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おっさんの俺が、処刑寸前の王女を嫁に貰ったがどうすればいい!?  作者: 渓夏 酔月
第三章 デーフィエンテの聖女

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28.女神フレイヤ

 多くの遺体や体の一部が飛び散らかる凄惨な会場を、破れた窓から静かな日差しが照らしている。


 そこにはただ、聖女マディアの嗚咽だけが聞こえていた。


「いや~、久しぶりっスね、ミランの兄貴。今までどこ行っていたんスか?」


 マルタが屈託のない笑顔で、俺にそう言った。


「静かにしろマルタ! 相変わらず空気読めない奴だな」


 この馬鹿大女は相変わらずだった。全く成長していない。


 血と肉が散らばる中を、フレイヤが床にへたりこんでいるマディアのもとへ行くと、優しく抱きしめた。


「……女神フレイヤ様。こんな罪深いわたしに、最後に弟に会わせていただきありがとうございました。わたしはあなたを殺そうとしました。どんな罰でも受けるつもりです」


 フレイヤが、優しい目でマディアを見つめる。


「聖女マディア。あなたはジャルナの想いに応える義務があります。ジャルナはあなたに何と言いましたか」


 マディアがうつむいて言う。


「もうわたしは聖女でも何でもありません。わたしの手は血だらけです。あまりにも多くの命を奪い過ぎました。この有様をご覧ください。地獄のようです。この地獄の主(あるじ)こそわたしなのです」


 フレイヤが立ち上がり、マディアに言った。


「ならばわたしがその罪を赦しましょう。聖女マディアよ、うずくまっている暇はありません。前に進むのです」


 両手を広げたフレイヤから、白い光の粒がほとばしる。


 俺はあまりの眩しさに、目を開けていられない。


 再び俺が目を開けると、そこには何事もなかったかのように、人々が宴を楽しんでいた。


「ああ、マディア様だ!」


「マディア様がお出ましになられたぞ!」


 突然のマディアの出現に、ボス達が声を上げる。こいつらはさっき起こったことの記憶がないようだ。


「マディア様、二度と逆らうようなことは致しません。命を奪わずにおいてくださること、感謝いたします」


 そう言ってマディアに頭を下げたのは、葬式のような顔をしていた親玉の一人だった。


 呆然と立ち尽くすマディアに向かって、女神フレイヤが言う。


「聖女マディアよ。あなたなら大丈夫です。ジャルナが見守っていることを忘れないでください」


 そう言うと、フレイヤの姿が徐々に薄くなっていった。


「女神フレイヤ様!」


 マディアがフレイヤに縋りつく。


「わたしはどうやら力を使い過ぎたようです。わたしも天に戻る時が来たようです」


「女神フレイヤ様! 行かないでください。せめてあなただけはこの世にいてください! わたし達を導いてください!」


 フレイヤが優しく微笑む。


「すでに道は指し示しました。あとは人である、あなた達次第です。天なる父も、あなた達に期待しています」


 どんどんとフレイヤの影が薄くなる。


 マディアがフレイヤの体に必死に縋りつく。


「フレイヤ様! そんな! 行かないでください!」


 フレイヤが両手を広げ、空を見上げる。


「あなたを祝福します。聖女マディアよ」


 そう言って、両手を広げたままフレイヤは、どんどん薄くなっていったが、あるところから全く姿が薄くならなくなった。


「え~、こほん。力を使い切ったと思ったら、ちょっと残っちゃったみたいですね。えへへ、直前にモリモリ食べたローストビーフのお陰ですかね~」


 そう言ってフレイヤは、バツが悪そうに苦笑いした。


 俺はフレイヤの首根っこを捕まえて言った。


「おいフレイヤ。どうしたらこの姿が元に戻るんだ」


「え~と、食べ物ですね、特にお肉なんかを食べると力が元に戻ります」


 俺はテーブルの上にあったステーキがてんこ盛りになった皿を持ってくると、フレイヤの前に置いた。


「これでも食えよ」


「はわわわ! 凄く美味しそうなステーキです!!!」


 半透明の透け透けフレイヤがステーキにむしゃぶりつく。微妙に食べたものが胃に入って行くのが見えて面白い。


「おいフレイヤ。おまえ胃の中まで透けて見えてるぞ。よく見たら服も透けておっぱい……」


 俺はバーラに椅子でしこたま殴られて、気を失った。




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