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おっさんの俺が、処刑寸前の王女を嫁に貰ったがどうすればいい!?  作者: 渓夏 酔月
第四章 王女と聖剣の勇者

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43.ヒーローにはなれない

 朝起きると、隣でバーラが静かな寝息を立てていた。


 バーラの寝顔は本当に綺麗だ。絵画に描かれている女性のようだ。いや、バーラの美しさは、きっとどんな画家だって描き切れないだろう。


 雪のような白い肌にはほんのりと紅みが差し、艶のある流れるような黒髪。長い睫に閉じた瞼は、黄金色の瞳を隠している。


 こんな美しい王女様が、俺の隣で無警戒に寝ているなんて、まだ夢を見ているようだ。


 俺はうすぼんやりと昨晩のことを思い返す。


 我ながら最低な男だと思う。どうしようもない男だと思う。


 思えば俺は昔のことにこだわり過ぎていた。


 唯一の俺の取柄だった剣は、騎士団の中で俺だけ二つ名がもらえず、『名無し』なんて呼ばれる始末。挙句にエフレムという天才を目の当たりにして、自分の程度というものを思い知った。


 そこで剣の道から戦術家へと方向転換したものの、散々教えてもらった大恩あるルスラン様を救えず、助けるようお願いされた奥様は殺され、セシル様の生死はいまだに分からない。


 すべて俺は中途半端、何も成し得ることが出来なかった。


 それがショックで引きこもり、気づけば二十年も山の中で過ごしていた。


 ソフィの言うとおりだ。俺はこの二十年何もしてこなかった。自分のことばかりだった。本当にソフィのことを考えていたのなら、ずっと探し回れば良かったんだ。何を今さらノコノコとは、本当にその通りだ。


 バーラは昨日、こんな俺でもいいと言ってくれた。こんな近くにずっとバーラはいてくれたのに、自分を否定し続けていた俺は、バーラの想いすら心の中で否定していたのだろう。


 こんなに綺麗で聡明な王女様が、俺なんかのことを想っていてくれたなんて……。


 よし、俺はもう過去のことはクヨクヨしないことに決めた。過去のことは変えられないが、未来のことは変えられると、ビリケン様教会の壁に書いてあった気がする。


 これからはバーラのため、バーラのいる世界のために俺は頑張る。そしてバーラに自慢してもらえるような夫に、男になってやる。俺のすべてをかけて!


 俺はそう決心すると、朝日に誓うためにベッドから出て立ち上がった。


 その瞬間、何かが俺の腰を打ち砕いた。


 昨晩の久々過ぎたのがいけなかったのだろうか。俺はあまりの痛みで、パンツ一丁で床に這いつくばった。ぎっくり腰だ。


 ノックもなしに、部屋の扉が開いた。


「おはよう~ス。兄貴、たまには俺と素振りでも……あれ?」


 マルタはいつもこうだ、タイミングがいつだって最悪だ。


「あら、あなた。どうなさったの?」


 上半身をシーツで隠したバーラが俺を見て言う。


「いや~さすがバーラ姐さん! 兄貴を立ち直らせたんスね! まあ、実際には張り切り過ぎたせいで立ち上がれなさそうだけど。アハハハハ!」


 この大女にはデリカシーというものがないらしい。


 俺はこの大女を蹴飛ばしてやりたかったが、痛みで四つん這いになったまま動けない。


 折角一大決心をしたところだというのに、俺はなんとも間の抜けた男だ。


 カッコ悪いったらありゃしない。ヒーローにはなれない運命だと思い知った。


 翌日、俺は大人しく寝ていることにした。


 でも、それは許されざることだった。





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