激闘(その七)
黒い機体と白い機体が疾走する。光る風へと変貌した。
この戦場の真ん中で、二つの風が重なり合う。大きな竜巻へと変わった。
それを内側から豪快に斬り裂いて、大きな機体が姿を現す。
これこそが、山梨県知事と長野県知事による奥の手だ。二機による合体。
この合体機の必殺技なら、戦艦に匹敵する大火力を出すことができる。要塞の扉にも通用するのは、確実だ。
ただし、この合体機の通常防御力は、戦艦よりも下。要塞からの強力な攻撃を、絶対に食らってはいけない。
敵の攻撃をかいくぐり、必殺技の射程である「拳が届く距離」まで近づく。非常に高難度のミッションだ。しかし、やるしかない。
志半ばで力尽きた、神奈川、千葉、茨城、鹿児島の代わりに、自分たちが東京都の秘密兵器を止めるのだ。
あとは任せたぞ、埼玉、栃木、グンマ。お前たちの誰かが必ず、今回の『フロンティア・オークション』で海を手にしてくれ。
「いくぞ!」
山梨県知事と長野県知事が要塞に突撃しようとした時、自分たちの後方に未知の反応が出現した。
何かがこちらに向かってくる。
おそらくは敵の新手だ。このままだと、前後から挟み撃ちにされる。
両県知事は一瞬迷った。
が、素早く振り返る。迫りくる存在に対して、攻撃の構えをとった。
何もせずに前進して、後方から狙い撃たれるよりは、先に相手の出鼻を挫いた方がいい。
で、両県知事の視界に飛び込んでくる。こちらに向かってくるのは・・・・・・真紅の戦艦!
いや、戦艦のようだが、戦艦とは違うような・・・・・・。なぜか、艦の両舷には、鉄道車輌っぽい車輪が、いくつも並んで回転している。
さらに、甲板の中央にあるのは、電車の屋根についているパンタグラフのような・・・・・・。
あれは何だ? 仮に名前をつけるなら、『鉄道戦艦』とか、『戦艦風の鉄道車輌』とか?
次の瞬間、鉄道戦艦から男の声が飛んでくる。
「すまん、池袋までの埼京線が混んでいた。まだ遅刻じゃないよな?」
埼玉県知事の声だ。
予想外のことに、山梨県知事と長野県知事は戸惑う。
「埼玉県知事、どうしてここに!?」
「うちの県の南で、随分と楽しそうなことをやっているからな。気づくに決まってるだろ。で、俺も遊びに来た。ストライカーのポジションは任せろ」
笑いながら言っているが、山梨県知事と長野県知事は気づく。
埼玉県知事はきちんと理解している。ここに来るということは、今回のオークション、その勝利を自分はあきらめるということ。
そうしてでも、東京都を止めたいのだ。他の県に勝利の可能性を少しでも残すために。
東京都はすでに『8000万ドルドル』を突破しているそうだが、
「まだ栃木とグンマがいる。あの二県はまだ、あきらめていないみたいだぞ」
埼玉県知事の言葉に、山梨県知事と長野県知事はこの場での最適解を導き出す。
瞬時に合体を解除すると、
「援護する」
「悪いな。ゴールを決めるのは任せてくれ。ただし、手柄は全員で割り勘な」
長野県知事は鉄道戦艦に、座標のデータを送る。
東京都の秘密兵器がある座標だ。要塞の扉をぶち破ったあとは、その地点に向けて全力を叩き込めばいい。インターネットからの攻撃で、秘密兵器を仕留めるのだ。
座標データを受け取った埼玉県知事がつぶやく。
「こいつは信用できるのか?」
「茨城県知事と鹿児島県知事からの情報だ。今回のような状況で、ウソをつくような二人じゃない」
「なるほど。それなら安心だ♪」
そこから先、埼玉県知事は真面目な雰囲気に変わると、
「山梨県知事、長野県知事、これより三県合同の作戦を開始する」
そして、力強く口にした。
「埼玉県、発進!」
紫色の要塞目がけて、赤い鉄道戦艦が加速した。




