激闘(その一)
宇宙空間のような場所を、二隻の戦艦が横に並んで前進する。
ミッドナイトブルーの戦艦と、コバルトブルーの戦艦だ。
ここは現実の宇宙ではない。東京都庁のインターネット内部にある、電脳空間だ。
超強力な防衛システムが構築されているので、ここまで入り込むのも、かなり大変だった。
だが、ゆっくりとはしていられない。
「東京都知事、秘密兵器を使うのが早すぎるだろ」
「まったくだ。こっちの苦労も考えろと言いたい」
操艦しながら、二人の男はぼやく。
オークションの方は現在、非常にまずいことになっているようだ。
暴走する東京都。そのせいで、「棄権」する県がどんどん出ている。早く秘密兵器を止めないことには、東京以外が「全滅」してしまう。
だから、自分たちが動いているのだ。今回は神奈川県と千葉県とで共闘する。
作戦はこうだ。
都庁のインターネット内部に入り込み、そこから秘密兵器に攻撃を仕掛ける。問題の機械を「停止」させることができれば、この二県による共同ミッションは成功だ。
今回のオークション、神奈川も千葉も入札はしない。というか、できない。他のことに予算を使いたいと、県議会に反対されたのだ。
しかし、だからこそ、自分たちは自由に動ける。オークションに勝つことを、まったく考えなくてもいい。ゆえに、他県ができない役割を担うことができる。
「急ぐぞ」
「ああ」
二隻はさらに前進した。
直後に神奈川県知事がつぶやく。
「おかしい」
千葉県知事もつぶやく。
「防衛システムがどれも沈黙しているな」
こっちは侵入者だ。ここまでの道のりでは、各種防衛システムが自動で迎撃してきた。
なのに、この辺りは静かすぎる。
「何かの罠か」
両県知事は同時に言うと、警戒を強める。
この判断は正解だったらしい。いち早く異変に気づくことができた。
「前方に何かいるな」
「ここの門番のお出ましか」
やはり東京都庁の防衛システムは甘くないようだ。
前方の宇宙空間には、二機の人型兵器が浮遊している。
「おいおい、見るからに強そうだぞ」
「あの外見で、弱いってことはないだろうしな」
ロボットアニメから抜け出してきたような二機が、前方に立ちはだかっている。
黒い機体と白い機体だ。あんなものまで用意しているとは・・・・・・。
艦を前に進ませながら、両県知事は苦戦を予感する。
あの二機、ここまでの防衛システムとは、強さが一回りも二回りも違っていそうだ。
黒い機体の方は装甲が厚く、ところどころに赤と金の縁取りがある。そして、手には大きな軍配だ。
片や、白い機体は細身ながら、その周囲には本体とほぼ同じサイズの、黒い天守閣型の支援機が四つも浮遊している。こちらの機体はさらに、大きな弓を持っていた。
どちらの機体からも、「大将機」といった印象を受ける。こいつらが守っているので、他の防衛システムはまったく攻撃してこなかったのか。
神奈川県知事と千葉県知事が二機との間合いをはかっていると、
「神奈川県だな」
黒い機体が声を発する。
「千葉県もいるな」
白い機体も声を発する。
どちらの声も聞き覚えがあったので、神奈川県知事と千葉県知事は同時に、相手の正体を口にした。
「山梨県知事と長野県知事か」
二機の機体はうなずくと、ゆっくりと武器を構えてきた。




