激闘(その二)
「一つ教えておこう」
山梨県知事の黒い機体が言う。
「おまえたちが昨夜使っていた、品川のワインバー。あの店に『甲州ワイン』や『鮑の煮貝』を卸しているのは、うちの県だ」
長野県知事の白い機体も言う。
「そして、『信州ワイン』や『信州サーモン』を卸しているのは、うちの県だ。あのバーの主人とは懇意にしている。それで昨夜の会談、その内容はこちらに筒抜けだ」
武器を構える二機。
ところが次の瞬間、二隻の戦艦に対して、くるりと背を向けると、こう告げてきた。
「では、先を急ごうか」
どうやら、妨害しに来たわけではなく、こちらに味方してくれるらしい。ここいらの防衛システム、この二機が先に沈黙させていたようだ。たぶん、別ルートから侵入してきたのだろう。
しかし・・・・・・。
神奈川県知事と千葉県知事は思った。どうしても、先に聞いておかなければならないことがある。
「いいのか? 俺たちと一緒に行動するということは・・・・・・」
こちらのミッションもこなしつつ、オークションの入札もする、というのは現実的ではない。つまり・・・・・・。
「わかっている。しかし、ここで東京を止めなければ、他の県は絶対に勝てない。違うか?」
「神奈川と千葉が共闘するような事態だ。戦力は少しでも多い方がいいはず。今回のオークション、勝つのは他に譲るさ」
自分たちが踏み台になってでも、他の県に勝ち筋を残す。そう二県は言っているのだ。
「助かるぜ」
神奈川県知事と千葉県知事は感謝する。
都庁の防衛システムは、予想以上に強力だ。山梨県と長野県の加勢はありがたい。単純計算で戦力が倍になった。
二隻の戦艦と二機の機体とで、宇宙を模した電脳空間を先へと進む。
「東京の秘密兵器を止めれば、あとは埼玉か、栃木か、グンマあたりが、どうにかするだろう」
黒い機体が言うと、白い機体も言う。
「何回も戦っているから知っているが、あいつらは強いぞ」
二機の口調はどこか楽しそうだ。彼らは同じ「海なし県」の仲間たち。
そこで前方に新たな反応がある。
今度は間違いない。敵だ。
「かなりの数だな」
神奈川県知事がつぶやく。
紫色の量産機が多数。
しかし、神奈川県知事に絶望はなかった。
量産機の奥には見えている。紫色をした宇宙要塞だ。
要塞の正面には、巨大な扉がついている。今は閉じている状態だが、あの扉を突破すれば、その先に防衛システムは存在しない。
「ようやくゴール地点だな」
千葉県知事がつぶやく。
要塞の前方には、敵の量産機が集結中だ。その数、三百は下らない。迎撃のための陣形を整えている。都庁の防衛システム、その最終ラインだけあって、なかなか守りが堅そうだ。
大勢の敵を前にして、四人の県知事たちは同じ考えを抱いていた。
この中の誰でもいい。あの扉を突破する。何としても、東京都の秘密兵器を止めるのだ。
二隻の戦艦が前進する。敵陣の中央に向けて、主砲を発射した。
二機の機体も前進する。戦艦に向かってくる量産機、それらの迎撃に動いた。
戦闘開始である。




