35.食べ放題、飲み放題
ベルガリウム王国の王都、ベルグホルンに着くと、ことのほか待遇が良かった。
酒は飲み放題だし、飯も美味かった。
俺達が割り当てられた兵舎の周りには、同じような小規模の援軍だったり、勇者の集団、一旗揚げようという剣士などが寄せ集められていた。こういう奴らはすぐに裏切る。酒や飯を食わせておとなしくさせておこうという意図が見え見えだ。
そう分かっていても、タダ酒に弱いのは俺の悪いところだ。
バーラとマルタは呆れて早々に兵舎に戻ったが、卑しい俺と女神様はずっと食堂に残っていた。
「わたしは兵達を祝福するために、力を蓄えねばなりません。これも大いなる女神の務めなのです」
そう言ってフレイヤは、ひたすら肉料理をお代わりしていた。
「お前、死んだ人間を生き返らせていたよなあ。あれって飯食えばいくらでも出来るのか」
「わたしをそんな便利アイテムのように言わないでください。あんなの一回しか出来ません。何度も出来たらそれで稼いでますよ!」
「何だよ、連れて来て損したな」
「はわわわ、なんですかその物言い! 女神が従軍しているというのに酷いです! こんな祝福された行軍などないですよ! 女神は存在するだけで尊いのです。それにわたしには役目がまだあります」
「役目って何だよ」
「それは秘密ですが、ミランさんにだけには特別に教えてあげましょう。勇者を導き、この世に平和をもたらすことです」
「そういや前に聞いたなあ」
「そうでしたっけ? わたしは平和を愛する美しく気高い女神なのです。お賽銭くれてもいいですよ」
俺は気になっていることを聞いた。
「そう言えばフレイヤ、お前マディアの弟の霊が見えていたんだよな」
「はい。わたしには霊が見えます。この食堂にもウヨウヨいますよ、お見せしましょうか?」
「いやいい。それより、俺に霊って憑いていないか」
「ミランさんにですか? う~ん、ミランさんって、昔何かしました? 霊が憑いているどころか、そこら辺の霊が避けて通っていますよ」
「そうか……ならいい」
俺は自分にソフィの霊が憑いていたら、女神様に頼んで見せてもらおうかと思っていた。いないと聞いて、ほっとしたような寂しい気分になった。
「あ、ちなみにわたし、他にも出来ることありますよ。虹を出したり春風を吹かせたり、霧を出すことも出来ます。どうです、ロマンティックでしょう」
ドヤ顔をする女神様を見て、こいつはロクなことが出来ない女神だなと心底思った。
翌日、三万のベルガリウム王国軍に混ざって、俺達はアクレイア街道を西進した。
返す返すも、あんなことを言わなければよかった。
これも俺の油断した気持がそうさせたのだろう。
俺は心底後悔した。




