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かくりよ、桜の縁結び  作者: 灯影


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幕間 悠璃 欲

 


 綺羅との面倒事が終わって暫くしたある日。

 俺は屋敷の屋根に寝転んで、最近のひまりについて考えていた。


 近頃妙に避けられてる気がする。

 目も合わなければ、あまり会話もない。

 正直まっったく面白くない。


「……これはちょーっと、あれだねぇ」


 ことの発端はきっと、あの日。


 ひまりが俺を避け始めた原因なんて、一つしか思い当たらない。


 綺羅とひまりが出会ったあの日――


 俺は目を閉じてあの日の事を思いだす。


 あの時俺は確か、二つ隣の山の結界周りを見に行っていた。

 そして、いつも通りの巡回で綻びそうなところはないなと思っていたところで、月羽が結界を張った事を察知したのだ。


 結界の位置をすぐに探って走り出した。

 風を纏って走っている間の焦燥感で、胸がひりついたのを覚えている。


 あの時は、無事な彼女を見るまでどうにかなりそうだった。


 黒蝶のあやかしである綺羅とひまり――黒と桃色の対比が見えた時、無意識に舌打ちが出た。


 綺羅は若い頃の自分を知っている。

 若気の至りという黒歴史を彼女には知られたくなかった。


 今は居ない腕の中の、彼女の体温が甦る。

 彼女を守るために抱きしめた筈が、その体温や存在で逆に安心感を与えられた。


 

 そうして、くだらない煽り合いが続いた結果ひまりが暴走した――



 

「そう、それで俺は……」


 自分がきっかけで、暴走したと思ったんだ。

 そうであれば良い、と。


「はっ、俺も相当厄介だなー」


 そして未だ荒れ狂う風に守られた彼女の元へと、一歩足を踏み出した――


 彼女は、なぜ自分を信じるのかと俺に問いかけた。


「そんなの決まってるよね」


 自分の心に楔を打った相手を信じない理由がない。


 あの大鳥居での、一瞬の邂逅。

 あれが全て。



 そして風が収まってからは、多少攻めた自覚はあるがそれはもう嬉しかったからに他ならない。


 目の前で真っ赤になる彼女。

 そのうなじも耳も全身が赤く色付いて……


「そりゃ、自惚れるじゃん」


 そう、なのに!

 それでか?

 彼女はそれから俺を避けているのだ。


 ごろりと庭が見える角度に寝返りを打つ。


「ん?」


 庭ではそんなひまりと、月羽が真剣に話し合っている。

 様子を見る限り、力の基本を学んでいるのだろうか。


 まぁ、月羽との練習はいい事だ。


 その時の俺はそれくらいしか気に留めてなかった。

 いずれ自分の所にも来るだろうと。


 なのに。


 一向に来ない。

 そればかりか、自分以外の全員が関わっている。


 ひっじょーーに、面白くない!


 屋根の上に胡座をかいて、頬杖をついた。

「俺を仲間外れにするとはねー?」


 今の自分は、意地悪な顔してるだろうなと思う。

 でも仕方ないよね。


 これは、ちょっと反省してもらおうかな〜?


 そうして俺は愛しい桜の少女に会いに、気配を消して庭に降りたつ。


 きっと彼女は逃げようとするだろう。

 ――それが俺を煽るとも知らずに


 気づく気配のない、彼女の背中。


 桃色の髪が、風でさらさらと靡いている。


 さぁて、どうやって捕まえようかな?


 ――小さなその呟きは彼女に届く事なく風に消えていった。

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