激闘(その八)
さっきと違って、今回は山梨県と長野県の二機も、鉄道戦艦と一緒に前進する。
敵の量産機が大挙して向かってきた。
ここで山梨県知事が、もう一つの奥の手を使う。
黒い機体が瞬時に、黄金色に輝いた。機体性能が一気に跳ね上がる。
そして、これまでの倍の速度で動き、量産機を次々と撃破していった。
一方、長野県知事は四つの天守閣を先行させて、鉄道戦艦の前に布陣させる。
そこに要塞からの攻撃が来た。強烈な一撃だ。
四つの天守閣が、バリアと火力を一点に集中させる。埼玉県の鉄道戦艦を、要塞の攻撃から防御した。
直後に大きな爆発が起こる。
この攻防によって、天守閣の三つが大破した。電脳空間から消えていく。
残り一つの天守閣が、本体である白い機体のすぐそばまで飛ばされてきた。
かなりの損傷を受けているが、まだ何とか動くようだ。
これほどの被害を出したものの、そのかいはあった。
鉄道戦艦は無傷。
しかし、長野県知事は気づいてしまう。
要塞からの攻撃、少なくともあと一回はありそうだ。それを防ぐ必要がある。
次の瞬間、真横に山梨県知事の機体が来た。
先ほどまでは黄金色に輝いていたのに、今はその光が失われている。元の黒い機体に戻っていた。しかも、全身からは灰色の煙を吹き出している。
「そろそろ限界のようだ」
山梨県知事の操る黒い機体が、最後の天守閣を左手でつかむ。
そして、長野県知事に聞いてきた。
「あの場所まで飛ばせるか?」
黒い機体が見ているのは、鉄道戦艦と要塞との中間地点だ。
それが意味することは何なのか、長野県知事にもわかる。しかし・・・・・・。
「頼む。こういうことは、お前だから頼める」
長野県知事は察した。山梨県知事との付き合いは長い。止めても聞かないだろう。
それに、ここで自分たちが全滅すれば、神奈川や千葉、茨城、鹿児島の努力が無駄になってしまう。東京都の秘密兵器は止まらない。
要塞の主砲、その内側が光り始めていた。
あれを防ぐためには・・・・・・。
「わかった」
長野県知事は最後の天守閣を発進させる。
それを片方の手で、しっかりとつかむ黒い機体。天守閣と一体になって、戦場を猛スピードで飛んでいく。
敵の量産機は、かなりの数を撃破済みだ。残っている敵に対しては、白い機体と鉄道戦艦とで、攻撃を加える。
こうして黒い機体は、敵の量産機に妨害されることなく、目標地点にたどり着いた。
と同時に、要塞からの攻撃が来る!
黒い機体は右手の軍配を正面に構えた。
山梨県知事は考える。あれを受け止めるのは無理だ。そんなことをすれば、この機体は一瞬で消滅する。その上、自分の後方にいる鉄道戦艦にも、被害が出るだろう。
だが、あの攻撃の進む方向を、ほんの少しでもいい。ずらすことができれば・・・・・・。
山梨県知事は軍配に角度をつける。さらに機体性能を限界まで高めた。黒い機体が再び黄金色に輝く。
そこに要塞からの攻撃が襲いかかってきた。
周囲に閃光が駆け抜ける。そして・・・・・・。
少し遅れて、大きな爆発が起こった。
その場所は、鉄道戦艦の真横だ。
といっても、そこそこの距離があいている。艦への直撃はしていない。爆風で艦が少し揺れただけだ。
黒い機体と天守閣、それらの残骸が、電脳空間から消えていく。
しかし、大きな犠牲を払ったかいはあった。
この山梨県知事からの、要塞攻略へのラストパスに、
「あとは任せろ! 絶対に決める!」
埼玉県知事が吠えた。ここで外すような男ではない。
鉄道戦艦が要塞に向けて、主砲を放つ。
要塞の扉、その体力ゲージがゼロになった。そこにぽっかりと、先に進むための穴が開く。
赤い鉄道戦艦は速度を緩めることなく、扉のあった場所から奥へと突入した。
すでに主砲の照準には、目標の座標を入力済みだ。
あとは決めるだけ。これは「海なし県」からの、真心を込めた一撃。
東京都の秘密兵器がある座標に向かって、
「悪いな、東京都知事♪」
埼玉県知事は特大の火力を叩き込んだ。




