかった。


 俺はどこからともなく湧いて出てきた聖剣教会の武装神官とやらに護衛、というか連行されて、王宮の大広間に引っ張り出された。


 そこに居たのは小ズルそうなおやじだった。


 何とこいつが国王だった。この国も終わっているなと俺は思った。


「これはこれは聖剣の勇者様。私がこの国の国王ローゲと申します」


 そう言って揉手(もみて)しながら近寄って来たおやじは、上から下まで俺を値踏みするような目つきで見ていた。


「聖剣の勇者様は王女を嫁に出来ると聞いております。こちらが我が娘、第一王女のアニエスと、第二王女のデボラです。お好きな方をお選びください」


 王女様とやらを見てみると、第一王女は痩せぎすの険のある顔で、第二王女の方は、何を考えているのか、というより起きているのか寝ているのか分からなかった。


 そもそも俺は、誰とも結婚する気などない。


「いえ、私などが王女様を娶るなど滅相もございません。ご辞退申し上げます」


「それはなりません、勇者様。結婚を断れば死罪と、古(いにしえ)よりの法で決まっております。さあ、我が娘ながら絶世の美女でしょう。家臣からもよく言われます。勇者様は果報者ですなあ、どちらでもお好きな方をお選びください」


 そう言って国王が、さらに揉手して近づいてくる。


 なるほど、この男にとって聖剣の勇者を娘婿にすれば、自分の権威が高まると考えているのか。小ズルい奴が考えそうなことだ。


 俺は周りを見渡すが、誰も助けてくれそうにない。


 追い詰められた俺は、ムチムチ美女の言った言葉を思い出した。


『どうしても困った、何とかしてほしい時は『バーラ』と叫んでください。それが聖剣教会の聖なる合言葉です』


 今こそ何とかしてほしい時だ。


「バーラ!」


 俺はそう叫んだ。


 大広間にいた貴族達の空気が、一瞬で変わったのが分かった。


 これは言っちゃいけない言葉だったのだろうか。


 ざわつく貴族どもを押しのけて、大広間に入って来たムチムチ美女が俺に小声で言った。


(『バーラ』ってちゃんと言えた?)


(言ったらなんか変な雰囲気になっちまったんだが……)


(勇者様、ちゃんと言えたのね、偉いわよ!)


 そう言ってにっこりと笑うムチムチ美女を見て、俺は自分が嵌められたことを思い知った。




☆ ☆ ☆




 わたしはおっさんを連れて、とりあえずプチ・パレ(小宮殿)に戻った。


 メイド達が安堵の表情で迎えてくれた。


「バーラお嬢様、よくぞお戻りくださいました。お疲れでしょう、お風呂が沸いております、どうぞお入りください」


 わたしが生まれた時から仕えてくれている、メイド長のリュシーがそう言ってくれた。


「……俺も風呂に入りてぇ……」


 リュシーがびっくりして言う。


「何ですかこのおっさんは! お嬢様は昔から野良犬を拾ってきたりとまあ大変でしたが、これはいけません。すぐに捨ててきてください!」


「……わん……」


「まあ、なんと破廉恥な犬でしょう! 私がすぐに追い出して差し上げます!」


 そう言ってリュシーはおっさんをひっぱたこうとした。


 おもしろかったのでそのまま見ていようかとも思ったけれど、そうもいかない。


「リュシー、違うのよ。このおっさんはわたしの旦那様なのよ」


 わたしがそう告げた時の、リュシーの顔といったらなかった。




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