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おっさんの俺が、処刑寸前の王女を嫁に貰ったがどうすればいい!?  作者: 渓夏 酔月
第三章 デーフィエンテの聖女

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32.カストラ・サーマイリー

 オリヴィエ国王陛下の跡を継いで王位に就いたのが、第一皇子カストラ様だった。


 カストラ様にとって、ルスラン様は脅威だった。なにしろ兵を動かせばどんな敵をも打ち破る天才軍師。当然軍からの信頼は厚く、民衆からの人気も高かった。もしルスラン様を支持する兵団がルスラン様の指揮下で動くようなことがあれば、自分が討ち取られるとカストラ様は危惧したのさ。


 当然ルスラン様はそんな気はさらさらなかったが、カストラ様の方はそうじゃなかった。


 もともと百五十名いた近衛騎士団を二百五十まで増強し、常に自分の周りを護衛させた。特に近衛騎士団でも上位五十名には深紅のコートを羽織らせ、通称レッドと言われる王国最強の騎士とされていた。え、給料? まあ、レッドは俺の十倍はもらっていたな。いや、十倍じゃきかねえか、二十倍くらいか。


 バーラ、話の腰を折るなよ。給料の話じゃねえ、えーと何の話をしていたんだっけ。そうそうレッドの話だ。俺のもとにはレッドの奴らがルスラン様の暗殺を企んでいるという噂が、あちこちから入って来ていた。


 俺達は警戒して四六時中ルスラン様に張り付いた。特に第三皇子騎士団の中でも最強だったクレメンティーヌ姐さんと俺のどちらかは必ず張り付くことにした。ただその頃には姐さんはもうセルベス公と結婚していたから、基本的には俺が張り付いていた。それをユーグ、マルタ、スーラが補佐をしてくれた。人数は少なかったが、俺以外はすべて二つ名持ちだ。さすがにレッドの奴らも正面切っては襲って来なかったよ。


 何でかって? 普通二つ名持ちなんて、騎士団に一人いるかいないかだからな。二つ名持ちが複数いるところにレッドといえどもそうそう手出しは出来ねえ。そうだよ、俺は二つ名を持ってねえよ。さっき聞いた? 知っていて何度も言わすなよ。ちょっとは俺も気にしてるんだよ。


 二つ名といえば、俺より後に入って来たにもかかわらず、ユーグ、マルタにスーラもすぐに二つ名持ちになっちまって、二つ名が無いのは相変わらず俺だけだった。だから『名無し』っていうあだ名までつけられちまったよ。そんなに笑うなよ、バーラ。受け過ぎだ。


 とにかく俺達は、四六時中目を光らせてルスラン様を守った。


 それで闇討ちみたいな手は通用しないと思ったカストラ様は、とうとうルスラン様を王宮に呼び出したのさ。


 いまだにその時のことを夢に見るぜ。


 俺はルスラン様に言ったんだ。絶対に行くべきじゃないってな。そうしたらルスラン様はこう言ったんだ。


『たとえ罠であっても構わない。これは駆け引きとかそういうものじゃないんだ。僕は兄上を信じたい』


 もう、俺はそれ以上何も言えなかったよ。ただ俺も一緒にルスラン様と王宮に行くことを許してもらった。


 もう夜だった。俺だけ控えの間で留め置かれると、ルスラン様はレッド二人に付き添われて、カストラ様との面会に向かわれた。よっぽど俺が情けない顔をしていたからだろうか、ルスラン様は優しく笑って、俺に『大丈夫だよ』と言ってくれた。


 今から思えばルスラン様はこんな時でさえ、自分のことより俺のことを心配してくれていたのかと思うと、俺は情けねえよ。


 俺は控えの間で、独り窓の外を見ていた。


 今でも覚えている。曇っていて星もない暗い夜空だった。


 なんだか急に胸騒ぎがして、俺は居ても立っても居られなくなった。


 俺は気づかれないように窓を開けると、外に出て王宮の壁に張り付いた。目も眩む高さだった。俺は壁の石の継ぎ目に指をひっかけて、慎重にカストラ様とルスラン様が面会している部屋へとカニみてえに横移動していった。


 そして俺が窓から見たものは、さっきのレッド二人の足元で、血を流して倒れているルスラン様だった。




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