↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさんの俺が、処刑寸前の王女を嫁に貰ったがどうすればいい!?  作者: 渓夏 酔月
第二章 レバンタインの宰相

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/48

21.間男

 ボワロが厨房に向かって怒鳴った。


「今晩はバラデュール公が珍しくも女性連れでお越しだ。俺の出来うる最高の料理を出せとの仰せだ。お前達、気合いを入れろ!」


「応!!!」


 とたんに厨房が活気にあふれる。


 よっぽどバラデュール公爵とやらは偉いのだろう。


「おいボワロの親父、バラデュール公爵ってのはそんなに偉いのか?」


 ボワロは俺をいきなりぶん殴って来た。俺が躱すとボワロが一回転してひっくり返った。


「この大馬鹿野郎! おめえバラデュール公爵を知らねえのか! この国の宰相だ! 王国で一番偉いお人だ! ポール! おめえ失礼な事したらスープの出汁(だし)にしてやるぞ!」


 どうしてバーラがそんな奴と一緒に来ているのか。


 幸いバーラとバラデュール公爵は奥の特別室へと入って行った。俺はバーラに見つからなくて良かったと、ホッと胸をなでおろした。でも待てよ。一応形式上とは言え、俺はバーラの夫だ。どうして俺の方がコソコソして、見つからなくて良かったと安堵しているのだろう。


 まるで俺の方が間男みてえだ。


 おまけにバーラは真新しい真っ赤なドレスを着ていた。あのバラデュール公爵とかいうのが買い与えたのだろうか。俺がバーラにやったものと言えば、賄いでもらったこのレストランの残った料理だけだ。チクショウ、これが貧富の差ってやつか。


 厨房は戦場のような忙しさだ。ボワロ含め優秀な調理人はすべてバーラとバラデュール公爵の料理に集中している。それと同時に他の客にも料理を提供しなくちゃならねえ。ボワロのイライラは頂点に達した。


「バカかおめえは! もういい、ポール! おめえが運べ!」


 ボワロがウエイターを怒鳴りつけると、俺が呼び出された。


「これを公爵に運べ。いいか、絶対に粗相するなよ、したら五時間ほど煮込むからな!」


「いや、ボワロ、俺はちょっとお腹痛いっていうか……」


「今煮込まれたいか!!!」


 絶対にこういうことになる気がしていた。俺の予感は悪い時だけはよく当たる。


 大丈夫、俺なら乗り切れる。


 水晶採りの最中、スズメバチの巣を踏んずけて大変なことになった時も逃げきれた。俺ならなんとか出来るはずだ。


 俺はマスクをして俯いたまま、料理を持って特別室へと向かった。


「あなたのような魅力的な女性に逢ったのは初めてです」


「あら、当然ですわ。それよりもどうして毎日マッチを大量にお買いになるのかしら? 焚火でもなさっていらっしゃるの?」


「こちらはドブスデール王国産三つ目豚のポワレ、睾丸ソースを添えて、でございます」


 俺は俯いたまま、料理をテーブルの上に載せる。


「あなたのマッチで、私の心に火がつけられたのです」


「ぶっ」


 俺は思わず吹き出してしまった。


 バラデュール公爵は一瞬怪訝そうに俺を見たが、かまわず話し続けた。


「あなたに初めて叱りつけられた日、私は恋に落ちたのです。ぜひ私とおつき合いしていただきたい」


「あら、そういうことでしたの。残念ながらわたしは人妻ですのよ」


「えっ……ご結婚されていたのですか! いえ、私はあなたのような素晴らしい女性にマッチ売りをさせるような男は、あなたにふさわしくないと考える」


(何にも反論できねえ。耳が痛え)


「何か勘違いなさっていらっしゃるようね。わたしは自分の意思で、好き好んで友人とマッチ売りを楽しんでいたのですわ」


「聞けば『ビリケン様教会』などという、いかがわしい教会の物置で寝起きしているというではありませんか。あなたのような女性にそんな暮らしをさせている男を、私は夫とは認めない」


(よく考えれば……よく考えなくても王女に物置暮らしさせている俺って最低なんじゃないか。本来なら不敬罪で死刑になってもおかしくない)


「よろしくて? 人は住んでいる場所や暮らしで判断されるものではありませんわ。その証拠に物置に住んでマッチ売りをしているわたしを、あなたは素晴らしい女性とおっしゃったわ」


「……あなたのことが好きだ。愛している」


「わたしの夫は、このわたしが物置に住んで、マッチを売ってでも一緒に居たいと思わせる男ですわ。あなたが我が夫に敵いますかしら」


 俺はそのバーラの言葉に感激して、思わず顔を上げてしまった。


 バーラと目が合った。


「あら、あなた。あなたのバイト先のレストランってここでしたの。道理であなたが賄いでもらってきてくださるお料理と、よくお味が似ていると思いましたわ」


 バーラは平然と、俺を見てそう言った。


 ガタっと椅子から立ち上がったバラデュール公爵が、俺を見て言った。


「ミ……ミラン先輩……ミラン先輩じゃないですか……」


 何でこいつが俺の本名を知っているんだ。


 俺はマスクをとって、まじまじといけ好かない金持ち公爵を見た。


「……おまえ、ひょっとして……ユーグ……なのか?」


 ユーグは俺に飛びついてきた。


 俺は危うく倒れて、テーブルの料理をひっくり返しそうになった。


「先輩! ミラン先輩! 生きていたんですね! 良かった! 良かったですぅ!」


 久しぶりに会ったユーグは、そう言って俺を抱きしめたまま泣きじゃくった。




21話目にして主人公の本名がやっと明らかになりました……。

よかったら評価をお願いします。励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。