オークション前日(その三)
「『1億ドルドル』だと!?」
そう叫んだあと、グンマのポセイドンは沈黙した。
この会合の出席者は三人。
調査員からの電話に、リヴァイアサンと乙姫も驚きを隠せない。
東京都の予算が判明したのだ。『5000万ドルドル』を超えてくるとは思っていたが、まさか『1億』の大台に乗せてくるとは・・・・・・。明日の『フロンティア・オークション』、東京は本気で勝ちにきている。
一方で、グンマの予算は『7000万ドルドル』だ。オークションにおいて、この差は絶望的と言える。
しかも、東京都は何か秘密兵器を用意している、そんな情報も得ていた。
ポセイドンの脳裏に、「棄権」の選択肢がちらつく。
たしかに、海は欲しい。たとえ、それが地球の海ではなく、月面の海だとしても。
しかし、さすがに勝てる気がしない。
「【『グンマ県に本気で海を』プロジェクト】、『第八次』でも無理なのか・・・・・・」
そこでリヴァイアサンと乙姫が、
「ポセイドン、きっと次がある」
「そうそう、たぶん『第九次』では海を獲得できるよ」
そんな風に励ましてくる二人。
その時、ポセイドンのパソコンに、リモート映像が届いた。
グンマの浦島太郎七世からだ。『(グンマ県内)海の四天王』の一人であり、先代の県知事でもある。
ポセイドンは迷った。明日のオークションで東京都が『1億』の予算を用意していることを、伝えるべきか否か。
しかし、すぐに決断する。今は言うべきじゃない。
何があったのかは知らないが、パソコン画面に映る浦島七世は目を輝かせている。絶望を突きつけるのは、先延ばしに・・・・・・。
次の瞬間、さらに六つのリモート映像が届いた。
パソコン画面には今や、七つの窓が開いている。
その一つに映っているのは・・・・・・
「ポセイドン、久しぶりだな!」
「初代浦島!」
他にも、二世、三世、四世、五世、六世がいる。かつて【『グンマ県に本気で海を』プロジェクト】を指揮した県知事たちだ。
「ポセイドン、お待たせしました」
浦島七世が言う。
そして、今の今まで何をしていたのかを明かしてきた。
「実はね、グンマ県には色々と『埋蔵金』があったんですよ」
県知事時代にグンマの歴史に関する資料を見ていて、「ひょっとしたら・・・・・・」と目星をつけていたのだとか。
それで、来たるべき決戦に備えて、過去の県知事たちと協力して、県内の宝探しをしていたという。
そうして見つけてきたお宝の数々、すでに換金を済ませていて、その総額は『3000万ドルドル』!
ポセイドン、リヴァイアサン、乙姫に向かって、七人の浦島太郎が声を合わせる。
「この追加予算を今すぐ、現在のグンマ県知事に!」
さあ、これで戦いの準備は整った。




